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red. -能力者が神様に挑む話し-  作者: テオネオ
第二十三話 やっと主人公と敵が揃った編
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23-① 世界を滅ぼせますか

「ん……。んん……。」ボルドー

 

 ボルドーがうつ伏せの状態から目を覚ますと、地面が随分と遠くにある。


 どういう原理なのかは分からないが、空高く。何もない空中に、見えない床があるようにして、うつ伏せで寝ていたようだった。

 

「ボルドーっ!」ライナックス

 

 ライナックスの声がして、ボルドーは体を起こして周囲を見渡す。


 同じように、見えない床に立つように、ライナックス、タトラス、ラランの姿があった。


 そして1人だけ。ピンクのニット帽を被り、金髪の癖毛が見えている男性が、背中を向けて、空中に腰掛けるようにして座っていた。


 ライナックスが心配そうにボルドーに声をかける。

 

「ボルドー。大丈夫?気分はどお?」

 

 ボルドーは立ち上がって言葉を返す。

 

「大丈夫です。……………………これは………………?」

 

 すると、空中に腰掛けたままの男性が振り返ってボルドーを見る。


 真っ黒な瞳に、十代そこらに見える幼い顔。


 その男性がボルドーに声をかける。

 

「初めましてー。」

 

「……………………もしかして……。貴方が…………。」

 

 すると、ラランがボルドーにキツく言葉をかける。

 

「ちょっとボルドー!ちゃんと挨拶しなっさいよ!!ガド様に失礼でしょ?!!!」

 

「えぇー。ラランがそんなこというの?」タトラス

 

「同感。」ガド

 

「えぇ?!が、ガド様まで?!…………。」ララン

 

 ガドの一言で、ラランは急激にしおらしくなる。


 ボルドーが言う。

 

「……初めまして。……ガドさん。ボルドーって言います。」

 

「母親似のイケメンだねぇ。」

 

「…………。」ボルドー

 

 すると今度は、タトラスが話し出す。

 

「次はマリさんって子迎えに行きましょう!」

 

「あ。ちょっ!まって!当時の仲間以外も有りなんだったら、私、ニコって奴誘いたいんだけどっ……!」ララン

 

「ええ?誰?」ガド

 

「彼女になる予定の子!」タトラス

 

「あんたミョリちゃんどーしたのよ。ってか、ミョリちゃんも迎えに行かないとじゃない?」ライナックス

 

「あー…………。ケンカ中でぇ…………。多分……。」タトラス

 

「彼女と別れて次の子?」ガド

 

「いや。マリさんが先!ミョリちゃんが後だから!」タトラス

 

「まぁいいよ。マリさんとニコね。」ガド

 

 緊張感のかけらもない和気藹々とした雰囲気が流れていた。


 ボルドーは、最も彼に会いたがっていた筈のマシロの姿が無いことに違和感を持ち、それを素直に言葉にする。

 

「…………マシロさんは?」

 

 それにガドが、なんの抑揚もなく答えた。

 

「死んだ。」


 ――――――――――

『…………ん……。』

 

 ニコが小さな声を出してゆっくと目を開けた。

 

「ニコ!」

 

 ニコの側にはマリが座っていて、心配そうにニコの様子を覗き込む。


 イーネとベリーの姿はない。


 赤霧(せきむ)(くさび)という、アンカがタワーに張った結界のようなものが晴れた途端に、2人でアンカの元へ行ってしまった。


 つまり、アンカとイーネとベリーの3人は、今は可笑しなタワーにいる。

 

 ニコがゆっくりと上半身を持ち上げる。


 マリが言う。

 

「危険だと思ったらニコとここを離れてって言われてるの。……今は…………。むしろ静かすぎるくらいで……。大丈夫だとは思うんだけど……。」

 

 ニコは、マリの言葉を理解したという意思表示として頷いた。


 その時だった。

 

「マーーリさんっ!」

 

 それはタトラスの声だった。


 マリとニコは驚いて声の方を向く。


 そこには、地面から少し離れた空中。見えない床でもあるかのように、タトラス、ララン、ライナックス、ボルドーが立っていた。


 そして、その中心では、見知らぬ男が、そこに見えない椅子でもあるかのように、頬杖をついて座っていた。

 

「………………タト…………。」

 

 マリが呟くように言うと、タトラスが話す。

 

「マリさん。俺らと一緒に来ませんか?」

 

「………………え?」

 

 マリが戸惑っていると、今度はラランが言う。

 

「あんたもよ!ニコ!言ったでしょ?!ガド様が来たら、誘ってあげるって。」

 

『…………。』

 

「…………ガド……様……。」マリ

 

 マリの呟きに、ガドが少し反応して言葉を返す。

 

「こんばんは。」

 

「…………。」『…………。』

 

 マリもニコも反応できずに、沈黙の時間が流れる。


 ガドが言う。

 

「タト。振られてる?」

 

「前からマリさんには振られてますよ。」ライナックス

 

「いやっ!振られてないから!デートしてるし!それを言うならラランも一緒じゃん!」タトラス

 

「はっ?!ちょ!振られるとか、そーゆーのじゃないし!そいつ話せないのよ!だからよ!!」ララン

 

「あら。そーなの。大変ねぇ。」ライナックス

 

(緊張感がまるでない………………。)マリ

 

 またタトラスがマリに向かって話す。

 

「ほらっ。マリさん。約束してたじゃないですか。」

 

「……約束?」

 

「俺らのアジト。教えるって。」

 

「……あ。」

 

 それは寿命屋で、タトラスを、ミコとのやり取りに立ち会わせる約束をした時に交わしたものだった。


 タトラスの言葉に、仲間内から次々と声があがる。

 

「なんて約束してんのよ。ドン引きなんだけど。」ララン

「それ、ミコちゃんの時のよね?」ライナックス

「好きな女の子為なら何でもしますね。恥ずかしくないんですか?」ボルドー

 

「ちょっ!カッコつけてんだから邪魔すんなよ!」タトラス

 

 仲間の言葉を制して、タトラスはまたマリに向き合って直って言う。

 

「それに。マリさんは俺らのスパイなんでしょ?なのに突然いなくなって。任務放棄ですよ。」

 

「うわ。利益で女つろうとしてやがる。」ララン

「諦めた方がいいんじゃない?」ライナックス

「カッコ悪いですよ。」ボルドー

 

「ちょ!おまら!黙って!!」タトラス

 

 もう一度、仲間の言葉を制して、もう一度、タトラスはマリに向き直った。


 そして、マリに向かって片手を差し出す。

 

「それに。俺は、マリさんは、こっちにいる方が生きやすい人だと思います。一度こっちに来て、嫌なら戻ってもらっていいですよ。俺が責任もって送り届けます。」

 

「…………。」

 

「俺。言いましたよね。自分の選択肢は自分で決める。」

 

「…………。」

 

「マリさんは、自分で選んだ方がいい人間だ。……じゃないと。……ずっと死にたいままですよ。」

 

「………………っ……。」

 

「決め方が分からないなら。俺が手伝います。」

 

「…………。」

 

 マリは戸惑いの表情を浮かべる。


 手を差し出してくれているタトラスから、視線を外せないまま。

 

(…………そもそも……。私は……。この人達のこと悪だと思えない……。それに……。この人達が、それほどまでに会いたかったガドさんって人は、どんな人なんだろう……。もし、この手を掴んだら……。私は何者になるんだろう……。どうして死にたいのか、ずっと分からない……。死ぬかもしれない世界に来ても、それは変わらなかったのに、私は死ぬことが出来なかった……。私は……。この世界で何者でも無い私は……。)

 

『マ゙……り゙…………。』

 

 ガラガラの声で、ニコがマリの名前を呼んだ。


 マリは驚いて振り返る。


 そこには、心配そうにマリの事を見るニコの姿があった。

 

「…………はっ……。はぁっ……はぁ……。」

 

 マリは何故か息を止めていたのか、ニコの顔をみた瞬間に呼吸を思い出して、少しだけ荒い息をする。


 ラランが言う。

 

「ひっっっっどい声。まだまだヘッタクソねっ!」

 

 その言葉で、ニコの視線がラランに移る。


 ラランが続ける。

 

「あんたの力はコントロール出来るものになる。そーなれば、普通に会話できるようにもなる。」

 

『…………。』

 

「私達は組織でも何でも無い。あんたの好きに生きればいい。ただ、あんたの事気に入ったから、困ってんなら手伝ってやろーって言ってんの!分かる?!」

 

『…………。』

 

「…………ねぇ。これ、俺。差し出した手は、いつまで出してたらいいんだろう……。」タトラス

 

「ずっと出しときなさいよ。男じゃないわねぇ。」ライナックス

 

 すると、少し時間が経ってから、ニコはフルフルと首を横に振った。


 それを見たラランは、少しイラついたように言い放つ。

 

「……………………っ!……あっそ!!」

 

「やーい。振られたぁ。」タトラス

 

「はぁ?!そーゆーんじゃない!つってんでしょ?!ぶちかますわよ?!!」ララン

 

「あんたも振られてるじゃない。」ライナックス

 

「いや!まだ手ぇ出してるからっ!!」タトラス

 

 そのタトラスの手に。


 マリの手が触れた。


 よそ見をしていたタトラスはマリの方を見る。


 マリはタトラスとは視線を合わせず、後ろを振り返って、ニコの方を見た。


 ニコは少し心配そうな表情をしているだけで、マリを止める気は無いようだった。


 マリはニコに向かって言う。

 

「………………み…………んなに…………。お願い……。」

 

 マリは何と言えばいいか分からず、それだけの言葉を残したが、ニコはゆっくりと頷いた。


 その瞬間、タトラスがマリの手を握り直して、同じ場所に立てるようにマリの体を引き上げた。


 マリは驚いたが、自然と、空中の見えない床に立てている。軽くタトラスに抱き寄せられるような形になっていた。


 一拍置いて、ガドが言う。

 

「じゃ。いこっか。」

 

 ニコだけを残して、黒い塵が飛散するかのように、マリを含んだガド達の姿が消えた。

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