表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/135

21-⑥ 呪い

 <ニコ>

 

 ラランは右手にマイクを握ったまま、左手で肩から下げていたギターを外し、真横に置いてあったギターラックに戻した。

 

「あっっっけな。人質にもなんないわ。こいつ引きずって、マシロんとこに持ってく方がダルイんだけどっ…!」

 

 イラつきながら、ラランが床に突っ伏した状態のニコに近寄ろうとした時だった。

 

 カリリッ

 

 ニコの手足に力が入る様子が見てとれ、ラランは動きを止める。

 

「はぁ?まだ動けんの。だぁーーーーるっ。」

 

『…………♪……♪……♪…………。』

 

「…………はぁ?」

 

 ニコのヘッドマイクセットは、まだ問題なく機能していた。


 ニコの口元のマイクを通して、微かな歌声が聴こえる。

 

「冗談よしてくれない?歌うなっつったでしょ。」

 

『……♪………………♪…………。』

 

 ニコの手足に力が入る。


 起きあがろうと、四つん這いの姿勢になっていく。


 

'ウタオウ!タノシイヨ!'

 

(やめろよ……。お前のせいで話せなくなった……。)

 

'アノコダヨ!イッショニウタオウ!'

 

(それでも……。ジャンクを全て討伐する……。俺みたいな……。ジャンクに家族を奪われる人を、この世から無くす為に……。その為に……。)

 

'ジユウニ!タノシク!ジユウニ!'

 

(お前達ジャンクのせいで、傷ついた人が沢山いるんだぞ……。)

 

'トモダチニナッテ。サミシクナイヨウニ。'

 

(俺は元々お喋りだし、カラオケでいい点とったことねぇし……。皆んなに音痴だって言われて来たんだよ……。できるのはサッカーくらい……。そいつらとも、こんな状態で会えなくなった……。)

 

'ウタハセカイヲカエルンダヨ!ザイニンノタマシイダッテ!'

 

(喋りすぎだろ……。お前……。やっぱ普通のジャンクと違ったんだな。何で俺なんかを選んだんだ……。)

 

'キミナラキット、アノコノトモダチニナッテクレル'

 

(…………じゃあ俺の言うこと聞きやがれ……。友達ってのはな、ちゃんとぶつかれないとなれないんだよ……。)

 

'……イイヨ。デモ、モウ、チカラハキミノ。コワガラナイデ。コバマナイデ。ウタハ、ウマクテモヘタデモイイノ。アノコガイッタンダヨ'

 

(……俺がブレーキ踏んでるってのか?)

 

'シンジテ。ウタハセカイヲカエルンダ'

 

(……言っただろ。元々音痴なんだって。これは、お前のせいで……。)

 

'ソンナコトナイ、ジョウズダヨ'

 

(……慰めんな。)

 

'チガウ。キミノチカラダ。ボクハキミヲトオシテタノシンデイル。シンジテ'

 

(……。)

 

'タノシイヨネ!!!!'


 

『♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪!!!!』

 

 お世辞にも上手いとは言えない、怒鳴り声のような歌声。


 後先の事も考えない、今だけの声。


 まるで魂の叫び。


 自己中心的で罵詈雑言のような歌声。


 けれど、それは強烈な"力"となってラランを襲う。

 

「……がっ……?!」

 

 ラランが口から血を吐く。


 それは内臓が打ち付けられたような痛み。


 耳からもゆっくりと血が流れる。

 

「………………ざっっっっっっっけんじゃ………………ざっっっっっけんじゃないわよぉぉおおおおお!!!!!」

 

 ラランがマイクを構える。

 

「あの子に歌わされてるだけのお前がぁぁぁあああ!!我が物顔でステージに立つなぁぁぁあああああ!!!!」

 

 ラランが大きく息を吸う。

 

「♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪!!!!!」

 

 最高の歌姫の歌声が響く。


 強烈なインパクト。


 のめり込みたくなるほど魅力的。


 上手(じょうず)だと、その言葉では表現できない上手さ(うまさ)

 

(……シッテル……。この歌……。)

 

『♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪!!』

 

 ニコがラランの歌声に歌声を重ねる。


 お互いの力がぶつかり合い、部屋の中に突風が吹き荒れる。空気が、音の振動によってビリビリと震える。

 

「♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪!!」

『♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪!!!』

 

 歌だけでは拮抗していた。


 むしろお互いを高め合い、互いのボルテージが上がっていく。


 ここはラランの為に用意された部屋。


 歌によって身体能力が極限までに底上げされた2人は、部屋の壁に並べられた武器を手に取る。

 

 ズガガガガッズガガガガッズガガガガッ

 

 機関銃が火を吹く。


 当たり前のように部屋の壁を走る2人は、遠距離武器と近接武器を手に取り、遠距離から銃撃戦を繰り広げながら接近する。

 

 ガチンッ

 

 剣と剣がぶつかり合って火花が上がる。

 

「♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪!!!」

『♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪!!!』

 

 2人とも、何度も目が合う。


 何度もお互いを確認し合う。


 歌声は重なり、今までに聴いたこともないハーモニーとなる。


 2人とも、全力の笑顔で殺り合う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ