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21-⑤ 呪い

 <少し前 水の都アトランティア マシロ達のアジト>

 

 マシロはいつものオープンキッチンのカウンターに腰掛けている。


 そこから少し離れて、マシロを囲むように椅子を持ち寄り、タトラス、ララン、ボルドー、ライナックスが座っていた。


 ラランが言う。

 

「ねぇ!結局、あのきょうだい殺すのに、なんでこんなまどろっこしいことになってんのよ!!!」

 

 それにマシロが返す。

 

「相手が強いからだよ。特に。赤い髪のアンカって子が。一対一であることは必須だ。」

 

 それに、ラランが不服そうに言葉を返す。

 

「少なくとも、イーネとベリーって子は雑魚じゃない!聞いてて分かるわよ!!先に殺して、全員でアンカって奴を殺す!何がダメなの?!!」

 

 それにはタトラスが、少し引いた顔をしてラランに苦言を呈した。

 

「いや。だから。イーネとベリーを殺すにしても、アンカって子が邪魔じゃん。だからミョリちゃんの力で分散させた訳で……。糸を回収するには、完全にバラバラでゴール地点に行かないとダメだからさ。糸の"あそび"はこっちで調節するんだから。って。向こうも、その誘導まで分かってて、乗ってくるんだろーけど。」

 

 それにラランが不服そうに返す。

 

「そもそも!そのミョリって子の能力をワザワザ使う意味も分かんないのよ!!それに!糸を仕掛けたメンバーも!あと!!糸を仕掛けた奴以外の核師も、大量に引き連れて来たらどーすんのよ!面倒くさいじゃない!!」

 

 それにマシロが答える。

 

「悪意のある罠には、あのアンカって子は絶対に引っかかってくれないよ。ミョリちゃんの罠だって気づかれていたみたいだし。大したものだよ。彼が能力者というものに慣れてないうちに仕掛けられて、むしろラッキーだったんだ。糸を仕掛けるのは、勿論、狙うきょうだい達と、保険として、人質にでもなりそうな他の核師を数名にしたかった。……そしたら、タトラスはマリさんがいいって言うし、ラランは歌の能力者がいいって言うし。……わざわざ嫌な能力の戦闘員を指名したのは君らでしょ?」

 

「そ、それは!!そーだけど……!」

 

「まぁ、そこはいいんだけどさ。あと、きっと、糸を仕掛けたメンバーしか来ないよ。そもそも弱い核師は、ただ死に来るだけのようなものだ。使えない奴は置いてくだろ。僕達の狙いはきょうだいだとバレてるんだから、無駄に犠牲者を増やすようなことを、あのきょうだいはしないさ。それに。きっと自信があるだろうからね。……自分達の力に。」

 

 マシロの言葉に、納得はしたくないのに納得したような表情でラランが返す。

 

「…………あっそ!!!!でも、あんた、さっき一対一とか言ったじゃない?!どーすんのよ!人足りないわよ?!ライナックスは非戦闘員で参加しないんだから!!今から昔のよしみでも探そうって訳?!!」

 

 ラランの言葉に、タトラスがボルドーに向かって「俺たちも非戦闘員だよなぁ?」とボソボソと耳打ちし、それに対してボルドーが「ですよねぇ。」なんて返しているのは気づいていても無視されていて、マシロが言葉を返す。

 

「ラスターの遺作を使うよ。」

 

「はぁ?!あんた、あいつの作ったジャンクのマガイモノ!だいぶ使って殆ど残って無いとか言ってなかった?!」

 

「残ってないよ。核師の死体を組み込んだジャンクは殆どね。残ってるのは、生きてる人間に使える方だ。」

 

「はぁ?!それも結局、大量のジャンクが必要だとか言ってなかった?!」

 

「そーなんだけど。…………もしかしたら、もっとエコに使えるかもしれないんだ。」

 

「どーゆーことよ?!」

 

 マシロは小瓶を片手に話す。


 瓶の中には黒いものが蠢いていた。

 

「……ただ、これに飲み込まれない意志の強い人間がいる。意志なんて、綺麗な言葉過ぎるかな。……欲望。といってもいい。……でも。それも。タトと話してたら、何とかなりそうだからさ。」

 

「はぁ?まじ意っっ味わかんない。」


 ――――――――――――

 ギャガァギャァアアアアアアアアッ

 

 マイケルは完全にジャンクとして変わり果てていた。


 言葉も話さなくなり、けたたましい咆哮をあげる。


 人の体よりも一回り程大きいだけの四足歩行の獣。


 皮膚が棒状にのび、体毛と尻尾のような形を形成して、モップのような体をしならせてイーネとマリとの距離を詰めてくる。


 ジャンクの体はまだ少し不完全なのか、所々に水疱ができては消えていく。


 マリが言う。

 

「…………ラスターさん……の時と……様子が違うよね?……。」

 

「……マシロだろ。何か手を加えてやがる。」

 

 ジャンクが、イーネとマリに向かって踏み込んだ。


 ジャンクの足元の床が割れる。

 

 ドッ

 

 そのままイーネに突進したジャンク。

 

 ブシュッ

 

 イーネは手をクロスにして防御姿勢をとったが、その上から、大口を開けて喰らい付いてきたジャンクの牙によってイーネの血が飛び散る。

 

「……きっしょ……!」

 

「イーネ!」

 

 ――。

 

 イーネが能力を発動させてジャンクの背後に回る。


 それを察知したかのようにジャンクはグルリと後ろを向いた。

 

(……くっそ!)

 

 ジャンクが、イーネに喰らいつこうと飛びかかる。

 

 ドッ

 

 そのジャンクの側面に、割れた床の破片が飛び込むように突き刺さり、ジャンクを遠くは飛ばした。

 

 ズザザッ

 

 ジャンクは床を滑る様にしながらも、直ぐに体制を直して再びイーネに向かって飛びつく。

 

 ――。

 

 イーネの能力で、ジャンクから大きく距離を取った場所にイーネとマリが移動する。

 

「イーネ大丈夫?!」

 

「かすり傷だよ。……助かった。」

 

 ギャガァギャァアアアアアアアアッ

 

 ジャンクの皮膚が棒状に伸びて出来た、体毛のような物が、無数の針のように伸びてきてイーネとマリを襲う。

 

 ――。

 ズドドッ

 

 全ての皮膚の針が、床に突き刺さる。


 イーネとマリはジャンクの背後に移動していた。

 

 ガガガガガッ

 

 ジャンクは、皮膚の針を床に突き刺したまま、無理に後ろを振り返り、床と壁が大破しながら、瓦礫と共に、刃のようにイーネとマリに迫る。

 

 ――。

 

 イーネの能力で、ジャンクとさらに距離を取るように下がる。

 

 ギャガァギャァアアアアアアアアッ

 ドッ

 

 すると、今度は床に突き刺したままの皮膚の針を支点にジャンクは大きく飛躍し、一気に距離を詰めてくる。

 

(……防ぐしか……手が無い…………!)マリ

 

 ケイトの能力を扱うマリは、瓦礫の破片を集めてジャンクとの間に壁になるように並べる。

 

 ドガッ

 

 しかし、それはいとも簡単に突破され、ジャンクの牙がマリに向かう。

 

 ――。

 

 また、イーネの能力でジャンクの背後に転移した。

 

 ブシュッ

 

(……?!…………こいつ!…………学習して……?!)イーネ

 

 まるでそれを読んでいたかのように、背後に回ったイーネの肩にジャンクの皮膚の針が突き刺さった。

 

 バッ

 

 さらに、突き刺さった皮膚の先は、傘のように広がり、イーネの体に引っ掛かけて、勢いよく引き込んだ。


 引き込んだ先では、ジャンクが大口を開けている。

 

 ――。

 

 イーネの能力によって、イーネの姿が消える。

 

 ドッドッ

 

 更には複数の瓦礫が、ジャンクの体に突き刺さって物理攻撃を加えた。

 

 ガギャガグルグググググッ

 

 物理攻撃はジャンクにそれほど効いている様子は無く、ジャンクは、自身の体からでる水疱に苦しむように動きを止めて身を捩っている。

 

 ジャンクを真ん中に挟み、距離を取って対面上にイーネとマリがいた。

 

(……やば……待って……。結構きつくない?!…………アンカさん来るまでって………………いつまでよ?!)マリ

 

 ピリリリリリッ

 

 突然、着信を告げるような機械音が鳴る。


 それはイーネのポケットから鳴っているようで、イーネはジャンクからは視線を外さないまま、会社から支給された通信端末を取り出し、少し操作して耳に当てた。

 

「……………………………………………ふざけんなよ……。」イーネ

 

 ガギャガグルグググググッ

 

 ジャンクが体を震わせる。


 体の水疱は時間が経つと共に減って来ている。


 イーネは通信端末をしまった。

 

 ギャガァギャァアアアアアアアアッ

 

 ジャンクの皮膚が、全方向に針のように伸びる。

 

 ズガガガガッ

 

 それはまるで鋼鉄の槍のようで、壁や床が次々と大破していく。

 

 イーネの能力で距離を取っても、執拗に追いかけてくるその攻撃は、大雑把でもあり、針の間を縫うように2人は攻撃を回避した。

 

 全ての針が打ち終わったのか、ジャンクの動きが止まる。

 

 ギャガァギャァアアアアアアアアッ

 

 耳をつんざくジャンクの咆哮。

 

 ブシュッ

 

 床に刺さった皮膚の針。マリとイーネの周囲の皮膚だけが、枝分かれし、松の葉のようになってマリとイーネの体に突き刺さった。


 重要臓器を貫くほどの威力はないが、腕や足、頬などを貫き、血が滴り落ちる。

 

 ズルッ

 

 皮膚の針は、ジャンクの体に巻き戻るようにして戻っていく。

 

 ――。

 

 その隙をついて、イーネの能力によって、ジャンクから少し離れた位置にマリとイーネが横並びになるやうに転移した。


 マリがイーネに声をかける。

 

「さっきの連絡。なんだったの?」

 

「…………来ない……。」

 

「……………………え?」

 

「クソ兄貴って言ったこと。しっかり根に持ってやがった。あいつ。クソが。」

 

「…………………………嘘でしょ?きょうだい喧嘩してる訳?こんな状況で。」

 

「………………。」

 

「嘘でしょ?!!」

 

 ギャガァギャァアアアアアアアアッ

 

 ジャンクが、マリとイーネに向かってくる。

 

(…………早いっ!!)マリ

 

 それは目で追えないような速度で、ジグザグに体を捻らせながら向かってくるジャンクは、大口を開け、前足の鋭い爪を向けて飛びかかってくる。

 

 ――。

 

 イーネの能力で回避する。それしか方法は無い。


 しかし、ジャンクがもつ野生の感のようなものは、時間が経つほどに研ぎ澄まされていた。


 転移先を読むかのように、ジャンクは急激に方向転換し、まだ転移しきらないマリとイーネに飛びかかる。


 転移が完了する頃には、ジャンクの牙が届いている。そんな状況。

 

(……ダメ……避けれない…………!)マリ

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