入団試験
王都は賑わっていた。
龍騎士団の入団試験には、様々な人が受けに来ていた。
空には飛行船が浮いている。
様々な露天が立ち並び、まるでお祭りだった。
試験会場は王城内にある訓練場だった。
ただ、フィーロは身体検査の時点で落とされた。
理由は単純で、身長が足りなかったのだ。
もちろんフィーロは抗議した。
「何で身長なんかで落とされるんだ」
それに対して、試験官が説明した。
「龍甲冑の規格は統一されていて、百七十セタケ以下の者は装備する事が出来ないからだ。そちらの少年、受験生ユージンは条件を満たしているな」
フィーロのセタケは百六十。
隣でムッとしているユージンは百七十一セタケあった。
「小さい鎧はないのか」
「ない。素材が龍だけに、加工も大変なのだ。材料自体も少ない。立派な体格でないモノの分を作る余地などない。龍を倒すのは命懸けなのだ。理解して欲しい」
「せめて、実戦を見てもらえないか。鎧はなくてもいい。剣だけでも戦える」
フィーロは粘ったが、試験官は首を振った。
「そういう我が侭を言う者は、試験のたびに必ず出て来る。そして毎回言うんだが、ダメだ。受験生フィーロ、お前は不合格だ」
駄目だった。
「フィーロ……」
「ユージン、よかったな。お前はきっと合格する」
フィーロは、ユージンの胸板を軽く叩いた。
「……義父さんが言ってたよ。もしもダメだった場合は戻って来いって」
「俺は武者修行に出る」
「話を聞いて」
荷物を担ぐフィーロを、ユージンは急いで止めた。
「龍を殺す方法が、もう一つあるんだ。詳しい話は義父さんに聞いて欲しい」
出発しようとしていたフィーロの足が止まる。
「そんなのがあるなら、どうして」
フィーロの視線は、龍騎士団の入団試験会場に向けられていた。
ユージンは、頭を振った。
「こっちの方が現実的だからだよ。龍の素材を使った武器と防具、それに人による対龍戦の実績。もう一つは危険だし、幻想に半分足を踏み込んでる。そもそも可能かどうかも怪しい方法なんだ」
「何だ、そんな事か」
「え、そこで笑うの?」
「龍を殺そうなんて話自体、幻想だろ。分かった。行ってくる」
「あ、うん」
「頑張れよ、ユージン」
フィーロは荷物を担ぎ直すと、駆け出した。
目指すは修業を積んだオキナ山だ。
「え、もう行っちゃうの!?」
後ろでユージンの声が響いていたが、耳には届かなかった。
「喜んでいるのは分かるけど……」
フィーロの背を見送ったユージンの微笑みが、少し曇る。
「……義父さんに聞いたあの方法は、正直使って欲しくないな」
数日後、ユージンは龍騎士団の入団試験を無事突破した。
微妙に伏線追加。