『オフ』とはいったい…
晴れて様々な件が落着したのだが、というよりもほとんどの案件が、僕は何もせずにどこかに落ち着いたのだが、さておき今週は大会なのである。
いまふと思ったけど、『一件落着』とは言うけど『件が落着』とは言わないな。わかる人はわかってくれるだろうけど、B級エロゲーとかってこういう表現あるよね。
いまとっさに例が出てこなくて悔しいんだけどさ。
さておき色々立て込んでいて、すっかりSNSを利用していないことに僕は気づいた。
「(色々透の平面立体両世界モテモテ計画の足がかりとなるSNSをおろそかにしてはいけないな。)」
自分でも知らないうちに進行している計画に意気込む。
そもそもあれからSNSを一度もいじっていない。それでもなんだかんだフォロワーは初期段階でかなり増えてたから、少しなんか呟けば、なんらかの反応があるのではないかと思う。
こういうのは最初が肝心だ。下手な文章で変人に思われたくはない。かといって硬すぎるとも思われたくない。
ここは無難に
『今週から関東予選。みんな頑張ろう!』
1番いい選択ではないだろうか。ここ最近の僕の選択には目をみはるほどの軽率さがあったが、やはり無難が1番。
ただ今はまだ朝早いから、リプライも来ないのではないだろうか。なにせまだ7:00。朝練で体育館に到着したところだ。
そんな心配をよそに早速リプライが飛ばされてきた。
『頑張ってください!応援してます!』
バスケ関連の人からのリプライだった。全然知らない人だったけれど、プロフィールを見てみると、どうやら近隣高校の女子バスケ部の人だったらしい。
性別が女性とあらば丁重にお返ししよう。これもあの計画のためだ。
欲を言えば、ここで画面下の方に、リプライの返信候補3つくらいを『選択肢』として表示して欲しいところだけれど、そこまで僕もゲームに脳を侵されていない。僕だってゲームと現実の区別はついている。
「と、と、とりあえず、セ、セ、セーブしなきゃ。リプライミスったらやややややり直しだよね。」
侵されていた。区別できていなかった。
なにぶんリア垢は初めてなもので、どうリプライすればいいのかわからない。
とりあえずここは無難に返そう。せっかく応援してくれているのだ。誠意を見せよう。
『此度は私立常陸高等学校を応援していただきありがとうございます。ご期待に応えられるよう、我々選手一同も日々鍛錬、精進してきた次第でございます。今大会におきましても、貴殿に【勝利】を届けられるよう微力を尽くす限りでございます。今後とも、我々私立常陸高等学校をよろしくお願いいたします。』
これだ。ぴったり140字。
これならかなり無難だ。
とりあえずリプライを返した後はそわそわが止まらない。
すると間もなくしてリプライが来た。
「(さっきの子かな?)」
『試合なんですか?頑張ってくださいね!』
どうやらさっきとは別人らしい。今週が試合だと知らないということは、県大会に参加していないチームの人か、バスケには関係ない人だな。
「(えぇと、なになに、プロフィールは…。【私立常陸高等学校バスケ部ー宍戸優也】かぁ。聞いたことある名前だなぁ。)」
……………………………。
宍戸かよ!何が頑張ってくださいだよ。お前も試合だろ。ていうか同じチームだろ。
宍戸優也。我がバスケ部のギャグプレイヤーである。実力はかなりあるのだが、それを上回る知能指数の低さゆえに、使いどころが難しいプレイヤーなのだ。
また何かにかこつけてはギャグを放ちたくなるらしい。
今回もなかなか仕上げてきたギャグだが、そこはシカトしよう。
さて、いつまでもこうはしていられないな。朝練を始めますか。
最近めっきりあかりが来ないからお兄さん心配です。
午前の授業もなんなく終わり、昼の時間に僕は、ありふれた日常の喜びと青木からの卵焼きの味を噛み締めていた。ちなみに寮母さんお手製。美味である。
卵焼きでお弁当の味を図るのは、もはやテンプレでもあるのだが、実際卵焼きミスる奴ってのは相当な実力者だと思う。
味に至っても卵焼きは各家庭様々な味が出るので、個人の好みで優劣が決まるのに、何故学生のお弁当料理基準が『卵焼き』なのだろうか。なお、僕は自分と青木以外からの卵焼きは経験がない模様。
余談になるのだが、卵焼きを料理の良し悪しの基準にするのはどうかと思うが、アニメや漫画に限らずストーリー物にはかなり有効だと思う。
例えば強面の人がしょっぱい卵焼き派なら、おそらくイメージ通りの性格だろう。逆にその人が甘い卵焼き派ならギャップ萌が発生する。対局に甘い顔立ちの人が甘い卵焼き派ならイメージ通りだろうし、しょっぱい卵焼き派なら隠れ肉食系男子となる。世間でいうロールキャベツ男子だ。
ちなみに僕は、顔はかなり微妙な顔立ちで、卵焼きは味噌味派です。顔が微妙なだけならず、好みの味まで甘じょっぱいという微妙さを狙うタイプの僕です。
ガラガラ
開いた扉からは我らがマスコットキャラ時々マネージャーのみーちゃんが顔を覗かせていた。
「みなさーん!朗報でーす!」
部員全員の動きが止まり、一斉にみーちゃんに視線が注がれる。
マネージャーから『朗報』という言葉が出たということは、つまりあのことだろう。
例えるならそれは砂漠のオアシス。
闇を照らす一閃の光。
凄惨な戦場に差し込む晴天の霹靂。
みながはやる気持ちを抑えて平静を装う。ここでの油断は禁物だ。希望が大きい分、絶望も計り知れなくなる。
決して期待はしてはいけない。何せ相手はみーちゃんだ。何が朗報で何が凶報なのかもわかっていないかもしれない。
しかし、それでも部員の心はこの状況に高揚感を覚える。
そして、みーちゃんの口がまた開かれたーー
「今日はーーー、オフで
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。」
「やったあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。」
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。」
大地が揺れるのを確かに感じた。
みーちゃんの言葉を最後まで聞かずに、僕らはみーちゃんの『オフ』の言葉で舞い上がった。
『基本的』に月曜日は、全部活休みなのが我らが常陸高校なのだが、僕らのバスケ部は少し『特別』なのだ。
まずは基本からという世の理を、あのジジイにも教えてやりたいものだ。
さておき僕たちバスケ部は極端にオフが少ない。月曜休みはもってのほか、テスト期間や祝日でもオフにはならない。
昨年のオフと言えば年越しの二日間とお盆一日、夏休みに二日というまさかの片手で収まる日数だった。
それゆえこのタイミングのオフは天変地異と同等かそれ以上の希少価値がある。
「帰りに連絡事項があるのでみんな部室によってくださいね!」
「「「「「はーーーーい!」」」」」
今シーズン一番上機嫌な返事を記録した私立常陸高等学校バスケ部部室であった。
放課後になって皆は再度部室に結集した。その顔は希望に満ち溢れ、さながら魔王を倒した勇者のものと見違えるほどであった。見たことないけど。
普段のこの時間の部活と言えば『今日のランメニューはあれだ』とか『先生今日会議入らねーかな』とかいう言葉が飛び交っている。
ガラガラ
みーちゃんが入ってきた。手に大量の紙を持っていることから推測するに、今週の大会なトーナメント表だろう。
それを見た僕らはまだ信じきれていなかった喜びが完全になる。
放課後の連絡で『実は練習あります!』とか言われた際にはその場でみんなが失神しかねない。でもいまみーちゃんが手に持っているものを見れば、連絡とやらもトーナメント表配布で説明がつく。
「ここにトーナメント表置いておくので各自取って行ってください!それで『今日はオフにしたから、スクラッチ3本終わり次第帰宅してゆっくり休め』だそうです!では!」
「いよっしゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……………………………あ?」
「ごめん、みーちゃん。今なんて?」
「ゆっくり休めだそうです!」
そこは聞こえた。うん。素直に嬉しい。
「その少し前!」
「スクラッチ3本終わり次第ゆっくり休め!」
「「「「「((((;゜Д゜)))))))」」」」」
おいおいおい。ちょっと待ってくださいよ。何を言ってらっしゃるのあのジジイは。
スクラッチとは10m幅を3分間ひたすら走り続けるという、発案者の意図が全く理解できないメニューである。ちなみに当然の如く、それをやらせようとする指導者の意図も理解しかねる。
ちなみにこのメニューは『ランメニュー四幻魔』ではない。
「キャプテン!本官が思っていた『オフ』という言葉の定義が間違っている可能性があるので、今一度『オフ』の定義についてご教授ください!」
すでに半数近くの部員の魂が昇天を始める中、ギリギリ生き残った出津が質問をした。
「いいだろう。『オフ』とはつまり部活がない日、完全休養日のことだ!」
普通そうだよね。誰かあの先生に教えてあげて。
「しかし教官!このいまの状況をどう説明するのですか!」
「……。」
「なんとか言ってくださいよ!教官!」
出津の怒気に加勢し、生き残りの部員たちが声を荒げた。
「逃げよう。」
え?え?なんて?
「おまえら!逃げるぞ!すでに賽は投げられている。今更後戻りはできんぞ!生き残りたいやつはついてこい!」
窓ガラスを開けたギャップテンは、外を消えていった。
飛び出していった背中はいつもより大きく見えた。ただしかっこいいとは誰も言ってない。
残りの部員たちも次々と脱走を図る。各々がそれぞれの思いを馳せ、窓から飛び降りていく。
そして、青木と僕だけが残された。
「透、スクラッチやろっか。」
「そうだね、早く終わらせて帰ろう。」
仲間に裏切られた二人。立ちはだかるのはあまりにも大きすぎる壁。この二人は乗り越えられるのか。
次週、体育会系インドア派最終回『決戦、魔王クソジジイ』デュエル、スタンバイ!
とはなりません。結局このあと二人でスクラッチを終えました。僕らが終わる頃には、先生に捕獲された部員たちが、スクラッチ5本やらされる羽目になっていた。
毎度のパターンでいつも逃げ出して多めに走る。ひょっとしたらどMなのではないかと心配になる。
放課後、4:30にはスクラッチを終え学校を出た。今日は誉と買い物に行く、秋葉原へ。
飯塚誉、バスケ部2年で身長は180cm。僕の唯一のリア友兼ありオタ友である。
ちなみにこいつの容姿は、控えめに言ってめっちゃイケメンってところ。
これでオタク!?それなんのアニメ?
ってくらいのイケメンでさらにモテる。多分誉でラノベかけるくらいのモテ度。
ちなみに彼は萌え豚であり声豚なのである。いま流行りの『ごちうな』こと『ごちそうはうなぎですか』というアニメの熱狂的なファンで、その熱烈度は他の追従を許さない。
どれくらい熱狂的かというと、部で使用している寮を改造して、ごちうなグッズで埋め尽くし、終いには【愛の巣】という名前を部屋にまでつけるほど。
ちなみにバスケはそこそこで、まだ試合に絡むほどではない。
「とおるー、今日うち泊まっていけよ。」
とうとつに切り出されたが、別に驚きはしない。誉の家は学校から徒歩や自転車では少し遠いのだが、電車を使えばすぐのところにあり、そしてなぜか僕は飯塚家に気に入られてよく泊まりに行くのだ。
「いいの?そんなこと誉が勝手に決めちゃって。」
「ああ、大丈夫だよ。一昨日から言ってあったし。」
なんでだよ。今日部活があろうがなかろうが僕を泊めるつもりだったのかよ。
「ならありがたく泊まらせてもらうよ。それにしても、なんで今日は家に帰るの?寮じゃないの?」
そう、普段は誉も寮生活なのだ。まぁみんな用事があれば自由に帰れるのだが。
「いや、俺にはないんだけどさ、家族がお前連れて来いってうるさくって。」
「あー、なるほどね。」
なぜ僕はこんなに気に入られているのか本当にわからない。
これはあれなのか。飯塚家で僕を中心とした血なまぐさい争奪戦が勃発するフラグなのか?
この僕に『僕のための争いはやめて!』というヒロインセリフを吐かせるための布石か?
なんて妄想を働かさざるをえない。いや働かせるなよ。
今日は秋葉原に予約していたゲームを取りに行くだけだったので、用事は早めに済んだ。誉は自分の買い物を足早に済ませたみたいで、行きの時はスカスカだったバックがパンパンになっている。
ちなみに誉は、萌えアニメ系のエロ同人誌はどうしても許さないらしい。今回のごちうなにしても、可愛いキャラたちがあんなことやこんなことされているのを見ると、本気で涙を流すくらいなのである。
何でも『自分が必死に愛を注いできた子がいかがわしい事をされるのを見るのは、はらわたが煮えくりかえるくらいの心境になる』らしい。
とかいいながら、見つけ次第即エロ同人誌を買い続け、読むたびに涙を流す誉は紳士なのだろう。
そしておそらく今回のバックの中も…。年齢偽ってまで…。おいおい。
飯塚家に到着したのは6:30位だった。
「おかえりー!おにいちゃん!」
「おう、ただいま!珠希!」
玄関から勢いよく飛び出してきたのは、誉の妹の珠希ちゃん。たしか小学2年生だった気がする。
「誉お兄には言ってない。」
本当に小学生かな。目が据わってるんだけど。そして未だに誉お兄は懐かれていないようだ。
「久しぶり、珠希ちゃん。元気にしてた?」
「うん!今日は何しに来たの?珠希のお嫁に来たの??」
凄まじい言葉を投げかけてくるのもいつも通り。
「それはもっと大人になってからだね。」
珠希ちゃんの頭に手を乗せ、ぽんぽんとした。喜ぶ珠希ちゃんが何とも微笑ましい。
隣の誉から負の想念が溢れ出ているのは気のせいだな。うん。
家に上がらせてもらい、飯塚家のご両親にもあいさつをした。どうやらかなりマジな歓迎ムードで、食卓にはかなり豪華な料理が並んでいた。
どれも美味しそうだったのだけれど、珠希ちゃんが僕の膝から降りなかったので結局あまり食べられなかった。
珠希ちゃんを抱きかかえたまま誉の部屋に入り、何となく時間を過ごしていた。これがいつものパターン。部屋はかなり片付いていて、あの【愛の巣】の管理人の部屋とは思えないほどだった。いや【愛の巣】も片付いてはいるんだけどさ、何ていうか『荒ぶっている』
「そういえばさ、透ってあんまり浮ついた話聞かねーよな。」
過去の僕たちの試合のDVDを観ながら、誉が切り出した。今週から試合なので、研究も兼ねて見返しているのだ。
「何だよ、嫌味かよ。自慢かよ。ばーかばーかばーか。」
誉はこれで彼女がいるのでむかつく。純粋に滅べばいいと思う。
「お前この手の話はすぐにムキになるよな。ていうか『ばーかばーかばーか。』ってお前子供かよ!」
「お前みたいにエロ同人誌片手に彼女と電話するような奴が大人というなら、僕はこのまま子供でもいいね!」
「意地はるなよ!彼女いると楽しいぞ?」
「ぼくはね、伴侶がいないとやっていけないような惰弱な人にはなりたくないの。」
「なるほと、そして少子高齢化を加速させると。」
「うるさい!お前らみたいに汚れた肉欲に満ちた日々は人をダメにするんだよ!僕はお前らみたいに、気軽に彼女なんで作らない!」
「おいおい、『作らない』じゃなくて『作れない』だろ?」
「は?なに言ってんの?まだ本気出してないだけだし。まだ全力の半分だし。」
「男の嫉妬は醜いぞ。まぁいいけどさ。てかそう言うならお前も彼女とか作れば?」
「でたー、『作れば?』とかいうやつ。ほんと何なの?『作れば?』で『あ、うん!わかった!』のふたつ返事で彼女ができると思ってんの?バカなの?死ぬの?それどんなゲームだよ。ぬるげーにもほどがあるだろ!ギャルゲーでも女の子を目の前に『彼女にする。』、『彼女にしない。』とかクソみたいな二つの選択肢でないから!人生なめんなよ!」
「ゲームキャラをマジで彼女にしようとしてる奴に、人生語られてもねぇ。と言うよりもさっき『作れる』発言してただろ。」
「うぅぅ。」
泣きました。彼女がいないことにではなく、アヤセたんが僕の彼女になるには、大きな壁(次元)があることに。
「あ!誉お兄がお兄ちゃんをいじめた!ばかっ!」
「ち、違うんだ、珠希!」
「知らない!誉お兄なんて大っ嫌い!」
珠希ちゃんは僕のことをお兄ちゃんと呼ぶ。そして悪役に仕立てられた誉の周りにはまたも負の想念が溢れ出した。
計画通り。
「ありがとう、珠希ちゃん。珠希ちゃんが大人になったら僕、珠希ちゃんをもらいに来るね。」
「うん!待ってるね!」
いや、半分冗談だから!本気にしないで!警察呼ばないで!
もう半分は何かって?いや本気ですけど何か。
「おい、珠希はやらんぞ。」
怖いです誉さん。これがシスコンってやつか。こんなやついるんだなぁ。きもちわるー。
あ、そういえばういはちゃんとご飯食べてるかな?
「ていうかさ、珠希ちゃんってちょっと特殊だよね!」
「は?うちの妹のどこがだよ。」
「だってさ、珠希ちゃんって兄に彼女できても目の光は失われないし、『殺す』とか言わないじゃん。少し家を空けるても縄とかで縛られないじゃん。その調子だと一週間抱き枕の刑とかもないんでしょ?珠希ちゃんいい子だね!」
「えへへ、ありがとう!」
照れてる珠希ちゃんかわいい!はやく珠希ちゃん16歳にならないかな!
「お、おい、透よ。お前の中での妹像はかなり歪んでいるぞ。それはかなり異常だ。そういえば、おまえ妹いるんだっけ?」
「うん。同い年のね。最近反抗期なのか当たりが強いんだよね。『お兄ちゃんと洗濯一緒じゃないとやだ』とか、『お兄ちゃんのあと、または一緒じゃないとお風呂はやだ』とか『同じ部屋じゃないとやだ』とか。妹も大人になっていくんだなぁって実感してるよ。」
「むしろ幼児退行だろ。それ。」
♩♬♩♬♩♬♩♬♩♬
不意に僕の携帯が鳴る
「もしもーーー
『いまどこ?ねえ!誰といるの?聞いてるの?女なの?女なのね!許さない。とーにーは私のだからね!誰にもあげないから!』
連絡入れておいたんだけど、さてはみちこさん言い忘れてるな。
「お兄ちゃん!だーれ?」
なるほど。こうやって定番はこなされていくわけか。まさかのこのタイミングで珠希ちゃんの声が発せられるとは…。かなり状況はまずいですねぇ。
『なに、いまの。『お兄ちゃん』?誰よ!その女!ねえ!聞いてるの!ねえ!ちょっ
ぷちっ
着信拒否設定、オン!
よし、これでどうにか。
「お、おい。まさかとは思うがいまのが…」
「ん?いまのは妹のういだよ。」
「お、おまえも大変だな。」
なにを言っているかよくわからないけど、何か心配してくれているらしい。
携帯を開いたついでに朝のSNSの続きを見てみる。
どうやらあの人からの返答はないらしい。ただ別の人物からコメントが来ていた。
『とーにーがんばって!愛してる!』
「(なかなか熱烈なリプライだな。誰だろ。こんなことする人は。)」
頭では本当はわかっているのだが、なかなか僕自身がその事実を受け入れようとしない。
「(えーと、なになに。名前は『色々うい』かぁ。かわいい名前だな。プロフィールはー『深見高校2年!好きなものは甘いもの、かわいいもの、お兄ちゃん、音楽、バスケ、お兄ちゃん、おしゃれ、お兄ちゃん、マンガ、お兄ちゃん、お兄ちゃん…etc』か…。なかなかのお兄ちゃん好きなんだな………………。っておい!ぶけんなよ!SNSでそれはまずいって、ういさん!そのプロフィールおかしいって。その『…etc』に含まれるものも9割お兄ちゃんでしょ?僕でしょ?)」
衝撃の事実を目の当たりにした僕には、試合のDVDを見る体力なんでなかった。
翌朝目覚めると、僕の腕を枕に珠希ちゃんが寝ていてとても可愛かった。とりあえず連れて帰ろうと思う。
いやいや、だから半分冗談だって!勘弁してよ。
え?残りの半分は何かって?本気ですけど何か。
さて、お目当のゲームも入手できた。珠希ちゃんにも会えた。飯塚家にも来れた。ういを怒らせることができた。
これで試合はバッチリだ!
特に試合に関係のない項目を着々とクリアした僕は、試合に向けて今日も練習に励む。




