因縁
一応、第二部というか、新章スタートです。
夜はふけ、時計の針はテッペンを目指し、重力に逆らおうとしている頃、蒼崎家の書斎はペンがせわしなく動く音が響く。
「なあ、恋そろそろ寝ようよ」
寝巻姿の蒼崎が自宅の書斎でふかふかの背もたれがある椅子に思いっ切り体重を預けながら、カリカリとデスクワークを行なっている双鐘に向かって声をかける。
双鐘も風呂あがりなのか、長い髪を艶やかに光らせており、パジャマ姿である。
「一人で寝に行けばいいじゃないですか、空くんが負けたせいでこっちは引き継ぎ作業に忙しいんです」
顔を蒼崎に向けること無く双鐘が呟く。
「意地悪だな、恋。僕が一人じゃ寝られないの知ってて言うんだから」
「そう思うならちょっとは手伝ってください」
双鐘は唇を尖らせながら反論する蒼崎の言葉をピシャリと正論で返すと、蒼崎はつまらなさそうな顔をしながらもう一度椅子にふんぞりかえる。
どうやら、手伝う気は無いらしい。
双鐘がかまってくれない蒼崎は手持ち無沙汰に手遊びを始める。
そうしてしばらく経った頃、蒼崎の携帯が突如鳴り始める。
「誰だよ、こんな遅くに」
ぼやきながら、服から携帯を取り出すと、ディスプレイに表示された発信者を見て表情が凍る。
そんな様子を近くにいた双鐘が不審に思い思わず問いかける。
「誰から何ですか?」
「面倒臭い相手だよ。でも、でないともっと面倒臭いし。仕方ない」
蒼崎はかなりいやいやながら、電話に出る。
「もしもし」
「もしもし、蒼崎くん」
元気のいい声が電話から近くにいる双鐘まで届く。
「何の用? 九条の氷華さん」
めんどくさそうにダルそうに、蒼崎が答える。
「どうして、そんなにテンション低いの? やっぱり、五十鈴の言った通り負けたって本当なの?」
「負けたのは本当だけど、テンションが低い理由はそれじゃないよ。ていうか本当に何の用? こんな夜遅くに」
「へー、本当に負けたんだ」
かなり意外そうに電話の主、九条氷華が答える。
神武学園が今後戦う相手である、綏靖学園の序列一位であり、生徒会長である九条氷華。敵同士である、蒼崎空と九条氷華は傍目からはそれほど、いがみ合っているようには見えず、世間話でもするように話を進めていく。
「同世代なら蒼崎くんほど強い人は見たことなかったけど、相当強い子が見つかったの?」
「秘密だよ。ていうか、僕の負けを笑うために電話かけてきたならもう切るよ?」
「ちょっと待ってよ。一応、聞きたいことがあってさ、ウチの五十鈴、どのくらい活躍したの? あの子に戦挙の様子を聞いても、ホントに参加してたのかってぐらい情報量少ないし、オマケに大怪我して帰ってきてたしどうだったのかなって?」
蒼崎は思い返す。そう言えば確か、ジョーカーとして、綏靖学園から一人生徒をレンタルしていた。
「ああ、あの子か。一言で言えば酷かったよ。戦挙本部に聞いた所、あの子がはえあるリタイア第一号で、復帰後は個人戦に移行剃る前に重傷で完全にリタイアだったらしい。一応、強い奴って頼んだのにとんだ不良品を掴まされたよ」
ようやく、嫌味が言えるポイントが見つかったと思ったのか、やや強い口調で、電話の向こうの相手に毒を吐く。
「……そこに関してはゴメン。そこそこ、強いと思ってたんだけど、お仕置きだなこれは。それと、もう一個聞きたいんだけど、九詩菜は元気?」
「九条の九詩菜の事?」
「そう、私のカワイイ妹」
そう言われて、蒼崎は思い返す。
確かに氷華には、腹違いの妹がいて、それが九条九詩菜だったはずだ。
確か、九条家で隠し子騒動が起こって、何故か天上家が間を取り持ち、母親と娘を引き取ったらしい。確かウチの学園に通っていたはずだ。
あんまり、関心が無くて特に良くは知らなかった。
「さあ、元気にやってるんじゃない?」
「何その返事」
「こっちも色々大変で中々そこまで気が回らないんだよ。そんなに気になるなら、自分で電話かけなよ」
やや、投げやりに返すと、今度は氷華が悲しそうに答える。
「そうしたいんだけど、我が家は九詩菜のことはタブーなの。もし、私が電話したことが万が一でもバレたらまた我が家に嫌な空気が流れるから、私も敬遠してるの。第一、私、九詩菜の電話番号知らないし」
「そうなんだ。まあ、隙を見て声でもかけてあげなよ。それじゃあ、電話切るよ」
「あ、ちょっと待ってよ。一応今年の交流戦期待していいんだよね」
それは前年度の勝者からの上から目線の挑戦状だった。
相手からの言葉を受け取った蒼崎は嬉しそうに微笑みながら、電話越しの相手に言葉を返す。
「当然。こっちとしても勝つつもりさ」
「ふふ、楽しみだね。それじゃあ、また今度」
「次は暇な時に連絡してよ」
そう言って蒼崎は電話の電源を切る。
「あいつと話すと面倒でやだよ」
「……空くん。知らなかったようなんで言いますけど、九条九詩菜は重傷ですよ」
やや、重苦しい空気をまとって、双鐘が話しかける。
「え!? そうなの。全治どのくらい?」
「それが、精神的に……」
「げっ、そりゃ面倒だね。一応、明日はその辺りの情報を集めようか」
「私も詳しくは知らないですけど、その件に関して、神乃天下が関わってるらしいです」
メガネに指をかけながら双鐘が答える。
「……なるほどね。まずは彼から話を聞かないといけないか」
その後、夜の暗闇を割いていた書斎の明かりは静かに消えた。
現在忙しいので、あまり文章書けませんが、とりあえず、更新しておきます。
ここから、第二部スタートです。
ただし更新はゆっくりだと思います。
ご意見ご感想お待ちしております。




