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21-④ 呪い

 <アンカ>

 

 タトラスは扉の前の階段に腰掛けたままアンカに話しかけている。


「俺、これでも医者やってて。あ。免許とったのは最近なんだけどね?昔っから、闇医者まがいのことはやっててさ。」


「ご立派なんですね。」

 

「いやぁ。それほどでもぉー。あ。じゃないじゃない。そーじゃなくて。医者事情には詳しい訳よ。これでも。」

 

「そーですか。」

 

「んでぇ。ある時。小児科で権威のある医師が、故郷の港町で小児科院を開くことにしたんだよ。とっても頭が切れて、仕事ができて、おまけに性格もいい。珍しいタイプのお偉いさんだったから、それはそれは皆んなに惜しまれていたけれど、その医者は患者と関わり会える事を選んだ。ほら。医者ってさ。偉ければ偉いほど、患者を見れなくなるからさー。って、分からないか。」

 

「まぁ、想像はつきますよ。」

 

「んで、その元、えらーーいお医者が、何年か前に、新たな症例を上げたんだ。でも。それは誰の目にも止まらなかった。……今思えば、誰の目にも止まらないようにしたんだろうね。」

 

「…………。」

 

「知ってる人間も数少ない。影に隠れた、その貴重な貴重な症例。……病名は。」

 

「…………。」

 

「………… 倍年成長障害ばいねんせいちょうしょうがい。」

 

「…………。」

 

「成長障害といっても。健常者と全く変わない成長過程を進む。なんの問題もない。」

 

「…………。」

 

「…………ただ、問題なのは、健常児と比較した時に、その成長スピードが、"倍以上にかかる"。って所だけだ。」

 

「…………。」

 

「つまり、単純に言えば、1歳児相当になるのに2年かかる。そのまま進んで、6歳児相当になるのに12年かかる。」

 

「…………。」

 

「…………………………。君。20歳そこらだろ?…………もし……。もしだよ。仮に君がその症例だと仮定すると……。君は今の年齢相当になるのに、40年は生きていることになる。」

 

 断言するかのように話すタトラスに、アンカが言う。

 

「…………。それも。カルテに書かれてるんですかね?」

 

「うーん。可能性が示唆されている。とだけ言っておこうかな。」

 

 アンカはそれ以上の言葉を発さない。


 タトラスが続けて話す。

 

「この病が事実だとすれば、もっと大事(おおごと)になっていいと思ったんだよね。当時。……だけど、そうはならなかったのは、その小児科医が、随分と気を使ったからじゃないかなぁ。」

 

「…………。」

 

「何でそんな気を使ったか分からないけれど。……俺の勝手な想像を話すとしたら。……普通の子供がかかる病ではないと考えたから。もしくは、そもそも、病なんかじゃないと考えたから。……でも、正常を逸脱した子供には、医師の診断が必要だった。……世間体の為……。とか。かなぁ?」

 

「…………。」

 

「その医者。もぉだいぶ爺さんのはずだ。元気にしてる?」

 

「…………。今は息子さんがメインで頑張っておられますよ。」

 

「へぇ。そりゃ良かった。」

 

 少しの間、沈黙の時間が流れる。


 またタトラスが話す。

 

「僕がまともに会ってるのは、君とイーネだけれど。イーネの事を思うと分かりやすいよね。」

 

「…………。」

 

「見た目も精神面もまだ幼い。なのに、その年齢にそぐわない知識量や、落ち着き放った態度。……そのチグハグさ。」

 

「…………。」

 

「それでさ。本題は実はここからだったりするんだけど。」

 

「まだ続くんですか?」

 

「そー言わないでよぉ。」

 

 タトラスはうっすらと笑みを浮かべて話していたが、真剣な顔つきになって言う。

 

「………………君達きょうだいが、倍年成長障害ばいねんせいちょうしょうがいだとして。……俺は。君達以外にもたった1人だけ。……その症例に当てはまる人物を知っている。」

 

「…………。」

 

 アンカは一つも表情を変えなかった。


 タトラスは真剣な顔つきでアンカの様子を伺う。


 するとアンカは「……はぁ。」と小さな溜め息をついて、体の力を抜き、くだけた様子で話し出す。

 

「"カルテ"。いい能力ですね。」

 

「でしょ?」

 

「最近、急に色々な能力者と接する事になって。ほんと。驚くことばかりで。なんかまだ……慣れないんですよね。」

 

「…………。」

 

「タトラスさんの、その"カルテ"。万能では無いんですね。」

 

「………………ん?」

 

「あくまでも、あなたのプロファイリングを元にしている。確かに情報の補完のしかたは凄いのかもしれないけれど。あなたの持つ常識の範囲でしか反映されない。」

 

「……………………どーゆーことかな?」

 

 アンカは不敵な笑みを浮かべて言う。

 

「俺とリンは、イーネやベリーほど抵抗ないんで、簡単に"行き来"しますよ。」

 

「何の話し………………?」

 

「"呪い"の話しです。」

 

 タトラスは目を見開き、目の前のその光景に驚きを隠せない。


 タトラスは唖然としまま言う。

 

「………………誰。…………君。」


 ――――――――――――

 <イーネ、マリ>

 

 ギャガァギャァアアアアアアアアッ

 

 マイケルとしての原型は、もう殆ど留めていなかった。


 体中に水疱のようなものが出来ては、膨張と収縮を繰り返す。

 

 イーネとマリは、それぞれ能力を使いながら、マイケルの攻撃を回避し、時に反撃にも出たが、どれも有効打にはならず時間が過ぎていた。


 イーネは思考する。

 

(ラスターの時は余裕が無かったからな。今冷静になってコイツを見れる。……人間を核にして、その体組織が膨張……。量さえあれば鞭や槍のようなものを構成でき、人由来なのか、人をジャンクにたらしめている物由来なのか分からないが、熱のようなエネルギーを光線や爆弾に変換することができる。……ただ、こいつは"肉"が足りないな。それほど大きくもならず、攻撃も単調で変わり映えしない。……そーいえば、ラスターの野郎は大量のネズミ型のジャンクを取り込んでやがった。あの大きな塊のようなジャンクになるには、人間の核と、それに取り込ませる大量の"肉"が必要なのか……。寿命屋のこいつは、ゆわば不完全体……。…………あ?……不完全?……俺らを殺す気じゃなかったのか?……。)

 

 ギャガァギャァアアアアアアアアッ

[かかか返して……返して……もらええええる。為に…………。ホボボボ僕が…………ししししシツカリし……しな…………きゃ…………。みみみみみみミコみこみこみこみこみこミコちゃん……。]

 

 不安定だったマイケルの体は、徐々に落ち着きを取り戻すように、全身に出来ていた大きな水疱が収縮していく。


 裸で四つん這いの姿勢のマイケルの手足は、獣の様に筋肉質で、爪が鋭く、体の表面の皮膚が細く棒状に伸びて体毛のように全身を覆っていた。


 それはまるで、肌色で毛むくじゃらの、四足歩行の何か。


 瞳孔は縦に鋭く、獣のように発達した口からは唾液が滴り落ちる。

 

「…………マシロが手を加えたな……。」イーネ

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