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学園戦記  作者: 藁部 御門
戦挙編
34/50

鬼ごっこ 3

 突如俺がこちらを振り向いたことに驚いた様子ではあったが、構わずその刀を振るう。が、鞘でギリギリ受け止める。


「まさか、止められるなんて」


「……どういうつもりだよ。まだ、同盟は続いてるはずだろ。恩を仇で返す気か?」


 初撃を受け止められると、九条が後ろに飛び距離をとる。


 俺が睨みつけると 大して悪びれる様子もなく、冷徹な目でこちらを見返される。



「どうして分かったの?」


「さっきまで普通に話をしてた人の気配がいきなり消えたら俺じゃなくても警戒するよ!」


 怒りが募る。感謝こそされ、攻撃される覚えはない。


「危険なのよ。アナタは、私達剣道部にとっても、弐宮神楽くんにとっても。さっきの戦いを見てようやく、弐宮くんがアナタに執着する理由がわかったわ。のらりくらりと構えているようで、ホントはとんでもない化物よ」


「だからって、裏切るなよ。俺は裏切るのは得意でも裏切られるのは苦手なんだよ。約束は守ってよ。弱者のお願いだよ」


「黙れ! 神乃天下。オマエは私がここで刺し違えてでも倒す」


 はぁ、面倒くさい。


 確かに俺は鬼束と比べればタイプ的にやりやすい方ではあるだろう。


 九条の勝機も十分にある。


「チッ! いいよ。わかったよ。ほんの少し主人公になってみようとしたらコレだよ。俺らしくやらしてもらうよ」


 言うか見たかで、今度は俺から突っ込む。


 鞘に収めた刀の柄で相手の眉間を突く。


 鞘に収めたまま突っ込んできたので、居合だと思ったのか、九条の反応は遅れ一瞬の虚をつかれるが首を捻って躱される。


 九条は躱しながら刀を振るが、その一撃はポケットから取り出した俺の拳銃で受け止める。


「なっ!」


「いちいち驚くなよ。別段大したことしてないだろうが」


 そう言って近距離で拳銃を六発全て撃ちこむ。


 慌てて距離をとって弾こうとするが、お互い刀で斬りつけ合う距離のため三発ほど胸に直撃する。


「残念だな、詠唱が間に合うなら色々やれることあったんだけど。撃ち切ったのもまずかったかな」


 胸に銃弾が当たった九条は若干息が苦しそうな格好をとる。


「そんなに痛そうな演技するなよ。さっきいや程俺も銃弾喰らったんだよ。それぐらい気合で元気そうにしなよ」


 薄ら笑いを浮かべながら九条との距離を詰めていく。


 向こうは刀をぎっちりと握ってこっちを警戒しているが、こちらは『紅蓮』は鞘に収めたまま地面に引きずるように近づいてく。


「――さっきさ、俺と刺し違えてでも倒すって言ったよね。その覚悟、カッコイイね。やってることは同盟者を不意打ちで倒すっていう最低な行為なのにさ、自己犠牲の覚悟で望めば許されると思ってる。カッコイイよ先輩。だから、久しぶりにコワしてあげるよ。まずは、宣言だ。九条九詩菜。アンタは倒す。次に目標だ。神楽のパートナーの名前を吐かせる。そして最後に理想だ。アンタが独断で行動したことで、俺に捕まり、神楽のパートナーがバレて、俺が神楽のパートナーを倒すことで剣道部が壊滅する。そのことに責任を感じて今日の戦挙を終えていく。そうして、剣道部に参加するたびに罪悪感を感じて、自分の居場所を失う。うん、実にチープなシナリオだ。……それでは幕を上げましょう。壊れろ、コワレロ、こ、わ、れ、ろ」


 グルグルと渦巻く怒りが、扉を開けて、昔の自分を取り戻させる。イカレタように頭に響くことばを口から吐くたびに昔の自分を思い出す。


「ああ、一応最終警告だ。今なら謝罪の言葉と自身の敗北宣言で許してあげるよ。うん。そこで手を打とう」


 真っ黒に塗りつぶされていく感情に僅かに白の絵の具を垂らす場所を作っておく。


 ここが、限界だ。


「頼むよ、謝れよ。詫びろよ。泣くなよ。怯えるなよ。そんな目で見るなよ。向かってくるなよ。武器を置けよ。頼むから俺を救ってくれよ!」


 俺の願い虚しく、九条九詩菜はこちらに刀を上段に構え、叫びながら近づいてくる。


 上段からの一撃は左手で鞘に入った刀で受け止めようとする。が、振り切ると思われた刀は俺の鞘に触れる前に後ろに引き、突きへと変化する。


 狙いは胴体。


 さっきまでの鬼束と違いその一撃は鋭く簡単には受け止めれそうもない。


 ならば、


 右手を突きの切っ先へと合わせる。


 鋭い痛みと肉に金属が食い込む感触がする。


 それと同時に何故かダメージの無い左手が『紅蓮』を持っていられないほど、力が入らなくなり、だらりと垂れ下がった。


「私の『具現』、『封印指定ハンディキャップ』は一撃を与えた瞬間体の部位を封じる。コレで勝負は決まったようなも――」


「ああそう。良かったね」


 俺は喜びを見せる九条の顔を右足で蹴ろうと振り上げる。


 驚いた九条も刀で防ごうとするが、その刀を俺が傷ついた右手で完全に抑えこむ。


 止む無く、攻撃を躱すために自身の刀を手放し後ろに飛んで蹴りを躱す。


「大丈夫。得物を手放して。それで、俺に勝てる? それとも一旦逃げて得意の気配遮断でもう一回不意打ち狙う? それとも、左手が使えない俺に徒手空拳で挑む? まあ、どれを選んでも九条さんが有利だと思うから気軽に、だけど、後悔はしないように選んでね」


 ああ、こびりついたように笑いが取れない。


 右手は痛くて血が出てる。左手はなんにも感じない。まるでおもりがぶら下がってるみたいだ。


 どう考えても不利なのは俺なのに、楽しくてたまらない。


 有利なはずな九条の顔が不安と恐怖で歪んでるのが嬉しくてたまらない。


「アナタはいったい何なの? さっきまでのアナタと本当に一緒? 今のアナタは、”壊れてる”」


「壊れてるってのは酷いな。せっかく、直ってきてたのに、壊したのはオマエじゃないか。悪くない。ワルクナイ。俺はわるくない。全てキレイに終わるはずだったのに。ダメなんだよ。裏切られるのだけはだめなんだよ。頑張って、引き戻れる部分も作ったのに、全部全部オマエはぶち壊す。もういいよね。壊しても。覚悟はいい? 俺はできてる」


 そう言って俺が一歩踏み出した瞬間、


「いや、ぁぁ」


 九条が背中を向けて逃げ出し始めた。


 どうやら九条は鬼ごっこして遊びたいらしい。


 ただお遊戯のそれと違うのは、俺が九条にタッチしても鬼は俺のまま変わらないってことだ。


 それを見た俺は躊躇いなく全身を脱力する。


 そしてそのまま、右手に九条の刀を持って『天剣』で追いかける。


 左手は使えず、居合でも無かったためいつものスピードとは程遠かったが、あっさりと九条に追いついた。


 追いつくと、走ることで浮いている九条の足を払う。


 あっさりと地面に倒れこむ九条。


 その隣に座り、髪の毛を掴む。


「ファーストクエッション。剣道部は現在何人?」


「し、知らない!」 


 怯えた九条の顔を見て俺は微笑むと、そのまま地面に九条の顔面を叩きつけた。


「ぐぎゃっ」


「オイオイ。何で知らないんだよ。ちゃんと教えてよ。あんまり、女の子の顔を痛めつけるなんて行為は好きじゃないんだよ」


「知らないのよ本当に! 私達剣道部はグループを二つに分けて行動してたから、片一方の状況はわからないのよ」


 なるほどね。多少信じてあげよう。


「セカンドクエッション。弐宮神楽のパートナーは誰? 主将?」


「……」


「無言だとわかんないじゃないか」


 もう一度地面に顔面を押し付ける。


「ぎゃっ!」


 とても可愛くない、小動物の悲鳴のような声で九条が鳴く。


「さっさと教えてよ。言っとくけど、もう妥協案は無いよ。そうだね。このあとせいぜい、俺が神楽とかに返り討ちに遭うことを期待しときなよ」


「――! 負けま――うーー」


 敗北を宣言して、抜けだそうとした九条の口に右手を突っ込み敗北宣言を拒否する。


「だから、その時期は終ったんだよ。それと、九条さんの『具現』を解いてよ。左手が使えないと不便で仕方ない」


 声をかけても俺の左手は動かない。


「強情だな。ていうか、『具現』解いてくれないと顎の骨外すよ?」


「うーうー」


 喚くばかりで一向に俺の左手は動かない。


「もう諦めなよ。どのみち、九条さんは詰んでるよ。あとは、神楽に期待して、全て諦めて後悔だけしときなよ」


 そうやって拷問に近い行為を続けていると突然放送用のチャイムが鳴り響いた。


「えー、みなさん。佳境を迎え始めている戦挙でお知らせです。まず、ジョーカーですが、少々早いですが退場となりました。そして、現在残っているのは丁度五十人。二十五組となっております。間もなく個人戦へと移行するのでその時は再び連絡致します」


 ヤバイ。


 もう時間がほとんど無い。


 俺が神楽を叩くなら、個人戦に入る前にパートナーを倒すことで達成したい。


 直接対決だと、『紅蓮』を解放して勝てるかどうかのレベルだ。


「さぁ、時間が殆どなくなっちゃったよ。九条さん。最後にホントに教えてくれない?」


「うーうーうー」


 反抗的な目をこちらに向けた瞬間、九条からこれ以上の進展が無いと考え俺は口から手を抜き、頭を抑えて、そのまま地面に叩きつけ気絶させようとする。


「やめなよ天ちゃん」


 突然かけられた懐かしい声と後ろから首に添えられた刀が今まさに叩きつけようとしていた手を止めた。


 後ろを振り向かなくても、その声と呼び方で誰がいるのかわかった。


「……神楽か。なんか、随分と久しぶりだね」


「ボクも随分となつかしいよ。そうやってコワすことを楽しんでいる天ちゃんと会うのは」


 刀をつきつけられた状況でお互いに動かず、様子を伺う。


 そこへ、地面に叩きつけられかけていた九条が会話に割り込む。


「弐宮くん。今すぐ神乃天下を倒して! そいつは化物、いや、悪魔よ」


「落ち着いてよ、副主将。ボクは取り敢えず現状の把握に努めたいんだ」


 そう言うと首にかかった刀を一度引く。


「話してくれるよね。天ちゃん」


「いいけど、一言言うと、俺はわるくないぞ。オマエのとこの副キャプテンが同盟関係を無視して俺を不意打ちしてきたのが原因だ」


 向こうは刀を外したけれど、こちらは九条の頭を放さない。いつでも、顔面を叩きつける準備をしたままである。


「そうなんですか? 副主将。ちなみに、正直に答えてくださいよ」


 いつもの先輩に対する優しげな声のトーンでは無かった。真剣の如く心を切り裂くような、一切の冗談を許さない声のトーンだった。


「そ、そうだけど。だけど、コイツは絶対倒せる内に倒しておかないと!」


「副主将、まずは天ちゃんの左手の封印を解いてください」


 九条九詩菜の声は無視して冷徹に指示だけを与える。


 ギリリ! 


 歯ぎしりする音が聞こえたが、そのあと俺の左手に感覚が戻る。


「次は天ちゃんの番だ。副主将を押さえつけている手をのけて」


「断る!」


 ハッキリと言い切る。


「神楽、悪いけど、コイツは許せないんだよ。無理なんだよ。最低コイツを脱落させないと」


「天ちゃん、言いたくないしこんな形でやりたくないけど。その手を放さないならこの瞬間から敵同士だ」


「オイオイ、神楽。オマエまで俺との約束を破るのか?」


 内心は穏やかでは無い。両手は動くようになったものの、手元にあるのは九条の刀だけで、『紅蓮』は神楽の近くに転がっておりどうしようもない状態だ。戦えば負ける自信がある。


 でも、笑みは絶えない。


「破りたくないよ。でも、一応ボクも剣道部の人間だからね。……一応他の案でいいなら聞いてあげてもいいよ。個人戦に移行した後もボクと同盟関係でいるとか」


 さて、本当は今すぐ九条の頭を叩きつけたいんだが、どうにもここいらで手を打たないと俺がヤバイ。


「……一応聞いてみたいんだけどさ、神楽オマエ誰と組んでる?」


「主将だよ」


 問いを聞いた瞬間に、俺の考えを読み取ってたのか、目でこちらに笑いかけながらあっさりと答えを返す。


 どうやら俺が個人戦に移行する前に襲撃してきても気にはしないらしい。


「弐宮くん! そいつ、今度は主将を狙ってくるわよ」


 九条が声を上げる。


「大丈夫ですよ。もうすでに個人戦移行間際なんだから。気をつけてればいい」


「だってさ、九条先輩」


 俺はようやく九条の頭を放し、そのまま離れる。九条の刀はその場に転がしたまま。


 そして、丸腰のまま『紅蓮』を回収しに神楽に近づいていく。


「昔の天ちゃんの雰囲気なくしてなかったんだね。最近の天ちゃんも好きだけど、やっぱりあの頃みたいな天ちゃんの方が戦うなら嬉しいな」


「しらねーよ。俺はあんまり神楽と戦いたくないの」


 そうやって、地面に転がった刀を拾う。


「それじゃあ、天ちゃん。また後でね」


「もう会いたくないよ」


 別れの言葉を告げると神楽は九条の近くまですぐさまかけより、その場から離脱していった。




 さて、時間も少ないことですし、上がったままの幕を下ろしにいこうか、九条さん。

一気に3つも上げてなんかスイマセン。


色々これから更に忙しくなりそうなので、更新がドンドン遅れるかもしれないですが許していただけるとありがたいです。


ついに、主人公の本性が現れましたね。


こんなヤツです。

 

イカレテます。


やりすぎた感はありますが、書いてるこっちはかなり楽しかったです。


続きは、わりと早めに頑張ります。


 もしかすると神楽サイドの話が入るかもしれません。


次々回ぐらいに個人戦に入るといいな


ご意見ご感想お待ちしております。

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