表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マナリウム ~私、狼だけど神様を目指しても良いでしょうか?~  作者: 内村一樹
第2章 狼と女王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/306

第28話 理由

 ミノーラは、女王と言う存在を知らない。


 ”人間世界におけるえらい存在”くらいの認識にんしきだ。


 狼の社会にも偉さという概念がいねんは存在するが、それはあくまでもリーダーと言う意味合いである。


 だからこそ、彼女は影の女王を目の当たりにしたとき、彼女の知る”偉い”存在とは異なった概念なのだと感じた。


 あこがれと言うのが、一番近いのかもしれない。


「ほらぁ! 挨拶しろぉ!」


「あ、すみません。見惚みとれてしまいました。私はミノーラと言います」


 いまだに真っ暗闇の中、体は動かないので頭だけで会釈えしゃくをする。


 そんな彼女をじっと見つめたまま身動きさえしない影の女王。


 彼女がいつそこに現れたのか定かではない。ただ、気が付けば、そこに立っていた。


 色白で、華奢きゃしゃ輪郭りんかく


 それでいてしんの通った長身をたずさえた美人。


 影の女王とは思えないような、まばゆい存在。


 人間のようにも見えるが、まとっているオーラが明らかに違っている。


 そんな女王が、ふと思いついたように口を開いた。


「レイラ。言葉には気を付けなさいと、いつも言っているはずですよ」


「し、失礼しました。女王様。このミノーラ……さんがサーナの知り合いだと言うので、連れて来ちゃいました。……連れて参りました」


 どうやらレイラは敬語が苦手なようだ。女王も慣れているのか、そのことには触れずに話が進む。


「ほう、サーナの。つまり、この首輪は……」


 ゆっくりと言葉をつむぎながら歩み寄ってきた女王は、首輪に触れようと伸ばした手を、ゆっくりと止める。


「ミノーラ……混色こんしょくしているのですか? ……それで言葉を発しているのですね。もしそうなのだとしたら……サーナは何をしようとしている?」


 そんなことを呟いた女王の声を、ミノーラが聞き逃すはずもなく、思わず問いかけてしまう。


「混色って何のことですか? 私が人と話が出来るのは、その混色ってものと関わりがあるのでしょうか?」


「こらっ! ばかっ! 許可なくしゃべるな!」


 すぐさまレイラに遮られてしまうが、女王の耳には届いているようだ。


 一瞬ではあるが、目が合った後、すぐにそっぽを向かれてしまった。


「……サーナに言われてここに来たと言っていましたね? ミノーラ。なぜあなたはそれに従ったのですか?」


「なぜって……私の家と家族をうばった男を探すためです。」


「それは、サーナに従った理由では無いでしょう?」


 確かに。その通りだ。


 私がサーナの言葉に従った理由は、なぜだろう。


 助けてくれたから?サーナにも利用価値があったから助けたのであって、本意で助けたのだろうか。


 そうじゃない気がする。


 初めに目が覚めた時はおりの中で、そのあと、食事をもらって、そして…。


「……名前を、私にミノーラっていう素敵な名前をくれたから」


「……そうですか。」


 ミノーラには、そう呟く女王がまるで切なさにふちどられた絵画のように見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ