2:人生万事、急転直下
大変お待たせいたしましたm(_ _)m
学校行事や、個人の予定など、諸々の事情で投稿が遅れました。
本当に申し訳ないです!m(_ _)mm(_ _)m
お詫びとしては何ですが、今回いっぱい書きました。
ゆるしてくださいませませm(_ _)m
執行機関本部庁舎を中心に八方へ伸びた道の一つ、"参の道"。
その奥にそびえる第三ゲート。
その様相は口を大きく開けた深海魚のようだ。
そして、そこに向かってる俺は深海魚に食われる小魚だろうか。
「どうしたの?顔色悪いけど……?」
やや朦朧としている視界の隅から可愛らしい少女の顔が現れる。
しかし、今回に限ってはまだ俺の心を完全に癒やすほどの効力は無かった。
「今、人生史上最高に絶不調だよ、俺」
慰めるなら今がチャンス!
と、言外に秘めつつ歩を進める。
自然と口数は減る。
一時間弱話していて話題が減ってきたのもあるが、それとは別に周囲の空気感が重くなってきたというのもある。
きっと、と言うかほぼ確定的にその元凶は俺だ。
というのもさっき茉李に聞いたお爺様像があまりにも人間離れしていて、そしてそれを相手に、意見をしに行くという自殺行為を自分が今行っているということを知った絶望感から来る何とも言えない哀愁が周囲に漂っているんだと俺は推測する。
結果俺の余命は数十分ほどだろう。
「なぁ、ここからどれくらいかかるんだ?その…………」
「総議長室??」
「そうそれ!!」
なのかどうかは知らないが響き的に合っているのでつい同調してしまう。
悪い癖だ。
「あと………数秒?」
唐突に言い放たれるその衝撃的な発言が途中まで出かけた時、執行機関の門を通過する。
刹那、周囲の空間が魔力で満たされる。
魔力は光となって纏わりつく。
瞬間的な眩しさに瞼を閉じる。
瞼越しにもその眩しさを感じる。
とても強い光。
しかし、そんな現象も数秒のうちに終わりを迎える。
もう瞼越しの眩い光は無く、あるのは柔らかな光。人工的な暖色系の色だ。
「今のひかーーーー」
そう言いながら瞼を開く。
と同時に目の前に広がる謎の空間に釘付けになる。言葉に詰まる。
目の前に広がるのはただひたすらに広い空間。
眩く光る太陽はそこに無く、大きな天窓から差し込む光だけがその存在を主張している。
その太陽光のせいもあって部屋全体は落ち着いた雰囲気にまとまっている。
「ここは……?」
隣に居る茉李はまっすぐ前を向いたまま答えない。
視線の先は影で染まっていた。
だんだんと目が影に慣れていき、あたりの景色が見えてくる。
それでも茉李の見ているものが何かは未だにわからない。
依然、前方は暗闇色の天鵞絨に包み隠されたままだ。
「ま、茉李……?」
「…………………えっ?あ、どうしたの、彗?」
「いや、なんか辛そうだったから。そんなに前にあるのが怖い?」
と、額に汗を浮かべている茉李に聞く。
茉李は首を横に振る。
「じゃあなんでそんな…………」
「なんか、彗に申し訳無くて」
ああ、そういう事か、と何かを納得してしまう。というか察してしまう。
ここが、その総議長室なのだろう。何となく分かってはいたが、ここが自分の死に場所だと思うとどうも普通の部屋のようには見れない。
「茉李、俺…………、逝ってくる」
茉李に向けて人生最後になるであろうサムズアップ。
くるりと、前に向けを変え"死"に向かって直進する。
暗闇色の天鵞絨との距離が徐々に詰まっていく。
「ほっほっほっ、何をそんなに恐れておる?儂?儂怖い?」
暗闇の帳の中から茉李に似た、凛と澄んだ声が聞こえてくる。
「あ、あなたは……?」
「儂?儂は、凰咲仍玄。執行機関の総議長やってます」
唖然。
多分俺は今間抜けな顔をしていると思う。
「一体何の間?この沈黙は一体?」
「いや、思った以上にフランク過ぎてどうしていいのか……」
「………………………」
謎の沈黙。
「えっと、どうかしましたか…………?」
「いやぁね、私も考えてたんだよ……、どんなキャラでいくか」
唐突に一人称が変わる。それと同時にパチンと指を鳴らした音が広々とした部屋に響く。
すると、視界いっぱいに広がった天鵞絨が空間から姿を消す。
「はじめまして……だね。早乙女彗くん」
お爺様、と呼ばれるには若い。しかしどこか威厳のある男。
切れ長の目に、形の良い眉、形の整った鼻。どのパーツを見ても端正極まりない。
顎に携えた髭が無ければ同年代に見えるのではないだろうかという若々しい顔つき。
「お爺様………にしては若すぎるんじゃ……」
「そりゃあね。なにせ僕は………」
何か重要な事を言う風に、間を置く。しかしせっかく置いた間は、
「お兄様っ!!!何でここにいらっしゃるんです!」
という茉李の言葉に掻き消されてしまう。すかさず、
「っておい妹!なぜ私の邪魔をする!いま友好関係を結んでる途中でしょうがぁあ!!」
「そんな事どうでもいいのです!任務は!任務はどうしたんですかっ!」
「そんな事っ……!ねぇ、彗くん、君、今どうでもいいって言われたよ!どう思う?傷つくよなぁ!」
「とうでもいいのは、お兄様のことです!彗の事ではありません!」
「それはそれでショックなんだけどさぁ!やっぱりひどいよね、妹はさ!」
激しい舌戦を繰り広げた後、二人してこちらを見る。
一体何を訴えかけているのだろうか。俺にはよくわからない。
「ええっと………とりあえず困ったら俺に振るみたいな風潮、やめません?」
困った挙句出た言葉はそれだった。初対面で言っていいのかは謎だ。きっとだめな部類に入るだろう。が、
「ハッハッハァ!!いや、君は随分と面白いな!気に入ったよ彗!」
「あまり、嬉しくないですけど…」
「おや、随分と毒舌!そんなとこもいいけどね」
満面の笑みを浮かべながら、親しげに話しかけてくる。かなり馴れ馴れしい。勿論良い意味でだ。
「と、怒涛の褒め褒めタイムもここでおしまいだ」
雰囲気が変わる。今まで浮かんでいた笑顔はどこかへ消え、切れ長の目には鋭い光があらわれる。
「ここからは総議長代行として、ちっとばかりキツめのお話になるけど、いいかい?といっても君に拒否権はないんだけどね」
殺気にも似た空気が漂う中、努めて軽く話す茉李の兄。
いつの間にか隣に居た茉李はやはり額に汗を浮かべながら心配そうに俺と、彼女の兄とを交互に見る。
「無言は肯定と受け取っていいかな?」
無言のまま首を縦に振る。
そこでふと、自分が何をしに来たのか思い出すが、言える雰囲気でない事がひしひしと伝わってきたので諦める。
「それじゃ、話を続けるとしよう。何から話すべきか……、あぁ、私の名前!これが一番重要だな。私は、凰咲李厳。名前からは想像できないほどおちゃらけてるけど、厳つい名前でしょ?」
と、ウインクを連発しながら楽しそうに話す。
そのお陰か、ほんの少しだが緊張も解けた。話は続く。
「君に話す事っていうのはね、その、君のお父上のお話でさ……」
「なっ………親父……ですか……」
「急に食いつくなぁ、まぁそれだけ気になるんだろうけどさ、まだ前置きが終わってないでしょう、少し聞いてなさいって」
と、長い人差し指を振りながら軽くあしらう。
「これはね、私らの爺さんが君のお父ちゃまに頼んだ事なんだけどさ、君の隣の子、そう私の妹ね。そいつを守ってほしいんだよ」
「は、はい…?それってどういう……」
「あぁ、わかるよ!!その気持ち。やりたくないよね。そんな出来の悪い妹なんて守りたくないよね。よし、無かったことにしよう!いいよ帰って!」
「ちょ、ちょっと、待ってくださいよ!」
「あははっ、嘘嘘。からかってみただけさ。予想通り面白いねぇ君」
ニヤニヤと、口を三日月の形にして笑う李厳。隣にいる茉李は呆れたのか知らん顔をしている。
「さて、話を続けるよ。君の言うように、何故護るのが、何から護るのか。確かに気になると思うよ。だけど、今は教えない。いや、教えられないという方が合ってるかな。これに関しては時間が解決してくれるよ」
と、やんわりお預けを食らう。
なんとか詮索しようとするが、できない。というよりそんな事はさせないという目をしている。
「とまぁ、あと言う事は………無いなぁ。あ、スリーサイズ。聞く?」
「是非とも」
と、答えるより早く鈍い痛みが頭部に走る。
原因はきれいな弧を描きながら、とんでもない早さで振り下ろされた拳骨。
その拳骨の主は勿論、危うく個人情報を言われそうになった茉李だ。
茉李を見るとふざけるのも大概にしろ、という目で睨んでいる。
俺も李厳もその無言の威圧に白旗をあげる。
さっさと話を切り上げるという目的が二人の胸中で一致したところで、李厳が最後に、と思い出したように付け加えた。
「この事は誰にも言っちゃ駄目だよ?言ったら最後……………わかってるね?」
どこか間の抜けた、それでいて威圧のこもった声で言い放たれるその言葉は今までのどんな言葉よりも重みがあった。
「わかってる………」
言葉の意味をよく噛み締める。
それと同時に自分の置かれた状況がどんなものなのか改めて分かった。
かなり危ない橋を渡っているんだな、と。
「まぁ、君なら言わない筈さ。本当に好きだったらね」
「なっーーーーー!なぜそれを……」
「見てれば分かるものさ」
顔から火、いや、今ならマグマでも出せそうだ。
と、一人で勝手に恥ずかしがってるところに追い打ちをかけるように、
「ねぇ、彗。誰の事が好きなの?あ!さっき言ってた河合さん?」
と聞いてくるもんだから思考はもう大混乱。これはもう収拾がつかない。
「いや、違っーー。あぁ、もう!!行こう!ここはだめだ!」
混沌と羞恥と僅かな怒りが混ざりあった結果、俺は全身全霊の走りで総議長室から出ようとするが、扉は固く閉ざされ、体当たりをしても一向に開く気配が無い。
「こなくそぉ!開けぇ!!とにかくこの場から逃げ出させろぉぉぉぉぉぉお!!!」
あらん限りの声で、叫ぶ。
その声は広々とした総議長室にわんわんとこだまして、また俺の耳に戻ってくる。
なんとも虚しい気持ちになりドアノブを無理矢理回すのもやめる。
それから数秒後に左肩ーー忘れていたが怪我をしていた、勿論もう治っているがーーにポンと手が置かれる。
見ればそこにはニヤケの止まらない李厳の顔。
「あんた、最高に良い性格してるよな……」
と、呟いた。
それが李厳本人に聞こえたかは知らないが、その真相も謎のまま茉李に手を引かれ部屋の中央、よく分からないが複雑な魔法陣が描かれている場所に連れられる。
「よく分からないですけど、あまり彗に意地悪しないでくださいね!」
と、茉李は頬を可愛らしく丸めながら兄に別れを告げる。
その兄は手を無邪気な子供のようにブンブンと振り回して名残惜しそうに俺の顔を見つめてくる。
勿論、俺はそれを全霊の殺気を込めて睨み返した。
ーーーそしてまた、ついさっき味わった世界の全てが光に移り変わる感覚に出逢う。
「個性的なお兄さんだな」
と、苦笑いを添えて茉李に投げかける。すると茉李も俺と同じように苦笑いしながら、
「ごめんね、変な人で。気を悪くしたなら私が代わりに謝るけど……?」
「いんや、全然へーき。確かに変な人だったけど、悪い人じゃなさそうだし、なんなら馬が合うっていうか……」
と、本音九割、建前1割で作り上げられた言葉でフォローする。
因みに一割の建前とは悪い人じゃなさそうのところだ。まぁ、それを含めて馬が合いそうなのだが。
「うん、悪い人じゃないのは確かよ……、それに、魔術師としての実力も凄いんだから!」
「すごい……って言うと?」
「な、なんかこう……ズバババっ!みたいな?」
「いやごめん、全然わかんない」
擬音のみで表されたそれはどのようにすごいかもどんなふうにすごいのかも、たいうか何がすごいのかも伝わらず、ただ俺に正論を叩きつけられるだけだった。
「とにかく凄いの!」
と、小学生並みの語彙力で会話は進む。
俺の方も何とかそのレベルに落とそうとするが、流石に小学生レベルまで落とすのは現役の高校生としてはどうかと思うので、茉李の方を上げる作戦に変更しようとするが、
「ええっと、もうちょっと正確に言うとね」
と、なんの心境の変化があったかは定かではないが、俺が作戦を結構する前に唐突に冷静になる。
「准魔導零号って称号を歴代最年少で獲ったって言う事なんだけど……。分かんないよね?」
はにかみながら問いかけてくる茉李。
それに対して俺は、きっとポカンとした顔をしているだろう。
唐突に冷静になった上、なんか、頭の良さそうな言葉で組み立てられた謎の称号の話をしだしたのだから無理もないと言えばそうなのだが、というか今までただの"ど天然超絶美少女"だと思っていたが、これを機に"ど天然なんだけど実は結構頭がいい絶世の美少女"に改めようと思う。
「あぁ、全く。さっきの擬音言葉よりもわかんないってくらいわかんない」
「う、嘘っ!じゃあやっぱり……ズドドトドッ、みたいな方がいい?」
「いや、ごめん。流石にやめて」
と、茉李の前に手を出して制止する。
すると、納得したのか安心したのか、茉李もほっと一息つく。
色々と落ち着いたようなので話を続けるよう促す。
「その、准魔導零号って何なんだ?」
すると、茉李はその質問を待っていたと言わんばかりに目を爛々と輝かせ、
説明するね!と前置きをして大きく深呼吸をする。
まさか一息で話すんじゃないだろうな。
「魔導零号っていうのは一種の階級みたいなものでね、それがあるだけでもう一流、いえ、超一流の魔術師になったといえるってぐらい凄い称号なんだけどね、やっぱりそう言われるからにはその内容もかなり難しくって、毎年1000人以上が受けて、一人受かったら御の字ってくらいの物なの」
と、本当に一息で、それこそズドドドドッ。って感じて話を進めた茉李。
「じゃあ、あのおちゃらけお兄さんはそれを最年少で獲ったってわけか……」
「そういうこと!ね、すごいでしょ?」
えへんと胸を張る姿はどこか誇らしげで、その中に兄弟愛を感じずにはいられなかった。
そんな茉李の姿に見惚れていると、
「どうしたの?私何か変……?」
と、首を傾げながら言う。
「いや、お兄さんの事好きなんだなぁと思って」
「好きってよりは憧れ…?尊敬っていうのかな……。本当にすごい人だから…。私も頑張らなきゃ」
「頑張る………。てか、今日からなんだよな、任務って」
「そうだけど……?覚えてた?」
「俺ってそんな頭弱そうに見える?」
という俺の質問に暫く悩んだあと横に首を振ろうとするが、一度また考え直す素振りを見せる。
「いや、きっと、弱くない!よね…?」
「言いたい事が滅茶苦茶あるけど…………話が進まんからもう無視する事にする……。んで、その任務っていうのは何なんだ?」
これ以上話しているとひたすら時間だけを浪費していく結果が目に見えているので反論する余地がないほど早く話題を転換する。
その意図を察したのか、茉李もそれ以上話を広げようとはしなかった。
「初回だし、任務っていう程のものじゃないんだけどね。どちらかといえば調査みたいな感じで。目的地はこの国の所有地なんだけど、時々理外者の反応があるらしくて、それでその調査にって」
「なるほど、確かに初めてやるにはしっくりきてるな。んで、なんて名前の場所なんだ?」
「ちょっと待ってね……ええっと…」
と言って右耳に着けた端末をカチカチといじり始める。
「あ、あった!名前はねーーーーーーーー霧の伽藍」
「多分それってラスボスいる所だよね!?」
俺の全力のツッコミは昼前の僅かに東寄りに傾いた太陽がその存在を主張する青空に響き渡るのであった。
投稿遅れて本当に申し訳ないですm(_ _)m




