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マナリウム ~私、狼だけど神様を目指しても良いでしょうか?~  作者: 内村一樹
第2章 狼と女王

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第29話 救援

 しばらく黙り込んだ後、女王は溶けるように消えていった。


 どうやら、元居た場所へ帰ったらしい。あからさまにレイラから緊張が抜けていくのが分かる。


「帰っちゃいましたね。ところでレイラさん。帽子が少しズレちゃってるので、整えてもらって良いですか?」


「なぁんでアタシが! アナタの言うことを聞かなくちゃいけないワケ? これさっきも言ったよねぇ? 言わなかった?」


「そういえば、言ってましたね。ならせめて、拘束こうそくゆるめてくれません?」


「誰が緩めるもんか! このままジワジワと精神を侵食して……ん?」


 声高に叫んでいたレイラだったが、何やら異変が起きたらしい。辺りをきょろきょろし始めたかと思うと、頭上を警戒し始めた。


「何かあったんですか?」


 動かせない体で周囲の状況を確認することが出来ないまま、ミノーラは降りかかる異変にさらされる。


 ミノーラとレイラの丁度真ん中にあたる箇所で、強烈な閃光が弾けた。


 とっさに反応できなかったミノーラは、視界がチラチラと点滅するのを感じる。恐らくそれは、レイラも同じである。


「っ! 誰だぁ!」


 レイラの焦りをにじませたその声が、異変を加速させたのだろう。四方八方あらゆる場所で、先ほどと同じ閃光が弾ける。


 音もなく弾けるその閃光にミノーラは見覚えがあった。それは、あの時カリオスが使っていたクラミウム鉱石と同じ輝き。


「くそっ!」


 助けが来たのだと気が付いたミノーラと、一気に劣勢になったと悟ったレイラ。


 形勢が逆転した瞬間に、ほんの一瞬視線が交わる。


 そこにどんな意図があったのかは分からないが、気が付くとレイラは忽然こつぜんと姿を消していた。


 次第に周囲の闇が薄れていき、体の拘束も解けて行く。


「ミノーラさん! 大丈夫ですか?」


 どうやらパトラが救援を呼んでくれたらしい。


 上空からゆっくりと滑空しながら降りてくるパトラ達を見上げ、彼女は礼を言う。


「パトラさん! ありがとうございます! やっと解放されました。ところで、今のは何ですか?」


「閃光弾です。そちらの方がくれました」


 パトラに促されるように目を向けると、見知らぬ人物がこちらへと歩いて来ていた。


 その男は値踏みするような目を向けてきており、正直不愉快だ。


「ふむ、貴方がミノーラですね? まぁ、言葉をあやつる狼なんて間違えるすべの無い事実ですからねぇ、世界中探しても貴方くらいでしょう。ところで、その帽子、お似合いです。まさかお洒落までこなしてしまうとは。失礼、自己紹介が遅れました。私の名はバートンと言います。お見知りおきを」


「ふふっ。ありがとうございます」


 無意識に左右する尻尾に気づいたミノーラは全身をブルブルと振った。心なしか、全身の筋肉がほぐれた気がする。


 ただ、次は帽子を飛ばさないように注意しようと心に決めたミノーラ。


 そんな様子をニコニコと眺めていたバートンが、期を得たかのように話を始める。


「さて、パトラさん。そろそろ本題に入りましょう。主要人物をここに集めてください。少しばかり手を貸していただきたいことがありますので」


「手を貸す…でしょうか? いったい何を?」


「題して、『コロニー切り離し作戦』です!」


 バートンの告げた作戦名にパトラ達がざわめき始める。しかし、ミノーラはそれどころではなかった。


 なぜなら、バートンの肩に乗っている小さな人間に気が付いてしまったからである。


 ここに至るまでに初めて見るものは沢山あったが、これ以上に驚きを覚えたものはない。自身の目が点になるのを自覚しながらも、凝視してしまう。


 緑の衣服に身を包んだその小さなおじさんは、ミノーラと目が合うと、満面の笑みを浮かべる。


「バ、バートンさん! 肩に珍妙なおじさんが乗ってますよ!?」


「おめぇにだけは言われたかねぇよ!」


 見た目とは裏腹に、大きな声だなとミノーラは思った。

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