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秀吉「俺が、天下を取る!」  作者: スグル【戦国時代好きの40代】


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19/24

【19】九州征伐 前編

【1585年 11月 徳川家康】


 俺は、秀吉に臣下の礼を取った。


 あれは敗北宣言に等しいが、実は内心、ほっとしている部分もある。秀吉と戦わなくて済むからね。


 秀吉は既に、信長の勢力を大きく超えている。軍もさらに組織化され、武将個人の能力に頼らなくても、安定して勝てるようになった。


 俺ではとても敵わない。


 俺を従わせたい秀吉のほうから譲歩してくれたおかげで、家中の反発も最小限に抑えられた。


 だから、悪いことばかりじゃないよ。秀吉が九州を攻めている間にも、俺はじっくり領内を整備して、力を蓄えることにするよ。



【11月下旬 豊臣秀吉】


 また地面が揺れた。最近多いよ。


 地震とか噴火とか、本当にやめてほしいぜ。坂本城にいたおかげで助かったが、あの地震は、ちょっとトラウマになってしまったんだ。あれからは、少しの揺れでもビクビクしてしまう。揺れる船も苦手になった。


 だから、九州まで行くときは陸路で行く。急ぐ必要もないしな。


 まず毛利と長宗我部に攻めさせて、俺は最後の仕上げだけ やりに行く。関白の俺 自らが、九州を平定したという事実を作れれば良いんだ。


 大友宗麟が臣従したから、九州には既に拠点がある。楽に上陸できるし、大して苦労せずに勝てるはずだ。


 島津義久はもう、戦の落としどころを探っているみたいだしな。


 家康は叩けなかったが、代わりに九州を制圧すれば、同じようなもんだ。


 信長様…もう少しです。もう少しで、信長様の夢だった天下統一を、この秀吉が果たしてご覧に入れます。



【1586年7月 豊前 馬ヶ岳城にて 黒田官兵衛】


 島津軍はこちらの想定より、かなり強い。よく鍛えられているし、装備も良い。


 初めから秀吉様の本隊で当たらなくて良かった。鮮やかに勝つ必要があるからな。


 前線にいる毛利軍と長宗我部軍も弱くはないのだが、島津軍と同じ数では、とても勝てない。力攻めを控えて、じっくりと国衆の調略からやり直せ。


 それから…〈あの男〉のことを、もっとよく調べて報告しろ。



【11月 大坂城にて 豊臣秀吉と石田三成】


「三成、島津は想定以上に手強いようだぞ」


「はい、私も驚いています。私は実戦経験が乏しく、戦力分析が甘かったようです」


「それは構わん。ぶつかってみなきゃ、分からんことも多いんだ。九州に先行させた、毛利と長宗我部には、かなりでかい損害が出ているが、数が多いから なんとかなっている。

 やつらが島津を弱らせ、俺が率いる本隊で、最後のおいしいところを軽く頂く予定だったんだが、そんなに甘い戦じゃなかった」


「黒田官兵衛が作戦を立て直し、島津家の力を()いでいます。殿下の本隊が到着すれば、島津家も降伏するでしょう。予定通りになります」


「しかし九州の最南端っていうのは、考えようによっちゃ、地の利にも恵まれてるよな。よくあれで、今まで九州を統一しようとしなかったな」


「島津家も、大人しくしていたわけではなく、同じ九州の大友家や龍造寺家も、島津家に匹敵する力を持っていたため、膠着(こうちゃく)状態だったのでしょう」


「あの島津に匹敵する大名が、あと二人もいたのか。そいつらが、九州の中で争っていねえで、団結して北上していたら、かなりヤバかったな」


「長い間、貿易の利権を巡って争ってきた者たちが、団結はできなかったのです」


「積年の恨みってやつか。何代も続く家系も大変だな。俺には理解不能だが」


「もう一つ、九州勢が北上して来なかったのは、自分たちの強さを、自覚できなかったせいもあるかも知れません。島津・龍造寺・大友が、ほぼ均等な力を持っていたため、自分たちが中央の軍を大きく(しの)ぐ戦力を持っていると、気づかなかったのだと思います」


「つまり視野が狭いってことか。物ごとを長期的に考える頭もないんだな。明との貿易拠点だから、経済力も軍事力もあるのに、それを活かせていないわけだ。

 そんで、狭いところでチマチマと争った結果、島津が首位に立ったってところだな」


「そうでしょう」


「いくら戦力は高くても、大局観に欠けるのが、九州のやつらの弱点だな。それさえ分かれば、やりようはいくらでもあるな」


「ただ、気になる男が一人います」


「名は?」


「島津義弘です」


「義弘?」


「島津義久の弟です」


「知らんな。なぜ気になる?」


「兵の統率力と、剛直な性格です。黒田官兵衛も同じ意見です」


「九州で気になると言えば、雷神 立花道雪だったが、病死したと聞いた」


「その立花道雪に匹敵する男です。いえ、高齢だった立花道雪より、まだ若い島津義弘のほうが手強いでしょう」


「分かった。油断はしない。それにしても、島津が九州を統一していたら、もっと際どい戦になっていたな」


「そうですね。しかし、間に合いました。島津は油断なりませんが、殿下が敗れることはありません。大軍を一気に投入し、即戦で勝ち切れます」


「大軍を一気に投入か。言うのは簡単だが…」


「問題ありません」


「さらに、俺が上陸した直後に、勝負を付ける。早すぎても遅すぎてもダメだ」


「来年までに、殿下のご意向通り、すべて整えます」


「よし。お前が言うなら任せる」


「承知しました」



【20】九州征伐 後編 に続く

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