Heaven or Hell. Let's Rock!! 2
アンプからギターを引きぬいて、ギターを鳴らすと音符状の玉が伊野の前に並ぶ。
そいつを自前のギターでバッティングをするように打ち飛ばす。
だが、速度は銃弾に比べればかなり遅く、それほど苦にせず躱せる。
が、伊野の能力はそんなちゃちなもんじゃない。
「そんな紙一重の躱し方じゃ、意味が無いぜ。はじけろ!」
伊野の言葉に反応するように躱した音符が弾ける。
それと同時に爆音と体が吹き飛びそうになるほどの衝撃が来る。
音符は音の塊で、直接当たれば破壊力満点で、躱したとしても衝撃波が散弾銃の弾のように拡散されて飛んでくる。
オマケにうるさい。耳が痛い。
「葵ちゃん。将来付き合ってもない男にライブハウスにデートに誘われたら断った方がいいよ」
「……今話す内容じゃないと思うけど何で?」
「愛を囁かれても、うるさすぎて聞こえない」
大音量の攻撃を食らって、衝撃より耳が痛い俺は、まともに聞こえてるかどうか、葵ちゃんにくだらない会話を振って確認する。
「ははは、それはそうじゃん。愛は囁くもんじゃない叫ぶもんじゃん。愛は伝えるもんじゃない、感じさせるものじゃん! 」
けれど、そんなくだらない会話にも伊野は割り込んで彼なりの意見を叫んでくる。
正直相手にするのも疲れるタイプだ。
「葵ちゃん。わかったと思うけど、あの攻撃はたんに躱すだけじゃ駄目だよ。出来るだけ距離を取って躱すか――」
話してる途中にまた伊野が音符をこちらに叩きつけてくる。
それに向かって俺は懐から、拳銃を取り出して音符を撃ち落とす。
すると音符は弾が着弾した場所で破裂して、爆音が鳴り響く。
衝撃はも距離を取ればすぐに散ってしまうのか、ここまでは届かない。
「なにかぶつけて叩き落せばOK。というわけで、先鋒は葵ちゃんに任せるよ。音符に関しては出来るだけ俺が撃ち落とす。多少は撃ち漏らすと思うけど頑張ってね」
「いいよ。先陣切る方が性にあってる!」
言ったか見たかで彼女は伊野とレイジの方向へと駆け出す。
「やる気まんまんじゃん! いいじゃんいいじゃん! 楽しいじゃん」
そう言いながらギターを弾いて音符を出すが俺が素早く撃ち落とす。
当然、衝撃は伊野達がにくるのだが、そんなことはお構いなしに伊野は音符を生み出していく。
「おい、真瑠珠! 前から言ってるだろ。飛び道具持ちがいる時にはお前の具現、使うの控えろよ。衝撃がこっちに来てんだよ!」
「ははは、レイジ。コレぐらい、ライブの演出だと考えようじゃん。それに六発以上作れば何発かは音符がばらまけるじゃん! それまでは必要経費じゃん」
自分の作り出した衝撃が決してノーダメージとは言いがたい所で爆発しているのに、笑いながら次の音符を作り出していく。
それは狂気じみてはいたが、俺が情けをかける必要は無い。
弾が切れるまで、作り出した音符を全て伊野の近くで撃ち落とす。
派手な音が鳴り響き、地面の砂が辺りに飛び散る。
そんな爆心地に俺の弾切れと呼吸を合わせるように詠唱を唱えながら葵ちゃんが飛び込む。
「"運命は暗闇だ、ゆえにそれを切り裂く閃光を求めた"『具現』『雷光』」
眩い光が走り、それと同時に葵ちゃんの髪の色が黒から金色へ変化していく。
バチバチバチ
小さな破裂音が抜刀している刀から響き、美しい反りのある刀身から電気が糸を引くように放出されている。
その刀を大上段に構え今まさに葵ちゃんが斬りかかろうとする。
が、目の前の伊野はギターで葵ちゃんの攻撃を受け止めようともせず、相変わらずギターから音符を作り出す。
「はあぁー!」
「残念だが、そいつをやらせるわけにはいかないんでね!」
伊野の後ろにいたレイジが葵ちゃんの攻撃間際に詠唱を始める。
「"共に響き、共に謳え、我が歩みは一人じゃない"『具現』『反響空間』」
その瞬間葵ちゃんが振り下ろした刀が白い半透明な壁に阻まれる。
「なっ!」
しかもその壁は刀から放電されている電撃を拡散されるように散らしていく。
「レイジの『具現』は面白いよ。その壁にぶつかったものは、力を反響させてしまうじゃん」
「だから何? 別に雷撃が私に返ってきても私には効かないし、第一こんな風に弱まった力なら――」
「効かないって!? ……別にそれはアンタの攻撃を止めるためだけに使ったわけじゃないじゃん。周りを見るじゃん」
伊野に言われ周りを見渡す葵ちゃん。
そこには白い半透明な壁が結界のように葵ちゃんを閉じ込めていた。
「もう一度言うじゃん。その壁は力を反響させる。そんな中にもし、俺の『抗鬱音階』が破裂するとどうなるかわかる? 延々と力が反響し続ける。そんな力を吸収してくれるのは、そこにいるアンタだけじゃん!」
勝ち誇った表情で、伊野が作っていた音符をギターを使って閉じ込められていた葵ちゃん目がけ打ち込む。
「ちなみに、その結界は外からの攻撃は内部に吸収しちゃうじゃん」
宣言通り、打ち込まれた音符は結界に吸い込まれる。
とりあえず、音符は躱すが状況は悪化する一方。
逃げられない密室空間に時限爆弾がセットされる。
「マジかよ」
考えろ。
状況を嘆いても良くはならない。
俺が何とかするしかない。
とは言え、今からレイジ側に突っ込んでも伊野とレイジ両方が全力で防ごうとするだろう。たとえ、『紅蓮』を解放しても、あの音符が破裂する前までに倒すのは厳しいだろう。
何かないか? せめて、アイツ等に確実に一発でも攻撃を当てられる状況を作れないか。
考えるが、良案がすぐに浮かばない。
畜生、やるだけ足掻くか。
ほぼ諦めに似た感覚で、伊野達に向かい一歩を踏み出す。
グニョ
踏み出した一歩がぬかるんだ地面に沈む。
……ぬかるんだ地面?
辺りはどこかの誰かが暴れてたせいで水浸しで、地面は濡れている。
その瞬間、奇策が浮かぶ!
「葵ちゃん。地面に刀をぶっ刺せ!」
迫り来る敗北を前に悔しみに滲む顔を見せていた葵ちゃんは俺の一声にピンと来たのか、
「――! わかった」
すぐさま行動に移す。
そして、俺は精一杯の力で地面を蹴って空へと飛ぶ。
バチン!
刀を突き刺した瞬間、電撃がぬかるんだ地面を伝って地面に立っていた伊野達を襲いかかる。
「アバババ!? 何で!」
レイジが作り出した『具現』は葵ちゃんの四方と上空を包んではいるが、地面にまでは展開されていない。
葵ちゃんを逃げ出させない事が一番の目的ならば、地面にまで展開する必要はない。地面を潜って逃げる奴なんていないからだ。
ゆえに、葵ちゃんの電撃は地面を伝って伊野達を襲う。
ぬかるんでいる地面も相まって効果は抜群である。
だが、直接電撃を与えたわけじゃないからか、二人共感電はしても気絶はしない。
気絶しなければレイジの『具現』も解除されないから、葵ちゃんは敗北を待つのみだ。
だから、ここから先は俺がやる。
左手の『紅蓮』を空へと放り投げ、弾が切れた『バレットパレット』に一発だけリロードする。
学園で許可されている拳銃の銃撃では一発で相手を気絶させるなんて威力は出せない。
だから、『バレットパレット』のとっておきを使う。
ホントはコレ頭が痛くなるから使いたくなかったんだけど。
紅蓮もコレも使ったら、明日は絶対にベッドの上から動けないな。
「"込めるは魔弾、射抜くは英雄、我は魔弾の射ち手なり"『神装展開』『バレットパレット』」
いつもは省略している、『バレットパレット』の正式な解放詠唱を唱え、レイジに向かい引き金を引く。
「"魔弾は喰らう"」
放たれた弾丸は撃ちだされた瞬間に真っ黒な球体に変化する。
その黒い球体は吸い込まれるようにレイジへ向かっていく。
普段ならば当然避けれる攻撃だが、葵ちゃんの電撃により感電している今では回避行動も取れず、撃ちぬくというより通過するという形でレイジを捉える。
「グフッ!」
肺から強引に空気を抜かれるような息とも声とつかない音を吐き出して、レイジはそのまま倒れこむ。
「今だ。逃げろ!!」
レイジが倒れこむのと同時に葵ちゃんを覆っていた白い壁が解除され、葵ちゃんが音符の塊から素早く距離を取る。その瞬間に音符が破裂し、轟音と衝撃が辺りを包む。
それと同時に地面に着地して、放り投げた刀をキャッチする。
「相変わらずうっさいな。おーい、葵ちゃん大丈夫?」
「おかげ様でね」
「そいつは良かった。あとは任せていい?」
「存分に頼って」
良かった、あとはほんとに頼むよ葵ちゃん。
さっきの攻撃は自分の気を大量に消費する。
『バレットパレット』の利点は消費する気の量が少ないことだ。
けれど、さっきの魔弾だけは燃費が悪い。
ただでさえ、俺の気の絶対量は少ない方なのだ。その上、今日は『紅蓮』も解放している。
この戦いも力を貸したいが、うずくまって休憩しかできないのが現状であり、実状だった。
俺はその場に腰を下ろし、『具現』が発動して金髪の美少女と、話し方こそ残念だが、ハーフで漫画の世界の住人かと思うほどのイケメンとの対決を見守った。
スイマセン。
ウチの回線が原因でアップロードがうまくいかないのでもう一回分割です。
ほんとごめんなさい




