第八十七話 手駒
軽戦士風のオークの女はまとったローブの下から逆反りの鉈を抜き、アンリに切りかかる。
対するアンリは減速術式で氷の短刀を形成し、オークの女の攻撃を受け止める。オークの女は跳躍し宙返りしながらアンリの頭部を目掛けブーツで踵落としを放つ。
アンリは横に回避し、氷の短刀でオークの女を攻撃する。女は着地後の隙を見せず、鉈で攻撃を受け流す。
「速いな……」
「この暗さと瘴気の濃さでよくやる、本気ださないとね!」
……オークの男重戦士が暗闇の中、大剣を軽々と振り回す。ルーネが大剣の一撃を躱し、ダートを投擲する。
オークの重戦士は重厚な左腕の籠手でダートを弾く。
ヴィルジニーの短弓の矢が男の胸部に命中するが分厚い鎧に弾かれる。
「堅い……正面は無理か……」
ヴィルジニーは男の攪乱を狙い、男の死角を突くように暗闇の中を走り回り、魔力を込めた矢を放つ。
「む……」
加速術式の炎が灯った矢がオークの男の背を目掛けて放たれる。オークの重戦士は振り向きつつ、大剣で火矢を打ち落とす。
すぐさま、ルーネがポールアックスの一撃をオークの男を目掛けて放つ。男は回避行動をとるが、回避しきれず左肩にルーネの一撃が命中する。
「ぐ……う……」
硬い鎧を砕くことは出来なかったが、オークの男は苦しそうな息を漏らし、膝を震わせながら、壁際に後退する。
「背後を取らせないつもりね……」
ルーネがポールアックスを構え、ゆっくりと呼吸する。
……アンリ達の後方からやって来た魔獣使いのオークの女が魔力を込め鞭を振るうと、使役する二体のミノタウロスの筋肉が隆起していく。
……ナックルを装備したミノタウロスの重い拳撃をアルラウネの騎士レダが盾で受け流し、素早く踏み込み白花の剣で鋭い突きを放つ。
もう一体のミノタウロスがレダの突きを棍棒で横に弾き軌道を逸らす。二体のミノタウロスはレダを激しく攻めたてる。……レダは二体のミノタウロスの連撃を巧みに回避つつ反撃しながら、後退する。
「ルークスジャベリン!」
魔術師ハイディの放った光術の槍が棍棒を持ったミノタウロスの身体に直撃する。ハイディの光術を受けた魔獣は仰け反り、膝をつく。傷口から血が溢れだし、地面に赤い血だまりがつくられる。
「……暗き淵を生ける命の驚異を知るがいい、ゼノバイタル!」
後方の魔獣使いの女が淵術を行使するとミノタウロスの傷口に瘴気が集まり傷が再生する。
「直接手を触れずに再生か……魔獣使いの女を先にやらないと駄目か……?」
ハイディが魔法銃を構え呟いた。




