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秀吉「俺が、天下を取る!」  作者: スグル【戦国時代好きの40代】


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【25】二十二万の兵

【1589年12月 京の宿所にて 真田昌幸】


 やっと秀吉のお呼びがかかったよ。あまりに遅くてイライラしてきたから、いっそ こっちから行こうかと思っていたところだ。


 なんで、居場所が分かっている俺を呼び出すのに、こんなに時間がかかるんだよ?



【12月 聚楽第(じゅらくてい)にて 羽柴秀吉】


 小田原の北条攻めは、俺の 国内で最後の大きな戦になる。


 この戦は、勝つことだけが目的ではない。天下統一後の明国への出兵に、どれだけの兵を動員できるのかも見極めるんだ。


 だから、あえて全国の大名に出兵を命じる。その中には、まだ俺に従うかを明らかにしていない、伊達政宗も含まれる。


 政宗が兵を率いて俺の下に参ずれば善し、そうでなければ潰す。


 俺の召集に応じて、各大名がどれだけの兵を出すか、楽しみだぜ。


 俺の見立てでは、最低でも二十万は下らないよ。



【12月 京からの帰路 真田昌幸】


 なんで秀吉の呼び出しが遅かったのか、理由を知ってぶったまげたよ。


 北条を攻めるだけなんだよな。なのに全国の大名に出兵させるんだってよ。そんな必要がどこにある?


 嫌だねえ…兵数で圧倒すれば、馬鹿でも勝つよ。軍費も無駄だ。俺に兵を五万ほど貸すから、北条を討って来いって言えば、速攻で終わらせてやるのによ。


 もう、やる気が失せた。途中から、話を聞く気もなくなった。


 来年には、日本中の猿を集めて、小田原に遠足……じゃなくて遠征か。日本中の猿を集めて……じゃなくて、二十万に及ぶ兵…だったかな。まあ どっちでも似たようなもんだ。


 徳川家康が秀吉に付いたんだ。つまり駿河と甲斐まで難なく進める。どっちからでも、山を一つ越えれば小田原なんだ。


 しかし北条には、守らなきゃならない土地が多いから、兵を分散せざるを得ない。


 即断を避ける北条氏政は、守兵の配置を決めるのにも時間がかかる。評定(ひょうじょう)も長引くよ。


 総勢十万以下で、駿河と甲斐と相模湾から小田原を急襲すれば楽勝だよ。なのに その倍も動員し、のんびりと攻めていたら、無駄な時間と軍費がかかるだけだ。


 それに、北条領だけでは、恩賞が各大名に十分に行き渡らない。


 全国を従えたら、国内に切り取る土地は、ほとんどなくなるんだ。統一を目の前にした今だからこそ、無駄な大軍を動員してはダメなんだよ。


 秀吉も、若い頃はもっとキレキレだったのに、権力を持ったら鈍(どん)くさくなってしまった。今じゃ、 丸っきり裸の王様だ。誰か、はっきり言ってやれねえのかな。



【1590年 1月 浜松城にて 徳川家康】


 北条氏政はこの非常時に、未だに佐竹義重とも対立している。伊達政宗だって、そんな北条家に付いて、自分の身まで危険に晒(さら)すようなことはしないだろう。この戦は、やる前から結果は見えている。


 おそらく来年には、秀吉によって天下は再び統一される。


 なんだか色々なところから情報が入ってきているが、秀吉は天下統一後、俺を自分の領地から遠ざけるつもりらしい。だが減封される理由はない。となると、今の北条家の領地を俺にあてがって、今の俺の領地を、仲良しの家臣らに分け与える気だろう。そして、他の実力者は九州だ。


 長年 馴染(なじ)んだ三河と遠江を手放すのは惜しいけど、関東を貰えるなら悪くはない。秀吉や九州から離れられるのも歓迎だ。


 北条との戦で兵を損耗させるのは馬鹿らしいし、どうせ関東に転封されるなら、功を立てても立てなくても同じだ。


 それなら、関東の各地をよく見て、どこが本拠地に向いているか、じっくり考えておくべきだ。



【1月 聚楽第にて 豊臣秀吉】


 どいつもこいつも、驚きのあまり何も言えねえようだったぞ。何しろ二十万を超える大軍の遠征だからな。


 真田昌幸なんて、下を向いたきり、顔を上げることもできないようだった。あいつは頭は切れても、所詮は田舎の小っこい領主に過ぎないからな。


 こんなの、俺じゃなきゃ絶対にできねえよ。普通のやつじゃ、思い付きもしねえだろう。兵糧がどうの恩賞がどうのと、騒ぐやつもいるが、二十万に食わせる兵糧くらい軽いもんだし、北条領に転封する家康の領地が空くんだから、恩賞にも困らない。


 北条家は農民思いだから、領民に課す税率が低いんだよ。領主が代わっても、急に税率は上げ られない。湿地も多くて、開発にも苦労するだろう。


 家康を減封する理由はないから、こうやって地味に嫌がらせするしかないんだけどな。


 まあ いいか。全国を従えれば家康ごとき、さほど警戒するまでもなくなる。この国を統一するのは、ただの通過点だしな。


 二十万の兵が本当に必要になるのは、海を渡ってからなんだ。



【1月 京の屋敷にて 石田三成】


 全国の大名が報せてきた動員予定の兵に、秀吉様の直轄の兵を合わせると、二十二万を超える。


 秀吉様は、兵糧くらい軽いものだと言われたが、実はそうではない。だが、私が何度それを言っても、秀吉様は意味ありげに笑うだけだ。


 秀吉様は、自らの威光を誇示するかのように、歩を緩めて進むおつもりだ。それではほぼ確実に、最後は小田原城を囲んでの持久戦になる。


 全国統一後の明国への出兵が五年以上先であれば、兵糧を再び蓄えられるが、秀吉様にはそこまで待つ気はない。


 一体、何を考えておられるのだ?



【26】松井田城攻め に続く

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