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体育会系インドア派!  作者: 日なた日かげ
残念系家族事情
13/21

ぼくの部活は少しおかしい。

金土日と3連休を利用して私立常陸高校主催の交流大会が開かれている。先日午後練だの午前練だのごまかしていたが、本当のところは午後から試合なのである。

なぜ午後からなのかというと、単に遠いチームが午前を移動で使うから。これは割と珍しいわけではなくて、ぼく自身も丸一日移動にかけたことすらある。また、都内での試合以外は滅多に電車は使わないため、基本はバス移動。長時間バスのあとの試合とか、それなんて言う無理ゲー?って感じになる。足が全く動かないのだ。人呼んでこれを『ポッキー化現象』という。人呼んでと言っても僕らのチームだけだけど。たぶん。

ゆえにホームチームは交流試合の1試合目はジャイアントキリングのチャンスになる、というのが普通のチーム。だが我が私立常陸高校をそこら辺のチームと一緒にしてもらっては困る。普段の学校生活から薄々気付いているだろうけれど、僕らはみんな少しバカなのだ。バスケがなければ高校にすら入れない奴らを集めたチーム。と言うよりもバスケがあっても学力や純粋な知力が足りなくてほかの高校に入れない奴らが集まっている。

そもそもバスケは一人でも頭が悪い奴がいると試合が成り立たないと言われるくらい、頭を使うスポーツとして知られている。現実においても進学校でバスケが強い、というのも珍しくないのだ。あの狭いコートに10人がひしめき合いながら組織的な動きをする。ある種の高度なコミュニティを形成していると言っても過言ではないくらいだ。ごめん、過言です。

まぁとりあえずバスケは頭を使うスポーツなんだけれど、ぼくのチームは頭いいやつなんて片手で収まるくらいだ。これでどう試合が成り立つかは後々…。

さてこんな馬鹿なチームは交流試合の1試合目がチャンスなんて全く理解していない。おそらく我がチームの精鋭(と書いてバカと読む)たちの昨晩の考えは『いつもよりもたくさん寝ることができる!やったね!』の一択だろう。そして集合時間にギリギリ間に合うかどうかの時間に起きる。結果引き起こされるのは『ポッキー化現象』なのだ。

具体的には今日の場合12:30集合なんだけれど、寮の奴らは12:00起床、12:05ご飯開始、12:15ご飯終了、12:20身支度終了、12:30到着。そしてここから13:00からアップ開始13:40トスアップ。

おぉ!起きてから1時間40分で試合だ!すごい!本当にすごい!うん、すごい足が動かないやー。

みたいなのが定例。いつもは何人か真面目なヤツが、というか僕がそういうのを仕切るのだけれど、昨日の一件で僕も奴らほどひどくはないが同じような状態なのだ。


そしていまに至る。試合3分前でアップを終えてベンチに戻ってきたところだ。だいたいこの時間くらいから試合前の最終確認をどのチームも行ってたりする。

あれだけアップで温めたところで体は起きない様子の皆様方。むしろ寝てるよね。後ろのほうのやつとかほぼ寝てるやん。はい、日常ですね。

さておき本日の最初の相手は東北のチームで昨年県予選の決勝で惜しくも優勝高に敗れている。と言っても全国大会に何度も出ている名門校だ。古豪ともいわれ、堅実なバスケットで長い歴史を紡いできた。しかし最近は新興勢力に苦戦を強いられているとも聞く。

ちなみに僕たちのチームとどっちが強いかというと、断然向こうのほうが強い。と言うのも僕たちはチームも新しくネームバリューもない。ま、この試合はどこまで通用するかだな。


「(どうやら僕は今日はスタート(最初に出る5人)じゃないらしいから気持ちが楽だな。)」


スタートは試合の入り、つまり流れが決まるのでかなり重要。こういう体調がよろしくない時はあとからが1番!

スタートは3年生3人に青木と出津。いつものメンバーってところ。まぁ当たり前だが最初は調子が悪い。どうやら僕の昨晩から昼までの寮組の行動予想は的中してるらしい。加えて相手が強いだけに差は開いていく。


ここで一つ皆様に注意していただきたい。最近は主要メンバーを色に例えている某バスケ漫画が、空前絶後のヒットを遂げた。でもあれさすがにありえないっす。ってのはみんなわかっているだろうけど、まず他のバスケ漫画でも出てくる『ダンク』。いや、あれなんて滅多に見ないっすよ。大げさじゃなくて高校の試合でダンクかましてる試合を見れないでバスケ人生終わる人なんてたくさんいますから。

おそらく自分のチームの試合中にダンクをしたりされたりなんて経験を出来る人なんて、全体の1%未満の自信あるくらい。

でもまぁ漫画はフィクションだし、ダンクないと花がないし、何より面白いし。ありえないってわかっててもやっぱり面白い。作者尊敬まじリスペクト。

ちなみにあの某バスケ漫画のキャラで1番現実にありえそうなのは青と赤と黒の人かなぁと思う。特に青の方に至っては、アメリカの路上バスケのトップはあんなもんじゃないっす。

余談ではありますが僕が好きなバスケ漫画は、名前に鳥の名前が入っているヤツが1番好きです。


開始5分で10:2で負けている。普通のシュート4本分って考えればチョロそうなんだけど、序盤でこれって精神的に来る。攻められないし、守れない。うちの先生はあんまり怒らない人だから、っていうかもはや動かない人だから今日もベンチから立ちません。きっとあの太った白髪の名言を残した先生に憧れてるんだな。にしても本当に微動だにしないな。シグナルオールグリーン、正常運転です。

この人いつも大人しい丸っこいデブのふりして、黙って練習メニューをきつくして叱るタイプの陰険野郎なのです。まぁ、こういうあんまりくちうるさくない人が監督だからうちのチームも強くなれるんだろうけど。

なんて言ってるうち第一ピリオドが終了。17:6で背中を追う状況。これがどういう状況なのかを端的に言うと、ギャルゲーでキーとなる選択肢の前にセーブし忘れるくらいやばい。まぁでもその一個前のセープポイントからやればって考えるとヤバすぎるわけでもないのだけれど、って雰囲気です。取り返せないわけではないけど、かなり大変って状況。


「相手つえーな。さすが名門校だよ。」


「そうですね。本当に全てが堅実ですね。」


「朝飯抜いたからっしょ!これ!」


「いや、先輩試合前にアップ抜け出して何か食べてたでしょ…。」


「ほら!戦が減っては腹ができぬって言うじゃん?」


「「「「いわないから」」」」


これが小休止2分間の会話である。いや、気を抜きすぎでしょ!と最初なら誰しも思う。しかしこれが僕らがたかだか3年で県大会2位まで上り詰めることができた所以なのだ。

知っての通りうちのチームの大半はどうしょうもないバカ。ただそれ故に難しいことは考えない。常にシンプル。これは超少数の頭脳派と他大半のバカ奴らと無口で放任主義ながら指導力のある先生がいるから出来る芸当。

『自由にやる。』

『楽しくやる。』

『元気にやる。』

この三つが僕らのチームの根幹にあるのだ。小学生並みの語彙なのは【おバカさん対応】のためなのでご容赦を。ちなみにチーム公認のポリシーとして掲げている言葉が

『当たってハジけろ。』

"ハジけろ"がカタカナなのがミソらしい。まぁ奔放なチームだからあってるかもね。


第2ピリオドが始まる。少しメンバーを変えて出津と3年生の大きい人を下げて、3年生のフォワードと僕が入る。おそらく先生は身長を下げて機動力をあげたのだろう。なんて理解してるのは青木と僕くらいなのだろう。

相手チームは平均185cmはあろうかというくらい大きい。バスケやってない人からすると

((((;゜Д゜)))))))ふぁっ?

って感じなのだろうけど、多くはないにせよこういうチームはいる。

ただ向こうは大きくて動けるので不利に変わりない。というか一層不利になった。上通されたら終わりだし、中でやられても終わり。なんていうこともきっとみんなわかってないね。

まぁでもここからがこのチームのすごいところであるわけでありまして。先生からの指示でこういう小さいメンバーの時にやることは言われている。

『1:1』

何を当たり前なことをと思うかもしれないが、一人一人が全員"どんな時でも"1:1を仕掛けているチームなんてどこを探してもいない。空いてる人がいればパスは出すし、狭かったら広いところにパスを出す。これは定石なのだ。しかしこういう時の僕らは違う。バカゆえに単純。言われたことのみを行う。

どんな時でも徹底して1:1をする。いや、かっこよく言ってるけどもって6分がいいところ。普通じゃ無理無理。

試合再開と同時に攻撃パターンをガラリと変えた僕らに相手も困惑する。ありがちな話で、堅実で真面目なチームほどうちみたいな自由で型にはまらないタイプのチームと相性が悪かったりする。というわけでファーストコンタクトは良好。

しかしここは古豪と言われるチームだけある。すぐに立て直すあたりは全国常連の名は伊達ではないのだろう。開始早々19:13にするも、その後はなかなか縮まらない。なんとか流れを掴みたいのだが、それがこのチームから簡単につかめたら苦労しない。こういうところは堅実なチームの強みである。流れを持って行かせない。ミスも圧倒的に少ないし、試合全体を落ち着かせたり、ペースをゆっくりにしたりしてフラットに戻す。ただでさえオフェンスで疲れてるのに、ディフェンスの時間が長いとか殺す気かよ。

そろそろスタミナも限界が近い。はずなのだが周りは生き生きしている。バスケなんて点を取るから面白いのであって、いつでも点を取りに行きたいものだ。しかし普通のチームはチームの決まりや組織、ストラテジーを優先せねばならない。でもこのチームはそういうのが一切ないのでいつでも誰でも点を取りに行ける。この上なく楽しい!

そろそろ限界の6分が来る。スコアは28:23でまだ負けている。


ピッ!


相手チームのファールが宣告される。やっと風が吹いてきた。

当たり前のことなのだが、毎回毎回懲りずに1:1を仕掛けられると精神的にも滅入るし、疲労もたまる。バスケットはシステム的にもルール的にもディフェンスが不利なので、疲労が溜まった時はファールが起きやすい。これは僕らの常套手段。ひたすら1:1を仕掛け相手に不測の事態を引き起こさせる。

それは『ファールトラブル』。バスケはNBAというプロリーグを除いてファールは5回で退場なのだ。この意味は大きく、序盤でかさんでしまうとディフェンスの時に萎縮してしまい激しいディフェンスができなくなる。逆にオフェンスは退場させたいし、激しいディフェンスなんて怖くもないのでそこを攻める。ファールがかさんでしまうと色々な懸念が出てきて、集中力を欠く結果となる。そしてそのまま交代させられる。まさに負の連鎖!

堅実なチームの1番の長所は『集中』と『組織力』で、組織力は集中力ありきな部分がある。ただそれは同時に弱点でもあり、集中力がなければ崩すのは容易い。まぁその集中力が切れないから強いのだけれど…。

まぁそういう意味でのファールトラブル。練習では様々なパターンを想定することができるが、ファールだけはそうもいかない。そう仮定した練習だとしてもそれは仮定でしかなく、現実とは全く違うのだ。ギャルゲー知識はリアルで使えないのだ。関係ないや。

とにかくこのチームは堅実ゆえに普段はファールトラブルなんか起こさないだろう。そしてさっきのファールで『4ファール』。これは各ピリオドごとのチーム累積ファール数の数で、それが4つになるとある種のファールを除いた全てのファールが無条件に相手のフリースローになるのだ。ちなみに本来はシュートの際のファールしかフリースローにはならない。

この4ファールのおかげで相手のディフェンスは引き気味になる。ましてやこのピリオドはあと約4分ある。このピリオドで追いつく!

なんてうまくいけば苦労しないっすよ。追い上げはできても追いつき追い越しはできなかった。折り返して35:30。まぁ第2ピリオドだけみれば24:18で勝ってはいるのだが、疲労がえげつない。何回か選手は交代してはいたが、それでもきつい。まさか相手もオフェンス主体に変えてる来るとは…。

点数は上出来だけど、損失もでかい。ましてやうちは選手層が薄い。この疲労は後半に響くだろうな。


「ねえ!見た見た!さっきの俺のプレー!やばかったよね!」


「いやいや、あんくらいちょろいでしょ。」


「後半は俺が後半は俺が後半は俺が後半は俺が後半は俺が…」


「今日の寮飯なにかな?」


3年生は疲れとか知らないのだろうか?というよりも試合中だと知らないのだろうか。誰か!教えてあげて!


「いや、でも俺が1番点数取ってますよ?」


青木が火にガソリンを注いだ。


「あーおーきー!まぐれを誇るんじゃねーよ!後半は俺が1番点数取るから!勝負だコンチキショー!」


「あ、やります?別にいいですよ?俺勝ちますし。」


青木がガソリンに引火した火をガソリンで消しにかかったみたいです。


「あ、ちなみにアシスト1位は僕っすよ!」


僕もとりあえずちょこっと油を注いでみた。


「ざーけんなー!2年風情に負けてられっかよ!アシストも点数も俺が1番になる!負けたらアイスおごりじゃ!あ、安いやつな。」


油じゃなくて起爆剤入れちゃったみたいだな。てへ。いや、てか弱気だな、先輩。

こんな感じのハーフタイム10分。見て取れるようにこのチームが急成長した理由の一つはこの『負けず嫌い』ある。練習中でもこんな感じなので自然と切磋琢磨できる。こういうの結構楽しい。


「楽しそうだねぇ。でもこの試合勝たなかったら外ランね。」


「「「「「………」」」」」


おいおいおい、クソジジイ。何を笑顔でふざけたこと言ってやがる。とうとう狂ったか?ぼけたのか?そうなのか?

この『外ラン』というのは【ランメニュー4幻魔】と言われるメニューの一角。その名の通り外を走るのだが、きつすぎる。かつて路上で同時に2人が気を失い、通りすがりの人に救急車を呼ばれたくらいに。


「いいか、お前ら。これはチームの戦いだ。個人なんて捨て置け!勝つために動け!わかったな!」


「当たり前だ。みんなで力を合わせればできるぞ!」


あの先輩たちがこんなに丸くなることからどれだけのメニューが察してほしい。あ、一年はこのメニュー初めてだからちょうどいいな。経験させてやらなきゃな。いいや、ちょうど良くねぇよ。ふざけんなよ。あんなのもう一生やりたくねえよ。

すると後ろから何人もの負の想念とお経のような声が聞こえてくる。


「勝てよかてよカテヨ勝てよかてよカテヨ勝てよかてよカテヨ勝てよかてよカテヨ勝てよかてよカテヨ勝てよかてよカテヨ勝てよかてよカテヨ勝てよかてよカテヨ勝てよかてよカテヨ勝てよかてよカテヨ勝てよかてよカテヨ勝てよかてよカテヨ勝てよかてよカテヨ…」


控えメンバーたちの心の叫び?だった。

怖すぎる。プレッシャー半端ないんですが…。


ピー!


「よし!いくぞ!」


僕たちの本物の命(言葉通り)を賭けた戦いの火蓋が切って落とされたーーー



1時間後、バスケットシューズを脱ぎみんな靴を履いている。いつからバスケは野外スポーツになったのかな?

結果は御察しの通り、負けました。最終スコアは88:85。惜しかったのは惜しかったし、みんなの自信にもつながった。が!あいつはそんなに甘くなかった。みんなのどこか半信半疑だったあの『外ラン』だったが、実際に死刑宣告を受けた時は精神が持ってかれた。4.5人は意識を失っていたかもしれない。


『外ラン』それは地獄の刑罰。

『外ラン』それは悪魔の拷問。

『外ラン』それは新たなる扉。

『外ラン』それは自己の探求。


『外ラン』それはつまり『人生』


卒業した先輩が残した言葉である。あまりのきつさに走馬灯が見えたことから生まれた言葉だ。新たなる扉とはいわゆる【どM】への扉らしい。

少しの恐怖と『なんだかんだ先輩が脅してるだけ。』という気持ちをぬぐいきれない1年生たち。はっきり言おう。お前らはもう奴の術中にハマっているのだ!

世の中には知らない方がいいこともあるというけれど、それはつまり外ランのことなんじゃないかな。外ランは人生の根幹、基底の部分であり、そこを覗けるのは神のみ。そんなところに足を踏み入れてはいけないのだよ。

いや、本当にみんな一度経験すれば哲学開ける。

外ランの内容はこうだ

【800メートル走ー10本】

【ゴールタイムは3分15秒以内】

【3グループに分かれて走る】

【インターバルは6分30秒】

【グループ1人でも入れなかったらその分追加】

【追加本数MAX3本】

安心してほしいのは、このメニューで全部タイム内に入ったグループは未だかつて存在しない。というよりも13本より少ない数で済んだグループなどいない。いや、何が安心だよ。安心できねーよ。くそが。

3グループは基本ポジション順。第一グループはガードやフォワードの早い奴ら。第二グループは中間層。第三グループはピッカマンたち。

僕を含めた第一グループがスタートラインにつく。嫌な緊張感をはらんだ空気が肌にまとわりつく。


「よーい…」


ああ、始まってしまうのか。アヤセたん、今までありがとう。あ、今日新作ゲーム届く予定だっのに。やれないで死ぬのか。いやだなぁ。死にたくないなぁ。僕にはまだまだ攻略したい女のk...


「スタート!!!」


ざ、寿命消耗戦開幕です!

ちなみにこのコース外周だから正確に800Mってわけではない。むしろ絶対に800M以上ある。あのオヤジ許さない。


1周目:タイムにも入れる。息は上がるが6分で回復可能。

2周目:少し疲れた。まだいけるはず。

3周目:インターバルの時間に膝に手をつくくらいに疲れた。同グループの1年が死にかけている。

4周目:さすがにきつい。これのあと3倍?いっそ一思いに…

5周目:そろそろタイムがきつい。なんか隣の一年の口から液体が出てきている。よだれかな?

6周目:タイムギリギリ。10人そこらのうちタイム入りは4人。夢、途絶える。

7周目:10人と少しいた人数が6.7人になっている。と思う。もうよく見えない。

8周目:第一グループが僕と青木と先輩2人の4人以外視認できないくらい遅れている。てか走ってるうちに周回遅れで抜かした。気がする。

9周目:なぜ走るのか。そこに道があるから。

10周目:遺書を書くのを忘れた。残念。みちこさん、うい、いままでありがー

11周目:…………。

12周目:天使が現れた。僕を天国に連れ去ってくれるらしい。

13周目:ラストおおおおおおおおおおおああああああああああああああ

14周目:へ?

15周目:蝶々が飛んでるよおお、ご飯が浮いてるよぉ。ここはどこなんだー


目の前が真っ暗になった。

目を開けたらグラウンドにいた。起き上がろうとした。無理だった。多分金縛りだよね。そうだと言ってくれ。

横を見ると青木がいた。


「おい、青木。」


「……。ん、んん。あぁ、俺生きてたんだ。」


「どうやらまだ殺してくれなかったみたい。それより今回のあれはなんだ?」


「どうやら1年が途中で逃げ出したらしい。」


「まぁしゃーないな。」


毎年逃げ出します。というよりも毎回誰かが逃げ出します。そして本数が増えます。

やっとの思いで起き上がると広がっていたのは地獄絵図。死体としか思えないような姿勢で倒れている。

よく見ると小さな影が走り回っている。みーちゃんだった。一人一人にやかんの水をぶっかけているらしい。昭和かよ!なんて突っ込む元気もない。


人生の根幹を見た僕らは帰投する。その姿はさながらアルマ○ドンである。あの音楽流れてきそう。

そして誰かが口に出してしまった。あの言葉を…


「明日も試合だよな…。」


人間の限界を超えた僕らにあのオヤジは、あろうことか生物の限界を超えさせようとしている。大概にしてくれ。


「明日は1試合目で9:30トスアップでーす!」


みーちゃんの声がグラウンドに響く。刹那、人々の魂が抜け崩れ落ちていくのを僕は見た。否、経験したのだった。

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