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機械仕掛けの白昼夢  作者: 乃月
【一章】霧の伽藍
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9:樹の先の伽藍

「ちょっと俺外出てくる!!!!!」


そう言って、少年は駆け出してしまった。


「もう、彗ってば変なの………、どうしてあんな急に…………」


ほんの少し、心の中に寂しさが現れる。ここ最近は感じなかったものだ。

何か、悪い事をしてしまったのだろうか。

自身に問いかけてみるも結局答えは出ないまま静かな時間が過ぎていく。


「彗………………」

【まーた、訳もなく呟いて…………なになに?惚れた?それとも……依存…?】

「少し、黙ってて」


誰か知らない、敢えて言うならもう一人の自分とでも言うべきか。

そんな相手に何かを言われるの久し振りの事だ。


「ねぇ、彗ってさ………私のこと……どう思ってるのかな……」

【さぁね、まぁ嫌いではないんじゃない?】

「そう…………かな…………」


やる気なさげに、いかにも面倒くさいという事を言葉に表しながらそう答えるもう一人。しかし、そんなやる気のない言葉でも本人に言われた訳では無いのに、鼓動が早くなる。心なしか少し体温も上がる気がする。何だかとても嬉しいような恥ずかしいような。

そんな気持ちに浸りながら外を見る。

何とも言えない沈黙が部屋の中を満たす。


「ね、ねぇ……その……彗は………」


投げかけられた問いは言葉となる前に、サイレンに掻き消される。


【ほら、お勤めお勤め。せいぜい頑張んな】


そう言ってどこかへ消える。

消えてしまったもう一人に、ほんの少し寂しさを覚えながら、ソファの上にある通信機を取る。


『各執行官に報告。中都第二エリア中央公園にて高密度の魔力を確認。近辺に居る執行官は確認に向かって下さい、理外者デリッターの場合は報告、後に処理してください』

「第二エリア………すぐそこじゃない………」


通信機を耳につけ、制服に着替えながら


「こちら、凰咲第壱執行官。至急向かいます」


と、手短に伝え通信を切る。本来こういう仕事は新人ないし、第一以下の執行官がする事で、第壱特務執行官の自分が行くとなると色々と言われる。

それが、単に嫌で面倒くさいからすぐに通信を切る。いつもの事だ。


「あ、そういえば彗…………、後で叱らなくちゃ……」


と、微笑み混じりに呟きながら扉を開ける。外には冬の気配が居座っていて未だに動こうとしなかった。




第二エリア中央公園は日中こそかなり多くの人、多くが子供連れ、で賑わっているがそれも夜となれば話は別だ。

ただひたすらに広い公園には人の影はなく、あるのは周りからの然りを拒絶した広場に広がる闇と、ところどころに配置される電灯だけ。


「えっと、指定された場所は…………」


と自分に言い聞かせるように独りごちながら耳の通信端末のボタンを押す、すると、空間にマップが表示され、赤い点で指定された場所が表示される。


「随分と奥まった所ね、まぁ別に問題ないけど……」


一瞬、頭の中に少年の顔が浮かぶ。それと同時に、恥ずかしさがこみ上げてくる。


「あぁ、もう!!私の馬鹿!!」


と、過去の自分。ほんの数時間前の自分を責めに責める。

少年、早乙女彗が訓練上で眠りに落ちた、と言うより眠りに落とした後、使い魔を呼び彗を家まで運びベッドに寝かせたのはいい。

そこまでは普通のことなのだが、彗の寝顔や寝息を聞いているうちに、自身のうちに少し隣にいたいという欲求が生まれた。

これは彗を異性として見るというよりは、母性本能のようなものだろう。

その結果、盛大に寝落ちして寝起きの彗と相見えることになったのだ。


「なんで、あんなこと………」


と、思い出すだけで顔から火が、湿度や温度、季節と風向きなどによってはマグマが出るほどの羞恥心に晒される。


「だめだめ!今は、任務に集中しなきゃ………」


そう言って頬を抓る。

鈍い痛みが顔全体に伝わり、意識が完全にそちらに行く。

あとは歩いて、さっさと任務を終わらせる事だけだ。帰ったら彗と、色々と話さなければ。色々と。


「よし!!早く終わらせて、帰ろう!!」


決意を口にし、もう一度マップを表示するともう指定の場所はすぐそこだ。


「意外に早く着ーーーーーーー」


鬱蒼と茂った木々の先、周りの木々に不釣り合いなほど大きな樹木が視界に映る。もちろん、樹木の前に立つ早乙女彗も。


「す、彗ーーーーーー」


呼び掛けようとしたがその声は届く事はなかった。

呼びかける直前に、彗は光に呑み込まれる。その光は空間転移を可能とするほど高密度の魔力の渦だ。


「これが、その正体だったのね……。でも、どうして彗が………」


と、彗が呑み込まれた光が現れた場所、大樹の目の前に向かおうとする。

が、そこで忌々しい通信が入る。


『凰咲執行官、魔力波の一時的な増幅を確認。そちらの状況は?』

「と、特には何も」


戸惑いを隠しきれず声が上擦る。が、通信越しの会話だったお陰でどうやらバレてはいないらしい。


『了解。理外者デリッター確認の際は連絡を入れてください』


と、そう言って本部通信室からの連絡が切れる。


理外者デリッターを確認した場合は……連絡……。でも、今は……」


違う。と、そう心に一二度言い聞かせる。同時に、周りの木々をざわつかせていた風も止む。

今一度、覚悟を決め、少年ーーー早乙女彗の消えていった所に向かう。



同じように少女も光の渦、荒れ狂う高密度の魔力の流れに呑み込まれる。

視界の全てを覆い尽くす眩い光。少女は光に身を浸す。

その先に少年がいない事を知らないまま。





はてさて、ここはどこだろうか。

天国ではない。地獄でもない。では何処だ。俺の貧しい知識では、人間が行けるような神秘的な所など、数が限られている。

つまら、今俺がいる所はこの世界から離れすぎた、美しく神秘的な異世界なのだ。


「おかしい、絶対におかしい。さっきまで何の変哲もないただの公園に居たはずなのに……」


それがどうして、こんな所にいるのだろう。

思考の内に明確に現れる焦りとは裏腹に、心の方は無風状態で、なんだか周りの光景に侵食されているようだった。

なんにせよ、この光景は美しい。憂鬱を感じるほどに。

所々に生えた木々を覆うように、まるで俺を世界から隔離するかの如く敷かれた石。

どうやらここは洞窟だ。それも、きっと人里から遠く遠く離れた未開の地。

生きとし生きる者、その悉くに忘れ去られた哀しい場所。

ふと寂寥感が脳裏を過る。

空を埋め尽くす星々は孤独の吹き抜ける洞窟の中、ぽつんと立ち尽くす俺をお見下ろしながら、ただきらきらと輝いている。

どこまでも幻想的な風景に自身と周りとの境が分からなくなっていく。

世界の色が薄れてゆく。感覚も。

いっそこのまま死まえと囁いているのではないかと思うほどに。

テスト終わったな〜、って思ってたらまたテストが近づいてくる。何なんですかねこの無限ループ。

そんな学生なら誰もが思う苦悩に打ちひしがれる日々です。

まあ上のは軽い言い訳なんですけど(笑)

今回やや短めです。でも、セリフが少なくて情景描写とかが多いのでなんか多く見えます(笑)



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