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学園戦記  作者: 藁部 御門
戦挙編
38/50

それでも、俺は悪くない

 神楽との戦いのあと、痛む体にムチ打って葵ちゃんの肩の傷を見ようとする。


 が、制服の上からじゃよくわからない。


 さて、問題です。


 こういう時、俺が変態だと思われないように葵ちゃんの制服を脱がせて傷を見るのはどうすればいいでしょう?


 一、あえて変態っぽく服脱いでということで、冗談だという事を強調して、笑い話にする方法。


 恐らく冗談が通じず、単にキモいと思われるな。普通のクラスメートなら別にそれはいいけど、俺の家で同棲するのにキモいとか思われたら今後の生活に関わる。


 二、真面目に傷を見るから脱いでって、言う。


 恐らく葵ちゃんは真面目な人だから、多少顔を赤めながら脱いでくれる気がする。うん。それで行こう。


 決して葵ちゃんの上半身の裸が見たいとか、ブラジャー見てみたいとかいう、邪な考えなどは無い。断じて無い。


「葵ちゃん。肩の傷を見るからちょっと制服脱いでくれる?」


「天下くん、打撲とかの手当出来るの?」


「いや、流石に何も道具が無いから手当は厳しいけど、骨が折れてるかどうかの確認ぐらいなら出来るよ」


「そう、なら大丈夫。骨は折れてないのは自分でわかるから。気持ちだけもらっと――どうして、そんなに悲しそうな顔してるの? 涙まで流して!?」


「……うん、気にしないで。ちょっと体が痛いだけだから」


 一瞬で俺の煩悩が打ち払われ、男泣きをする。


 しばらくして、涙が枯れ果てた頃、葵ちゃんと対面するように腰を下ろし葵ちゃんに話しかける。


「右腕大丈夫?」


「多少痛むけど、大丈夫。戦闘も出来るよ」


「そいつは朗報だ。じゃあ、バッドニュースをプレゼント。俺多分、肋骨、折れてる」


 笑顔で葵ちゃんに話しかけるが、葵ちゃんはそれを聞いて表情を変える。


「だ、大丈夫なの?」


「さあ? ただ、幸か不幸か気絶するほど痛くないし、折れてるからって棄権できる性格でもないんだよなぁ」


 残念そうに言う俺を馬鹿だコイツ、的な目で葵ちゃんが見てくる。


「痛くないの?」


「不思議と今は痛くない。けど、時間が立つにつれて痛くなってくる。多分脳内麻薬が止まるともっと激痛が走ると思うよ。でも、最後まで見届けさせてくれよ」


「そんな!」


 痛々しそうな目を向けてくる葵ちゃん。


「大丈夫だって、最悪盾ぐらいにはなるからさ。足手まといだったら放っておいてくれていいし、別段命に関わる傷じゃあないと思うし、最悪死んでも生き返らせてくれる医者もいるしさ」


 笑う俺に顔を引きつらせたままの葵ちゃん。


「まあ、取り敢えずお話でもしようぜ」


「そんな余裕――!」


「葵ちゃんより、重傷の俺が余裕持ってるんだ。葵ちゃんも持とうぜ、余裕。そうだね、何から話す? そういや、何でいきなり転校して戦挙なんて出ようと思ったの?」


 今にも立ち上がりそうな葵ちゃんをなだめるように、のほほんとした口調で話しかける。


「それって大事なこと? もっと他にすることがあるんじゃ」


「動きまわるのは俺がツライ。多分移動しなくちゃいけないとは思うけど、取り敢えず今は休憩だ。それより、質問に答えてよ」


「はぁ、まあいいか。私の家がわりと名家なのは知ってるよね」


「うん」


 確か、『天帝』こと蒼崎空とかを分家に持つ名家だったはず。

「その跡継ぎを今年決めるらしいの。それに私も参加するはずだったんだけど、女で後継者争いに参加することを一族の上の人たちが難色を示してね。ただ、それでも諦めきれなくて、何とか交渉した結果が、この戦挙に勝ったら参加していいだって」


 それを聞いて、わりとすぐに思いつくことを口に出す。


「蒼崎空の参加する戦挙に? それってさ」


「そう、私に諦めろって言ってるの。本家の皆様はね。でも、やらずに諦めるなんて出来なかった。今まで稽古をつけてきた成果だって見せたかった。だから、お父様には反対されたけど、この学園に転校してきたの」


 並々ならぬ決意を込めて、悔しさを滲ませて、俺に語る。


「……なるほどね」


「でも、甘かった。最初は敵は蒼崎空だけだと思ってた。だけど、蓋を開けたら化物揃い。なんか、転校初日に天下くんに色々言ったのが恥ずかしくなってきたな」


 葵ちゃんが微笑み懐かしそうに話す。


「確か逃げることはかっこ悪いとか言ってたっけ? それが今じゃ不意打ちも出来る立派な騎士になられましたね、お姫様」


 皮肉を込めて俺も笑いながら返す。


「……私は天下くんの性格が悪いことを理解したよ。もう忘れてよ。私の師匠はずっと私を褒めてくれてたし、師匠が用意してくれた練習相手には全員勝ってたもん」


 子供っぽく頬を赤くふくらませてむくれる。


「悪い悪い。はぁー、よくもまあここまで残れたもんだな。笑えるくらい苦戦しかしてないし、後半は思惑もズレてたけど」


 上を見上げて、遠くを見つめる。所々で大きな音が聞こえて、まだ戦挙中だとわかるけれど、不思議とリラックス出来た。


「天下くんは?」


「えっ!?」


「天下くんはどうして、私のためにそこまでして『戦挙』を頑張ってたの? 思えば、剣道部には根回しして、戦挙に対する作戦も考えて、足を引っ張った私を庇ってまでどうして頑張ってたの?」


 さて、どこまで本音を言うか。


 嘘をつく気は無かったが全てを話すのも気が引ける。


「始めに言った通り、足を引っ張りたく無かったからですよ。俺に責任押し付けられるのも嫌だったしね。それに、俺が頑張ったのは葵ちゃんのためじゃない。あくまで、自分のためだから」


 特に踏み入ったことは言わず、ぼかす。


 それを気づいているのか、いないのか、そこで終わりにしたい話を葵ちゃんは続ける。


「自分のためにって言ってるけど、他人の足を引っ張りたくないって理由だけでそこまで頑張れる?」


 頑張ってることにしといてくれよ。当初の理由なんて話したらドン引きどころか、斬りかかられても文句が言えない。


「予想外に葵ちゃんがいい奴だったから、ちょっと本気出しただけだよ」


 苦笑いを浮かべながら話を切ろうとする。


 そんな時、学校の放送用のスピーカーから連絡用の声が聞こえてきた。


「本日は晴天なり。戦挙で生き残ってる皆様元気でしょうか。ちなみに私はお昼ごはんにステーキを食べるぐらい元気です」


 知らねーよ。ていうか、随分と砕けた放送者だな。


 女の人の高めの声が妙にハイテンションで響いている。


「戦挙後半戦である個人戦です。ですが、ここで問題が。ここまで、非常に効率よく減っていた参加人数ですが、流石に人数が少なくなって減りが悪いので、学園内で禁止区域を設けていこうと思います。これで、否が応でも空間が減って参加者が戦うことになるはずです。ちなみに、現在残り人数十名でございます。ある程度空間が縮まって更に人数の減りが悪い場合は参加者の居場所を放送で呼びかける可能性もあるのでよろしくお願いします。それでは禁止区域の発表です」


 放送は学園の施設を読み上げていく。


 その放送に耳を傾けながら必死に頭を回転させる。


 ていうか、本番中にルール変更とかありかよ。流石に、それはルール違反だろ。


 頭に恨みと怒りが芽を出しつつも、取り敢えず禁止区域を覚えることに集中する。


「――学園東の林、授業棟全体、です。以上の区域は立ち入ると首輪が警告音を鳴らし、一分後に失格になるので気をつけてください。それでは禁止区域への移行は十分後なのでそれまでに各自移動しておいてください。それでは皆様最後まで頑張ってください。アデュー」


 最後までくだけた調子のまま、放送を終了させる。


 それを聞いた葵ちゃんが慌てて立ち上がる。


「移動しなきゃ」


「そうだね」


「どこに行く? あんまり遠いとこは良くないよね」


 ふと考える。別段遠い所が悪いというわけでも無いが、行き先が決まらないなら、近場でいいだろう。


 もしここで、先を見通せてる賢いやつなら、罠をたっぷり仕掛けたフィールドとかに陣取るんだろうけどな。


 俺も、ジョーカーとかいう、ルールが無ければ一箇所に篭って色々と罠を仕掛けてやらかしてやったんだがね。


「取り敢えず、部室棟でも行こうか。他に人がいるかもしれないけど、もう覚悟を決めて戦おう」


 俺も立ち上がるが、それと同時にぐらりとふらつく。


 それを慌てて葵ちゃんが支えようとするが、押さえた部分が神楽に殴られて折れた箇所だったので、余計に激痛が走る。


「イテテテて」


「大丈夫?」


「大丈夫だから、手をのけて!」


 慌てて葵ちゃんから離れると乱れた呼吸を整える。


 息が整うと、針のような鋭い痛みは引いていき、変わりにジワジワと波のように広がってくるような痛みが襲う。


 どのみち痛みが消えることは無い。


「……畜生。痛えな。葵ちゃんさっさと行こう」


 もう、あんまり長く持ちそうにもないなと思いながらゆっくりと歩き始めた。

 




 林を抜ける間に、お互いで禁止区域を確認しながら、禁止区域を携帯に入力していく。


 場所を変える時、禁止区域の方向に逃げ込んでしまう愚行はできるだけ避けたい。


 そんな事を話しているとすぐさま、林を抜ける。部室棟は林のすぐ近くなので、そのまま入ろうとする。


 が、その入口に見知った顔がいて、門番のようにこっちを睨みつけていた。


「……あなた達が林から出てきたってことは弐宮くんは」


 九条九詩菜は隣に一緒に逃げていた剣道部員と共に部室棟の出入り口に陣取っていた。


 無防備に背中を部室棟内部に向けていることから、中に恐らく敵はいないのだろう。


「神楽は試合にゃ負けたよ。勝負には勝ったけどね。……今度は背中から斬りつけてこないんですか?」


 九条の言葉に棘をふんだんに含んだ一言を飛ばす。


 目の前にいる九条九詩菜とはわかりあう気もじゃれる気もない。


 会話は相手を追い詰めるため。


 ただそれだけのために使う。


「最後の最後まで、弐宮くんを信じてたから。あなた達が林から出てきても、まだ生き残ってるんじゃないかって信じてたから!」


「あっそう。残念だったね。それで? どうするの。また一旦姿を消して背後から俺たちを狙う? それとも今此処で神楽の仇を取る? どっちでもいいよ。俺はさ。でも、宣言と目標と理想のうち、まだ、目標しか達成できてないんだ。絶対に宣言だけは達成するからさ、覚悟はしておいてよ」


 ニヤ、


 注意しておかないと、汚らわしい笑いが自然に浮かんでしまう。


 そんな俺の表情を見た九条は一瞬後ろに後ずさる。


「そんなに怯えた顔しないでよ。俺がアンタで見たいのは恐怖に歪む顔じゃない。自らの行動を後悔する顔だ。まだ、アンタは俺のせいで剣道部が壊滅したと思ってる。だけど、そうじゃない」


 九条が後ずさった分俺が前に歩く。


「地面を耕したのは、もしかしたら俺かも知れない。花を咲かせたのは神楽なのかも知れない。でも、種を撒いたのはお前で、水を撒いて芽を出させたのもお前だ。悪いのは絶対に九条九詩菜。お前なんだよ」


 目を背けたいであろう言葉を真っ直ぐにぶつける。


「ち、違う。私は剣道部の事を思って!」


「違わない。その行動が善意か悪意かなんて今は関係無い。大事なのは、お前が俺を裏切って、その結果剣道部が壊滅した事実だけだ」


 ゆっくり、逃げ場を潰す。


 必死の言い訳を慈悲なく打ち砕く。


「ぜ、全部アンタが悪い。アンタのせいで! アンタのせいで!」


「神楽の様子がおかしくなったか? 剣道部が壊滅しちまったか? いいや、違うね。どのみち神楽と俺は戦う結果にはなっただろうけど、あんなふうに神楽が剣道部員を手にかける結果にはならなかった。その結果、責任を感じた神楽は剣道部をやめちまった。もしお前が裏切ってあんな展開になって無ければ、この戦挙のあとも神楽は楽しく剣道部に参加してたよ。深刻な意味での剣道部の壊滅にはなって無かったよ」


 俺が言葉を連ねるほど、九条の顔が青ざめていき、手に刀を持っているというのに、頭を抱え始めその場に女の子座りをしてしまう。


 そんな九条に無防備に歩いて近づいていく。


「ちょっと、天下くん。危ない」


「葵ちゃんは、九条のお隣の剣道部員を片付けてくれない? 九条は任せて」


 一応、薄気味悪くない笑みで葵ちゃんに頼んだはずだけど、上手くその表情ができてたかどうか怪しい。


 でも、葵ちゃんは頷いて、歩く俺を追い抜いて、剣道部員に斬りかかっていった。


「わ、悪くない。悪くない。私は悪くない。アレが、アレが最善だったはず」


 九条はブツブツ、呟く。


 だんだんと、俺が望んだ表情を浮かべ始めていたが、自分が壊れないように、最後の一線は超えずに俺に責任をなすりつけようとする。


 あとひと押しの九条の目の前に俺は立つ。


「そ、そうだ、全部全部、神乃が、神乃天下が悪い。アンタが、アンタが!!」


 祈るように、すがるように、自分を救う言葉を求める九条。


 そんな彼女に俺は悪魔のように微笑みながらこう答えた。


「いいや、俺は悪くない。悪いのは全部九条九詩菜、お前だよ」


「いやぁ、いや、いやだ、やだ、やだ、やだ、やだぁ、いやだ。あああああああぁぁあぁあぁ!」


 悲鳴を上げる九条。


 目には涙を浮かべ、頭を振り回す。


 綺麗な黒髪が乱れ、涙に張り付いて酷い有様だ。


 その様子をしっかりと観察する。


「これで、宣言は実行。目標は達成。あとは、理想の実現だ。いいか九条。コレはまだ、始まりだ。まだ、完全に壊れるな。これから、仲間達とギクシャクした関係と、神楽を失った責任っていう、これからの学園生活を真っ黒に塗りつぶす絶望を抱いて生きろ。そして、綺麗にコワレテね」


 壊れかけの少女をしっかりと見つめながら最後に隠すこと無く笑う。


 無邪気な子供のように。


 そんな俺の顔を見て、九条が呟く。


「悪魔」


「悪魔だとしても、化物だとしても、目を覚まさせたのは、キミだよ」


 そして、彼女に向かって刀を振るう。


 そのまま横に倒れる少女を俺は受け止めることもせず、ただ、首輪が赤くなったことを確認だけした。


 振り向けば、葵ちゃんが立っており、近くに剣道部員も倒れていた。


「おつかれ」


 葵ちゃんにねぎらいの言葉をかける。


「あ、あそこまで、追い詰めなくても!」


 が、無視してさっきの行為を糾弾される。


 別段、九条とお話してただけなんだけどね。


 相手は泣きまくってたけど。


「ゴメンネ。無理なんだよ。病気なんだ。裏切りだけは、どうやっても許せないんだよ」


 諦めにも似た苦笑で話しかけるけど、葵ちゃんは納得した表情をしていない。


「話してくれない? 九条九詩菜と何があったのかと、その病気について」


 その言葉は決して好奇心から聞きたがっているのでは無いというのはわかった。


 もしかしたら、力を貸してくれるために話を聞きたがってるのかもしれない。


「九条九詩菜と何があったのかは、教えるよ。でも、病気ってやつについてはまた今度でいい? こっちにも、心の準備がいるんだ」


 でも、破壊願望について今は話したくなかった。


 いつかは話すよ、と自分に言い訳しながら、あと一歩、パートナーに自分を晒せなかった。

割りと早めにかけました。


九条九詩菜も倒したね。やったね。


このまま一気に優勝だよ。天下くん


ただ、やり方がえぐいけどね。


次は新キャラとの勝負といこうかな。


天帝サイドのお話でも入れようかな。


ご意見ご感想、感想がもらえるアドバイス等お待ちしております



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