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学園戦記  作者: 藁部 御門
戦挙編
26/50

幕間 王から神へ2

「その引き金を引くものに幸運を『神装展開』『トリガーハッピー』」


 彼女が詠唱とともに引き金を引いた瞬間、校舎全体が揺れるほど、爆発的に気が高まり通路そのものを削りながら凄まじい気の弾丸がこちらに向かってきた。


 校舎は揺れ、窓ガラスは例外無く吹き飛んでいき、床の塗装は全て削れていきながら真っ直ぐに弾が飛んでくる。


「答えを言おうか、場所を変えたかったんだよ!」


 得意げに言い放つ鉄筒は銃を蒼崎に向かって構える。『トリガーハッピー』の一撃を止めようとしたならばすぐさま防御が薄くなるであろう背中を狙うつもりだった。


 挟撃という絶体絶命な状況へ蒼崎を追い込んだ鉄筒と寿だった。だが、蒼崎はすぐさま、迫り来る一撃から目を背けた。そして、一言、


「恋、悪いけど頼んだ」


 軽い口調であっさりというと、まるで、彼の心を読んでいたかのように素早く双鐘が反応する。


「閉じた扉を開くのは、私の意志か運命か『具現』『ゲート』」


 自身に向かってくる恐らく直撃したらただでは済まない一撃をあっさりと自身のパートナーに任せる。


 鉄筒も双鐘が詠唱を始めた瞬間双鐘に向かって銃を撃とうとするが、行動そのものが蒼崎の後手を踏んだ。


「どうやら、僕の心は読めてないね。今の反応は常人と同じレベルだ。やっぱりその目で視た未来が見えるのかな」


 あっさりと間合いを詰められ、双鐘目掛け構えた銃を蹴りで弾かれる。


 その間に詠唱は終了し、蒼崎と鉄筒に迫った寿の一撃の前に廊下を覆うような門が現れる。


「オープン」


 双鐘の声と共に門が開く。その中は深い深い闇であり、どこにつながっているのかも分からない。


 そんな中に気の弾丸は吸い込まれるように飲み込まれる。


「クローズ」


 全てを飲み込んだ瞬間門を閉じさせる。と同時に門そのものが消える。


 残ったのは床を削った爪あとと当たりに漂う埃のみだった。


「突然仕事を振るのはやめてくれませんか、会長。私にも心の準備があります」


「悪いね。ちょっとあのクラスの攻撃は僕の『神風』じゃ、しんどいからね」


 先程まで、確かにピンチだったはずの蒼崎と双鐘だが、あっさりと障害をパスし二人で楽しそうに話している。それに対し、鉄筒側は二人共呆然としている。


「おいおい、そんな目をしないでよ。まだ、負けたわけじゃないだろ? この世には、奇跡も魔法もあるんだから」


 呆然としている目の前の鉄筒に向かって教訓のように語る蒼崎。


 興が乗ったのか、話を続けていく。


「面白い話をしてあげるよ。この世には奇跡も魔法もある。けれども、無くならないものがあってね。それが絶望さ。でもね、人々は絶望があっても足掻くことをやめないんだ。何でだと思う? 絶望を確かめる希望があるからだってさ。だからさ、お互い頑張ろう」


 自分自身にも言い聞かせるように優しさを込めた言葉ではあったが、それが鉄筒の気に触る。


「うるせえ!」


 始めは呆然と聞いていた鉄筒だったが、蒼崎の前で怒鳴る。


「何が『お互いがんばろう』だ。絶望なんか経験したことねえだろうがよ。それに何より、俺は絶望なんかしちゃいねえ。足掻くことだってやめちゃいねえ。余裕こいて講釈たれたことを後悔させてやるよ」


 叫びながら銃を蒼崎に向ける。ほぼゼロ距離で発射される銃弾。けれども、その銃弾は彼の体の表面に触れること無く地面へと落ちていく。


「畜生が!」


 自らの目で分かりきっている未来を何度も何度も鉄筒は繰り返す。なんど殴っても壊れない壁を叩くように。


 銃弾を全て吐き出し、空になる弾倉。


 それと同時に蒼崎が呟く。


「敗北宣言するかい?」


「うるせぇって言ってんだろ。黙ってやられろ!」


 意地になっているのか、敵の眼前で鉄筒はリロードする。


 その間敵が攻撃してこないのは、彼の『具現』でわかってはいる。そして、リロードしたからと言って結果が変わらないことも。


「畜生、畜生、畜生が!」


 鉄筒は右目を閉じる。分かりきった結果しか教えない自分の『具現』に嫌気が差しながら。本当は銃を撃ち続けても自分たちが勝てる可能性がないことを知っている自分を恨みながら。それでも、敗北を認められないから銃弾を撃ち続ける。


 強く右目を閉じると今度は右目が段々痛みを訴える。


 鉄筒自身がわかっている。要は『具現』の使いすぎなのだ。すでに序盤で派手に解放したままの状態で戦っていたし、今回の戦いでは『放出』も使い、自身の気を使いすぎている。限界がすぐそこまで来ていた。


「もうやめた方がいいよ。限界みたいだよ。『具現』の使いすぎで倒れるとあとで大変だよ。反動が来るから」


「うるさい!」


 助言も何も聞く耳を持たなかった。


 少なくとも蒼崎はこのまま生徒を潰すのは忍びなかったため、彼に近づこうとする。


 遂に攻撃を仕掛けられると思った鉄筒は閉じていた右目を開ける。


 けれど、先程までと違って蒼崎の行動の先が見えない。


「あれ?」


 と同時に右目を開くとドンドン痛みが大きくなり、それに比例して周りの景色がスローになっていく。


「ぐっ!」


 思わず痛みで目を閉じる。すると元通り、世界の音も蒼崎の動きのスピードも元に戻る。


「オイ、大丈夫? それに、今の目の色!」


 突然、蒼崎が驚きの声を上げる。痛みでボウっとてきた頭が言葉を聞き取る。


 何、眼の色がどうしたっていうんだよ。


 当事者には見えないが、鉄筒の目は先程までの赤い目では無かった。

 

 輝く黄金の瞳を宿し、その眼で目の前の蒼崎を睨んでいた。 


 もう一度、痛みに耐えながら、右目を開ける。それと同時にゆっくりと流れ始める世界。と同時に鉄筒の頭の中に言葉が浮かんでくる。その感覚は、初めて『具現』を使った時に近かった。


「飛んでる銃弾は止まっている。『昇華』『神眼』」


 そう唱えた時、眼の痛みは止まった。それと同時に世界全体が静止した。


 飛んでいる銃弾も、舞い上がった埃も、驚いた表情の蒼崎も、自身の後ろに構えている双鐘も、遠くに絶望したような顔で座り込んでいる寿も全てが呼吸もせず止まっている。


 完全無音の完全停止な世界。その中で鉄筒はさっきと同じように銃の引き金を引けることに気付いた。


 自身の体が動き取り敢えず両手に握った銃の引き金を引く。銃声が無音の世界で響き、銃弾は目の前の蒼崎に当たる前に止まった。


 それと同時に驚いていた鉄筒もしなければならないことを思いだす。


「今なら逃げれる」


 取り敢えず、どうして止まっているのかどうかはおいておいて、急いでやらなければならないのが、この場からの離脱である。現状では恐らくもう蒼崎には敵わない。ならば、次の機会へ繋げなければいけない。


 そう思い、すぐさま走り始める。


 動いても微動だにしない蒼崎の隣を走りぬけ、寿の所まで行く。


 そして、動かない寿を抱き上げたところで、再び右目に痛みがやって来る。それと同時に徐々に止まっていた世界が動き始める。最初はスローに。


 その痛みと共に思い出したかのように鉄筒は蒼崎に銃を向ける。


「最後のプレゼントだ!」


 風の壁がある限り意味のない銃弾ではあったが、煮え湯を延々と飲まされたこの戦いのせめてもの抵抗として、ただ逃げるのでもどうしても一発与えたかった。その、精一杯の反抗を行ったあと、鉄筒は痛みに耐えかねて右目を閉じる。するといつも通りに一分一秒が刻まれ始める。


 だが、お構いなしにとりあえず、近くの階段を飛び降りる。


 追いかけられればほぼ負けが確定だったが、現状把握をしようとして、立ち止まってくれることに期待したのだ。


 二分の一のギャンブル。それは鉄筒の勝ちだった。どうやら、相手はすぐさま追って来なかった。


 大急ぎで階段を降り、一階で息を整え気配を探るが追っている気配は無い。けれど、安全をきすならすぐさま離れなければならない。


 そう思って寿を抱えながらさらに一歩を踏み出そうとするが、同時に右目から全身を貫くほどの激痛が走る。


「ぐっ! くそ」


 そのまま寿を降ろして、膝をつき右手で右目を抑える。


「大丈夫!? ジュウジ」


「ああ、多分大丈夫だから。すまないけど、肩貸してくれ。できるだけ今のうちに逃げたい」


 目を抑えながら苦しそうに呟く。


 その言葉に痛々しそうに頷いて、言われた通り鉄筒に肩を貸す。


「ごめんな、ユキ。負けちまったよ」


「まだ、負けじゃないよ。最後に勝った人が勝者だよ。まだ、私達は負けてはいない」


 ボロボロの二人はゆっくりと歩いて行く。絶望の中を



◇◇◇

「追いかけないのですか?」


「……ネズミを追い詰めて、猫に噛み付かせたことはたくさんある。でも、ネズミはいくら追い詰めても、ネズミのままだと思ってた。半年前までは。まさか、『昇華』に目覚める素質がある人間がこの学園にいると思わなかった。レアなんてレベルじゃない。いうなれば国のトップになれるレベルだ」


 興奮しながら喋る蒼崎に向かい面白くなさそうに双鐘が反論する。


「でも、まだ鉄筒銃治の『昇華』の能力がわかってもいないのに空くんと同じレベルとか」


「いや、大体わかる。アイツの力は恐らく、時を止めてる。初めは超加速とかかなと思ったけど、それじゃあ、銃声が聞こえてないのに銃弾が飛んできていることの説明がつかない。問題は能力が空間的な時間の停止か、世界そのものの時間の停止か。ついでに言えば、連続して『昇華』が使えるのか? 何秒止めれるのか?」


 敵に逃げられたというのに、嬉しそうに鉄筒の覚醒を解析しようとしている。


「楽しいね、恋。掘り出し物や気になるルーキがワンサカ出てくるよ。コレなら、今回は期待できるんじゃない?」


「あんまり、強い敵が出てくることに喜ばないでください。自分が負けますよ」


「それすら、楽しいよ。恋。負けなんて些細な事さ。今の僕には目標がある。それのためなら、全てを受け入れるよ」


 笑いながら、鉄筒が逃げた方向とは反対に歩き出す。


「……やはり、追わないんですね」


「もう一度戦って、無理に『昇華』を使われて壊れちゃ困るでしょ。ただでさえ、もう彼は限界だった。本当なら、気絶させてリタイアさせてあげるのが一番いいんだけどね。あの感じじゃ、僕が近づいただけで、無理をしちゃう。なら他の奴に任せるさ」


 歩き出す蒼崎に双鐘が付いて行く。無傷のまま戦いは終わったが、勝利とは言えない決着ではあった。


「相手に逃げられてこんなに楽しいのは初めてだ」

遅くなってスイマセンでした。


中途半端で区切って読みにくくてスイマセン。


遅くなった言い訳は……やめときます。


ご意見感想待ってます。


次は再び主人公です。


頑張ります。

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