第八十六話 狭
深部へと続く坑道は螺旋状に地下へと下っていく。
「……前に何かいる」
前方で警戒するヴィルジニーが注意を促す……蔓草をまとった干からびた死体達がツルハシを手にし闇の中をさまよっている。
「二体……後方に人型じゃないのがもう一体……」
物言わぬ死体達はアンリ達に気づき接近する。
ハイディは魔法銃を構え、炎弾を放つ。
「うっ……」
死体に炎弾が直撃し、人肉が燃焼する臭いが坑道に立ち込める。
「闇を彷徨う見えざる剣の刃、魔剣の疾走」
暗黒騎士ルーネはダートを投擲した後、淵術の刃を放ち、死体を切り飛ばす。
蔓草に取りつかれ白い花をつけた三つ目オオカミの死体がアンリ達へ走り寄る。レダがゾンビ化した魔獣を白花の剣で素早く切り伏せる。
「……」
アンリとハイディがルーネが倒した干からびた死体を確認する。
「……これはゴブリンじゃないな……」
死体を見たアンリが呟いた。
「この死体は人間だな……死んでからかなり経っているようだ」
「こっちの三つ目オオカミも結構古そうだ」
「……首輪や調教用の魔道具もネクロマンシーの魔力の痕跡もない……恐らくは野生の個体だろう」
……アンリ達は坑道を奥へと進む、更に瘴気が濃くなっていく。
日が届かない地下坑道の壁や天井を白い蔓がまとわりつき、幾つもの白い花をつけている。
「魔獣の餌になりそうな好瘴気性の植物が生えてるわね」
ミノタウロスの骨が転がっている。
「……死んだら魔獣が養分になるのか……ん、ミノタウロスの胃石か」
丸い石がランタンの灯に照らされて微かに青く輝いている。
「魔力がこもってる、拾っておくか……」
しばらく進むと開けた場所にたどり着いた。
「天井……暗くて見えないがかなり高いな、ここは何だろう?集積所か?」
木箱や朽ち果てた滑車が転がっていた。アンリはランタンを掲げ天井に目をやるが、上部の様子を窺い知ることはできなかった。
「昔はリフトで上層と繋がってたんじゃないの?」
ヴィルジニーが壊れた木箱を足でつつく。
「……待って誰かいる……皆、気を付けて」
レダが暗闇の中で待ち構えていた何者かに気づいた。
「なあ!あんた!アンリか!?」
暗闇の中に女の声が響く。
「そうだが、そういうアンタは何もんだ!?」
アンリにむかって暗闇からナイフが放たれる。アンリは氷壁を展開し攻撃を防ぐ。ヴィルジニーが素早く弓をつがえる。
「誰の差し金だ!……魔女か?」
「そうさ!あんたらを倒せば、魔女が金と不老の力を分けてくれるんだとさ!」
ナイフを装備した軽戦士風のオークの女と仲間と思しき重装備のオークの男が暗闇の中から姿を現した。……さらに鞭を持ったオークの女と首輪を着けた二体のミノタウロスがアンリ達の背後に走りよる。
「魔獣使いか……」
「瘴気の濃い場所じゃ人間よりアタシらの方が有利だね!」




