↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マナリウム ~私、狼だけど神様を目指しても良いでしょうか?~  作者: 内村一樹
第4章 狼と海の神

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

147/306

第146話 月下(幕間)

「……面倒くせぇなぁ。」


 そうぼやいた男は、左手で頭をボリボリと掻き毟りながら天井を見上げる。


 真っ暗闇の中、薄っすらと見えるその天井は、やけに高く見えた。


 そのまま視線を落とした男は、眼前の鉄格子に目をやると、舌を一つ打つ。


「……いつだ?なぁ、いつになったら出れるんだ?俺は早くここを出なくちゃならねぇんだぞ。早く出て!あの野郎を!ぶちのめさねぇと気が済まねぇ!おい!聞いてんのか!そこに居るんだろうが!クソ野郎!」


 初めはボソボソと言葉を溢していた男は、徐々に怒りを顕わにし始めると、ついには立ち上がり、左腕で鉄格子を強く殴りつけた。


 周囲に甲高い金属音が響く。


 しかし、男のその罵声に反応する者はおらず、ただ虚しさと静寂だけが広がってゆく。


 打ち付けた左腕をしばらく眺めた男は、だらりと垂れて動かない反対の腕に目をやると、再び舌を打つ。


 焼けただれ、動かすことが叶わなくなってしまった右腕。


 全てはあの男のせいだ。


「殺す殺す。絶対に殺す。あぁぁぁぁぁぁぁ!イラつくぜ。おい!マーカス!聞いてんだろ!ここから出せっつってんだ!おめぇはこの街を守るだけなんだろ?俺はこの街から出ていくからよぉ、そんでもって、カリオスをぶっ殺しに行くからよぉ。開けろ!出せ!」


 どれだけの大声で喚きたてても、誰かが反応することは無かった。その反応をみた男は、さらに怒りを増長させる。


 気が立ち、冷静さを欠き始めていたその男は、しかし、異常に研ぎ澄まされた感覚で何者かが近付いていることを感知する。


「あぁ?なんだ?誰かいんのか?おい!早く開けやがれ!」


 掴んだ鉄格子を全力で前後に動かそうとした男は、動かない鉄格子と、返事をしない訪問者にイラつく。


 再び声を荒げようとした男が口を開きかけた時、ようやく、彼の欲しがっていた答えが返ってきた。


「ここを開けて欲しいのか?」


 聞き覚えの無い声に、一瞬身構えた男だったが、すぐさま言葉の意味を理解し、ニタァっと笑みを浮かべる。


「へっ。話しが分かるじゃねぇか。早く開けろ。」


 そう告げた男の言葉を聞いて、もう一つの声が、響く。


「おい、こんな奴を出すのか?私は反対だぞ。」


「何だとてめぇ!」


 そんな彼の言葉が響く中、声の主がようやく鉄格子の前に現れた。


 一人は、一見普通の人間の男。初めに声を掛けてきたのは、恐らくこの男だろう。


 体格自体はそれほど大きいわけでは無いが、かなり鍛え上げられていると男は見て取った。


 もう一人は、翼を持つ男。全身を羽毛に覆われたその男は、やたらと鋭い目つきで彼を睨んでくる。


 しかし、鋭いのは目つきだけだ。負ける要素は無いと、彼は高を括る。


「おい、鳥頭。てめぇ俺がここを出たら覚えとけよ。」


「まぁ、落ち着いて貰えないか。そうでないと、貴方をここから出すわけにはいかないのでね。いいかな?これは取引だ。貴方は私に手を出すわけにはいかないし、この彼にも手を出してはいけない。ただ一人、ある男だけに集中してほしい。」


 人間の男が、やたらと畏まった仕草で話し始めたかと思うと、右手の人差し指で数字の1を示した。


 一人の男。


 そう言いたいのだろう。


 何を言い始めたのかよく理解できなかった彼は、人間の男をじっと睨みつける。


「あぁ、貴方の言いたいことは分かるつもりですよ。突然一人の男に集中しろと言われても、困るでしょう。でも、もし、仮に。奇跡的な話として、私の言っているその男と、貴方の狙っているその男が同一人物なのだとしたら、貴方はどうします?」


「はぁ?んなワケねぇだろ……」


 反論しようとした彼は、しかし、得意げな表情を崩すことの無い様子に違和感を覚えた。


 そんな感情の揺れ動きを感じ取ったのか、人間の男は薄っすらと笑みを溢すと、軽く会釈をしながら話し始めた。


「申し遅れました。私はバートンと申します。こちらはトリーヌ。偶然、本当に偶然なんだがね?少し前にこの街で起きたことを耳にしまして。ぜひとも貴方に会いたいと思って、ここに現れたのですよ。」


 聞いているだけでイラつきを覚える程に仰々しく語り始めたバートン。


 彼の言葉に含まれているであろう様々な意味を納得した彼は、イラつきを振り払って、ニヤリと笑みを溢す。


「面倒くせぇ。面倒くせぇが、テメェの口上に乗っかってやるぜ。」


 薄っすらとバートンが笑みを浮かべることを確認した男は、取引が成立したことを認識する。


 ゆっくりと胸ポケットへと手をやったバートンが、そっと取り出したのは一つの鍵だった。


「さて、それでは貴方をここから出してあげようと思うのですが。その前に、名前を聞いても良いだろうか?」


「……レイガスだ。」


 そう答えたレイガスはバートンが牢の扉を開け放つのを確認すると、ゆっくりと足を踏み出し、自由を踏みしめた。


 それは、カリオスやミノーラがクリスと焚火を囲んだ日。同じ月の下の出来事だった。

いつもマナリウムを読んでいただきありがとうございます!

「第4章 狼と海の神(マリルタ編)」はここまでです!


147話からは第5章に突入します!

これからも楽しみながら書いて行こうと思っていますので、

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。