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21-② 呪い

 <ニコ>

 

 ニコは塔の中に入って地下に進んでいた。


 タブレットで足元を照らしながら進み、石の壁で出来た廊下や階段を進む。


 いつしか、ワンフロア吹き抜けの広い部屋の中まで来ていた。


 周囲を照らすと壁には、剣や銃、槍や鈍器、鎖や拷問道具など、この世のありとあらゆる、多種多様な武器が、飾られるかのように綺麗に並んでいる。

 

(……雰囲気怖い。けど。俺の能力的には最高の立地。)

 

 ニコが、そんなことを思っていた時だった。

 

 バチンッ

 

 スイッチを入れるような音がした。


 部屋の奥が突然明るくなり、思わず目を細める。


 円状に一段高くなり、まるでステージのようなその場所に、強烈なスポットライトが当たっていて、1人の女の子がギターを肩から下げて立っていた。


 片手にはマイクを握り、ピンクの髪をツインテールにした、ゴスロリ風の衣装を着た彼女が言う。

 

「あんっったがニコ・リードねぇ?!!!!」

 キィィィンッ

 

 マイクに向かって大声で話すため、ハウリングの甲高い音がした。


 ニコは思わず両手で耳を覆って、怪訝な顔をしてみせる。


 彼女が続ける。

 

「私の名前はララン!!あんたの事を指名したのはアタシよ!!!」

 

「…。」

 

 ニコは話せない代わりに、『分かった』の意思表示として軽く手を挙げた。


 今度はラランが怪訝な表情をする。

 

「………………何よ。…………その態度。…………まぁいいわ!私ね!アンタに恨みがあんの!!!」

 

「…。」

 

 ニコはカタカタとタブレットを操作する。


 少ししてから、音声読み上げ機能で、タブレットから機械音がした。

 

『初めて会ったノニ。何の恨みがアルんだ。』

 

「…………その……。………タブレットのそれ………。何よ……。……なめてんの?…………。」

 

 またニコがタブレットを操作する。

 

『舐めてないよ。真剣ダ。』

 

「………………。ま……。い、いいわ。……私にはね!たった1つ!!私の血を分けた子がいたの!!」

 

「…。」

 

「とっても仲よかったのよ!!…………でも、あるとき逃げちゃって……。暫くして、あんた達核師に討伐された事を知ったわ。」

 

「…。」

 

「私に似た能力者がいるって聞いてピンときたわ!!アンタはその子の血清に適合した!!つまり!アンタは!あの子の仇なのよ!!!」

 

「…。」

 

 ニコがタブレットを操作する。

 

『俺が倒した訳ジャないカラ。仇では無クない?』

 

「ちょっと!!!!!あんた!!!なんなのよ!さっきからそれ!!!いちいち邪魔くさいわね!!喋りなさいよ!!!!」

 

「…。」

 

 ニコがタブレットを操作する。

 

『喋れないンダよ。血清の副作用で。誘暴症って知っテる?』

 

「しらっっっないわよ!!!しるわけないでしょ?!血清の副作用で喋れない?!はぁ?!何?!喋ったら死ぬ訳?!」

 

「…。」

 

 ニコがタブレットを操作する。

 

『歌う事が止めラレない。歌いタイ衝動が体を支配シテ、ゆうことを聞かナクなるんだ。』

 

「……………………………………………………は?」

 

 ラランの表情が曇る。


 それは怒りに近い表情だった。


 ラランはボソボソと、ニコの元へ届くか分からないような声量で言う。

 

「…………なによ。……それ。……血清の副作用?……あの子の……?そーゆーこと…………?」

 

「…?」

 

「……………………………………副作用?…………支配…………?…………はぁ?…………自分で止められない?……歌ってねぇ……。歌って…………。何……?じゃあ…………あんた……歌わされてんの?…………あの子に……。」

 

 ラランの最後の言葉を、質問だと受け取ったニコが返す。

 

『力の為に歌ってル。ジャンクを倒す為ニ。元々、歌は得意じゃ無いし。今は副作用が出ないようコントロールしてるとこ……。』

 

「はぁぁぁああああああああああ?!!!!!!」

 キィィィンッ

 ジャァァアンッ

 

 ハウリングの甲高い音と、ラランがギターを掻き鳴らした音が響いた。

 

「………………あっ……そう。…………分かった。……………………もういいわ。…………あの子が選んだ奴だと………………………………ほんの少しでも期待してたんだ…………私……………………。」

 

 ラランは俯く。


 表情は見えないが、僅かに震える体からは、怒りと、それ以外の感情を感じる。


 ラランがギターを持つ手にさらに力を込めた。

 

「ばっかみたい!!!!!!」

 

「…。」

 

 ニコはラランの言葉や感情が理解できずに、その光景を眉を顰めて見ていた。


 ラランが続ける。

 

「そーいや。あんた。オーディエンスを選べないって聞いてたわ。なるほどね。だからだ。あーーーーーーあー!納得。」

 

(……オーディエンスを選べない?)

 

「あんた。あの子に歌わされてんだ。そんなんで、私と同じ力?はぁ?!!冗談じゃないわ!!!!!」

 

 ラランがマイクを構えた。


 それに合わせて、ニコも戦闘体制を取りながら、ヘッドセットマイクの準備を整える。

 

「歌ってのはねぇ!!自分で届けんの!!!あんたは、あの子の力を都合よく扱えた雑魚!!それはアンタの力でも何でもない!!!黙ってきいてろ!!二度と歌うな!!!アンタと私で何が違うか!!!感性も品性もないその耳かっぽじって脳汁ぶちまけて地面につっぷしな!!!!!!」

 

 ラランが深く息を吸う。


 次に音に乗って出た言葉は。


 一語目から、人に衝撃を与えるものだった。

 

『♪♪♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪♪♪』

 

 ジャンキーで強烈な歌声。


 その声に魅了されると共に、能力としてニコの体を地面に叩きつけた。


 ニコは地面にうつ伏せの状態で動けなくなる。


 それだけでなく、響き渡る音楽の震えを通して、体に強力な圧がかかって地面にめり込むような感覚を覚える。


 ラランの歌声は、脳に、心臓に、内臓に、響き渡り、口から血を吐いてもギシギシと痛む。

 

『♪♪♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪♪♪』

 

 死を感じながらも聞いていたくなる歌声。


 魅了されればされる程に、死が近づく。


 ニコは指先の一つも動かせない。

 

『♪♪♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪♪♪』

 

 ニコとラランが出会ってから、ものの数分。


 ニコの目から光が消えていっていた。

 

『♪♪♪♪♪♪♪♪………………。』

 

 ラランが歌の途中でやめ、冷たい視線でうつ伏せのままのニコを眺める。


 ラランが言う。

 

「…………1番くらい、歌いきらせなさいよ。雑魚でもさぁ。」

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