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終電のホーム
お酒を飲んでいる。
正確には、飲んでいた先刻まで。
ぽーっとした頭のまま、ホームに立つ。夜風が肌に触って心ごとふわりとする。足の裏の感覚は確かで、重力がいつもよりもかかっている気がする。
通過電車が横切ると、勢いよく風が全身を撫ぜていく。イヤホンからは、女性シンガーの声がアップテンポで聴こえてくるせいで、外の音が届かない。
ひとつ大あくびをする。
電車に乗り込んで、一番端の席に座る。向かいの人が、私と同じパソコンケースを膝の上に立てている。壁に頭をもたせて、上の方の広告を眺めていると、
「もう恋はできないね」
とイヤホンから流れてくる。最終電車のロングシートは全て埋まっていて、つり革を握る人々もいくらかいる。自分の足で立っていないことに恥ずかしくなったが、まぶたを閉ざすと、急に眠気が襲ってきて、そのまま眠る。
寝過ごすまいと思いながら、眠る。




