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学園戦記  作者: 藁部 御門
戦挙編
21/50

幕間 愚者のやり方

「だから、隠れながら戦うのは嫌いなんだって!」


 周りで派手に響く轟音に負けぬように、鉄筒銃治は大声でパートナーの寿幸に話かける。


「でも、私は連戦とか、乱戦とかに対応できる能力じゃないよ」


 彼女の能力は限定的である。まずはじめに、使用する武器が『トリガーハッピー』という曰くつきの武器でなければならない。次に彼女の具現である『グッドラック』を利用し、その銃を使用するための願かけを行わなくてはいけない。基本的に彼女はその願を自身の能力で補正がきく確率事象に限定し、コイントスの連続成功などで対処している。例えば、百回連続でコインの表が出れば、銃の威力が上がる、といった風にだ。だが、トリガーハッピーは願を貯めることはできても、分割して使用することはできない。そのため、強力な一撃を発射すれば、次の一撃を放つまで寿は願をかけ続けなければいけない。


 そのため、連続して戦うことと一撃で仕留めきれなかった場合のことを彼女は恐れ、できるだけ安全な方法として、隠れて時々近づく人間を倒すことを銃治に提案したのだが、彼はあっさりと却下した。


「大丈夫だって、俺は逆に乱戦とかが大好きなんだよ。それに、序盤は俺に任せておいてくれよ。ユキの能力は本当に強い奴が残る後半に思う存分使ってよ」


「序盤から強い人に当たったらどうするのよ」


「そん時は全力で戦うだけさ。シンプルイズベスト。そんなもんさ喧嘩なんて」


 脳天気に笑いながら銃治は一歩を踏み出す。


 両手にはオートマチック拳銃を持ち、楽しそうに指に引っ掛けくるくると回している。


「さてさて、我が道の前には鬼が出るか蛇が出るか」


「ちょ、ちょっと待ってよジュウジ! そんな風に歩くと危ないよ」


 周りの教室では、悲鳴と怒号と窓ガラスが壊れる音が響く、そんな廊下を我が物顔で行進するが、その行進は向こう側から来た、道着と腰に刀を差した連中と出会うことであっさりとストップした。


「そこの拳銃を振り回してる馬鹿。危ないから、さっさと棄権しなさい」


 その集団の戦闘に立つリーダ格に見える女性がこちらに向かって話しかける。


 女性は同じ学園の生徒とは思えないほど大人びており、黒髪が艶やかに光っていた。


 そんな彼女に話しかけられた銃治は辺りを見渡す。けれど、そこには寿以外誰もいない。


 どう考えても話しかけられたのは自分か寿である。


「ハイ!? 俺のこと?」


「そうよ。おもちゃを手に入れて楽しいのはわかるけど、時と場所を考えて遊ばないと怒られるわよ」


 諭すような言葉。かなり安っぽい挑発ではあったが、銃治はあっさりとそれに乗っかる。


「ヘイ、大和撫子。あんまり温室育ちさせすぎると貧弱な子になっちゃうんだぜ。それに時には、大人に銃の素晴らしさを教えてやらないとな。いつまで経っても剣が至高と考えてる老害も子供と触れ合わなきゃ、それに気づかねえ。なあ、剣道部」


 安っぽい挑発で返す銃治。始めは馬鹿の戯言だと、軽く流し聞いていた連中だったが、最後の一言。最後の剣道部という言葉に、十数人全員が激しく反応した。


「私達を、竹刀を振り回している連中と一緒にするな。私達は真剣部。より実戦的に戦うことを考えて設立した部よ」


 真剣部の成り立ちは、剣道部があくまで竹刀を使って訓練することに反発した一部の部員が立ち上げたものである。普段から、刃こそついてはいないが刀で実践的にトレーニングを積んで訓練している。その甲斐あってか、立ち上げからずっと、剣道部の部員よりも、序列がトータル的に上であった。しかし、ここ数年は剣道部側の方が、序列が上という状態が続いており、現部長の姫松麗華ひめまつれいかのコンプレックスとなっていた。


「おいおい、そんなに怒るなよ。なんか、コンプレックスでもあんのかよ」


「普段から、竹刀で競技目的で遊んでいる連中といっしょにされたくないだけよ」


「あっそう。なら、俺も一言言っとこう、さっき銃を玩具って言ったの取り消せよ。」


「あなた、どうやら新入生だから知らないみたいだけど、この学園で銃を使うってことは無能だって言って回るようなものよ。この学園の学生に銃なんてほとんど通用しない。一人に対して数人で機関銃を斉射してやっと効果があるぐらいよ。それが、たった二人で戦うなんて」


「だからこそだよ。あんたら、そんなに馬鹿にして、あげくに玩具扱いした拳銃にやられるんだぜ。どうしようもなくカッコ悪いじゃん。せめて、『剣に対して銃とは卑怯なり』ってぐらい言っとかないと、体裁を保てないぜ」


 自信満々に真剣部の部長に向かって言うと、姫松麗華は苦笑し始める。


「馬鹿に付ける薬はないというのは本当のことなのね」


「老人は頭が硬いってのはホントのことみたいだな」


「「なら」」


「勝負といきましょう」

「喧嘩しようぜ」


 お互いに叫んだ瞬間、真剣部の連中は、銃治に向かって走りはじめる。


「ユキ、少し離れた場所で隠れておいてくれ」


「えっ! あの数を一人でやるの? 無理だよ、十四人もいるよ」


「大丈夫だよ。それに、リーサルウェポンを使うには早すぎるしな」


 二人が会話している最中も問答無用で距離を詰めてくる。


「まあ、パートナーを信じてみろって。ここで負けたら、今日の晩御飯奢ってやるから」


 そう言うと、銃治も拳銃をガンスピンさせながら、真剣部に向かっていく。


「さあ、レッツパーティーってやつだ」


 まずは挨拶とばかりに二丁拳銃が火を吹き、銃弾が数発飛んでいく。


 けれど、真剣部の連中は全く慌てることなく、手にした刀で銃弾を叩き落す。


「そう、この学園の人間は銃弾を叩き落とせるレベルの人間がほとんどなの。だから、遠距離で銃を撃ってもただの時間稼ぎにしかならない」


「アンタさ、少し勘違いしてるぜ。あんたらが銃弾を叩き落とせるのはあくまで、一定距離離れていて、かつ、狙撃手の手元に注目している時だ。つまり、あんたらは銃弾が発射されるのを見てから叩き落すんじゃなくて、銃口と指の動きで銃弾が飛ぶタイミングに合わせて刀を振るってるだけだ」


 銃治は腰から空中に向かって、物を放り上げる。


 一瞬、その投げられたものが何なのか見極めようと、数人の部員が目線を離す。それを見逃さず、銃治は敵に向かって走りながら銃弾を放つ。


 パンパンパン!


 銃声が校舎内に響く。


「ぐっは」


 目線を離した真剣部の腹と顔に弾が命中し、呻き声を上げる。


「馬鹿。目を離すな。近づいてくるから、しっかりと対処しろ」


 姫松が大声で叱咤し、近づく銃治に備えさせる。


 この学園で使用許可が出ている銃弾は当然ながら実弾ではない。当たっても、ボクサーの強烈なパンチ程度の威力しかない。それも、この学園で銃が軽視されている理由の一つである。


 当てるのに近づかなくてはいけないという苦労、当てても一撃で倒せないというデメリット。そして、致命的なリスクがもう一つある。


「あまり、近づくな。余計なダメージをもらう必要は無い。リロードの瞬間を狙え!」


「残念。もう十分近づいた!」


 銃治は敵との距離を詰めるため、防御を考えず銃を乱射しながら飛び込んだ。


 まさか、拳銃使いが自ら飛び込んでくるとは思っていない真剣部は一瞬怯む。


 振ればすぐさま刀で斬れる距離。


 必殺の間合いであるのに、直前まで距離を取ることを考えていた頭は真っ先に回避を選択する。


 けれど、手を伸ばせば届く距離で射程だけはとてつもなく長い銃という武器に対して後ろに下がろうとするのは最も愚かな行為だった。


「行くぜ! ロックンロールだ!」


 まるで踊るように、銃弾を四方八方にばら撒く。完全に不意を突かれた真剣部の連中は銃弾を面白いようにまともに受けていく。


「ぎゃぁぁぁ!」


 一撃で気絶しない威力が逆にこの場合だと不運である。強力なパンチを数秒で何発も連続で喰らうのである。蓄積する痛みは辺りを凍りつかせる悲鳴へと変わっていく。


「い、痛い、痛いよ」


「ぐぇぇ」


 数人があっさりとその場にへたり込み。あまりの苦痛から意識を失った者の首輪から警告音がなる。


 その悲鳴と警告音に銃弾が直接当たらなかったものも思考が停止する。


 どうして、追い詰めていたほうがピンチになっているんだ。銃使いなんて一人じゃ何もできない無能じゃなかったのか?


 それまでの自分たちの常識を壊していく男が、好き放題暴れている現状をすぐには受け入れられない者たちは、ただ呆然と立っていた。


 だが、次に瞬間にその目は輝きを取り戻す。


 カチン。


 その音は悲鳴と警告音という喧騒の中であってもハッキリと響いた。


「ありゃ? 弾切れだ」


 銃を使うものの宿命であるリロードタイム。圧倒的な隙を生み出すこの時間が訪れたことを知った時、部員達は自らの手に刀があり、敵が首を差し出していることを思い出す。


「今だ! やれ」


 姫松の声で堰を切ったように、刀を振りかぶる。


「オーケー、じゃあ、次の曲に行くか!」


 銃治は器用に片手で撃ち切ったマガジンを地面に捨てる。


 そのまま、部員たちが刀を振り下ろす。


「ジュウジ!」


 遠くで寿が叫ぶ。


「心配すんなってユキ。大丈夫だって」


 寿の声を聞いて、笑いながらつぶやくと眼前に振り下ろさせる刀を銃で受け払い、そのまま前方に転がる。


 そして、銃を逆さに向ける。そこへ、先ほど銃治が投げたものがマガジンが無くなり空洞になった部分へすっぽりとハマる。


「ジャックポットってやつかな」


 そのまま、後ろに向かってノールックで撃ちこむ。銃治の背中目掛けて斬りかかろうとしていた二人にジャストミートし、撃ち込まれた部分を反射的に手で覆う。


 そのまま銃治は振り向きながら足払いをする。


 撃たれてふらついていた二人はあっさりとその場に転がる。


 転がった二人の腹に向かい、銃弾を二発撃ちこみ、残りの連中に向かって銃を構える。


「さあ、お次はどいつだ?」


 自分たちがいつも卑下していた相手が、正面堂々向かってくる姿に真剣部の部員たちの士気は落ちていた。


 まだ、戦闘可能な者は半数以上残っている。けれど、このまま続ければたとえ勝ったとしても多大な被害が出るのは目に見えていた。


「みんな、下がりなさい。ここから先は私がやるわ」


「! ですが部長!」


「あなた達が下がってくれないと私も本気が出せないの。わかるでしょ」


「……ハイ」


 姫松はため息をつきながら後ろに下がる部員を確認し、ゆっくりと事態の元凶である男と対峙する。


「さっきはゴメンナサイね。少々言葉が過ぎたみたい」


「いいぜ別に。なめてる奴の舌の上に泥を塗りつけるのも楽しいからな」


 多少下品な笑いを浮かべながら、銃治は両手で拳銃をガンスピンさせる。


「一応、名前聞いておきましょうか」


「現在、序列最下位の鉄筒銃治だ。まあ、明日には一番になるつもりだけどな」


 姫松は銃治の序列最下位という部分に絶句する。


「嘘でしょ。いくら新入生でも序列最下位なんて、アナタぐらいならもっと上に」


「ああ、新入生が最初に序列を上げれる新入生歓迎会というなの殴り合いとかはたまたま参加してなかったからな。それに、底から這い上がる方が派手だろ」


「はぁー、この学園には変わり者が多いけれど、アナタも確実にその一員ね」


「かもな。てか、なんで俺の名前なんか聞く気になったんだ?」


「本気で戦う相手のことぐらい知りたいじゃない」


「なるほどね。了解した。ちなみにアンタの名前は」


「序列33位真剣部部長の姫松麗華よ」


 かなり遅めの自己紹介が終わる。


 と同時に姫松が呟きながら豪華な装飾が施された刀から刀身を抜き出す。


「花が美しいのは、すぐに散ることを知っていても咲こうとするから『具現』『百花繚乱』」


 刀を引き抜くと同時に辺りに無数の刃が漂う。


 一本一本はそれほど強力な気を感じ無いが、あまりにも数が多く容易に近づくことはできそうもなかった。


「『具現』持ちか。それじゃあ、やってみるか!」


 拳銃を姫松に向かって撃つ。その銃弾は正確に姫松の顔面目掛けて飛ぶが半ば予想道理彼女の『具現』が銃弾を防ぐ。


 銃弾はいくつかの刃を叩き折っていたが、無数に展開された刃全てを貫けるわけもなく力なく地面に落ちていく。


「なるほどね、防御にも使えるわけだ。しかも全方位型のシールドで、銃を使っている以上威力の上げようがない俺じゃあお手上げか?」


「もし降参してきても、今更私が許してあげると思う?」


「全然! 許してもらうつもりもねえしな」


 劣勢になっても、銃治は笑みを崩さない。


 恐らく確実に勝ちたいなら、後ろにいる寿とバトンタッチするのが一番であろう。それは銃治も理解している。けれど、その選択肢を取るつもりは無かった。


「なら、遠慮は無しよ」


 今度は一転、姫松が攻撃に回る。彼女の具現が銃治を包み込むように襲いかかる。


 銃治も取り囲まれたら終了だとわかっているので、必死に逃げる。と同時に反撃も試みるが、彼が撃った銃弾は姫松自身が刀で叩き落す。


「へっ、絶対絶命か。ホントはこんな所で使うつもりは無かったんだが、今更パートナーに泣きつけないしヤルか」


 逃げながら、左手の拳銃を一瞬空中に投げ、空いた手で左目を覆う。


「運命よ、そこをどけ、俺が通る『具現』『エンペラーアイ』」


 言い終えると同時に落ちてきた銃を左手で受け取る。


 先ほどまで左手で覆われていた銃治の目は真っ赤に染まっている。


 右目が常人と変わらないために、その真紅の左目は異様に目立った。


 と同時に彼の動きが変わる。


 先ほどまで、その場で姫松の『具現』を避けるために転がっているだけだったのが、立ち上がり一直線に姫松に向かって走り始める。


「やけになって勝負をかけて来たわね。返り討ちよ」


 先ほどまで展開している『具現』を前と後ろから挟み込むように動かす。


 目の前に刃が隊列を組んで飛び込んでくるが銃治はたいして慌てた様子もなく走り続ける。


 丁度刃と交差する瞬間銃治は廊下の壁を三角飛びのように蹴り、展開していた刃を飛び越える。


「そっちは、囮、本命は後ろ!」


 着地直後の銃治を狙い背後から真一文字に刃が襲いかかるが、銃治は全く後ろを見ずに、その場でバク宙する。まるでそのタイミング、その瞬間に攻撃が来ることを知っているかのように。


 後ろに全く注意を払っていなかった銃治に攻撃をかわされたことを驚き、次の攻撃が一瞬遅れる。その瞬間を狙い空中で回転しながら、銃治は前方の姫松に銃弾を放つ。


 慌てて刃で膜を作り防御に回る姫松。当然の如く銃弾はいくつかの刃を叩き折りながら地面に落ちる。


 けれど、着地した銃治は防がれることなど全く気にせず銃を撃ち続け、近づいていく。


「攻守逆転だ。ちなみに、次のターンに回すつもりは無いからな」


 そう言いながら銃弾は地面に転がっていく。


 時々リロードを挟むが、片手で器用にリロードし、リロードの合間はもう片方の銃で撃ち続け、絶え間なく銃弾を浴びせ続ける。


「いつまで、銃を撃つつもり、そっちが弾切れになって終わりになるのが目に見えるわよ」


「そうかい。まあ、それまでにアンタが負ける姿が俺には見えるけどね」


 そう言いながら、撃ち続けた銃弾が一発、無数の刃の隙間を抜けて姫松の頬をかすめる。


「えっ!?」


 撃ち続けた銃弾は一箇所に集中していた。


 その結果散っていった刃の隙間を縫って一発ほど銃弾が内部まで届いた。


 すぐさま、姫松は刃の薄くなった所を補強するが、内心にはかなり動揺が走っている。


 このまま、守り続けても勝てると思っていたが、それは甘いのかもしれないと考えなおす。


 どこかで攻守を再び逆転する必要がある。


 現在自らが張った刃の防御のせいで、直接は相手を視認できない。けれど、銃声から銃治自身の距離は近いことは想像できる。ならば、この防御に使っている刃を一斉に放てば攻守逆転は可能かもしれない。その時は当然防御は薄くなるがこちらには自分の刀がある。直接視認できるのであれば、拳が届く距離でもない場合拳銃程度なら防御できる。


 そう考えて一転して、自らを覆うようにまとった刃を弾き飛ばす。


「喰らいなさい」


 クラスター爆弾のように彼女を支点に一斉に刃が展開する。それと同時に彼女も身構える。恐らく敵もこの瞬間撃ってくるはず。ならばどれだけ早く相手の姿を捉えられるかが肝心になってくる。


 けれども、彼女の眼前には誰も立ってはいなかった。


 放たれた刃が壁に無数の傷を作り廊下の窓と天井の蛍光灯を割っていた。だが、真に傷付けたい男はどこにもいない。


 逃げたか?


 現状を説明できる言葉を探していく。


 逃げるとすればそこの窓ガラスからが最有力だが、果たして本当に逃げるだろうか? 彼のパートナーは変わらず遠くでこの戦いをこっそりと見ている。逃げるなら彼女も一緒に逃げるのが普通だろう。


 じゃあ、次に考えれるのは彼の『具現』だろう。彼の『具現』がどんなものなのかはわかないけれど、もしかすれば透明人間になるのかもしれない。


 けれど、そんな能力の人間があんなふうに校舎を歩いているだろうか? 普通はこっそりと少人数の人間を闇討ちしていくはずだ。


 次の可能性として、近くの教室に潜んでいる場合だ。もしかすれば銃治が逃げたと考えて、彼のパートナーを倒しに言った瞬間を不意打ちするつもりなのかもしれない。


 つまりは、動かずに素早く鉄筒銃治のパートナーを倒すのが一番かしこい。


 そう考えた姫松が次の行動に移るのはとても俊敏であった。


 無数の刃の半数を遠くに見える銃治のパートナー目掛けて放つ。


 彼女の考えられる最善手をうつ。


 けれど、その行動を待っていたかのように銃弾が彼女の真横から放たれる。


「嘘!」


 決して彼女は油断していたわけではない。


 敵の『具現』ですぐそばに銃治がいるという可能性を考えていなかったわけではない。


 ゆえに、気配を常に探っていたし、すぐさま対応できるように、刃も半数は手元に置いておいた。


 この状況で姫松麗華が気を抜くというか、意識を感知以外に割く場面はたった一つ、寿幸を攻撃する時のみだ。


 それ以外のタイミングならば、姫松ほどの使い手ならば、どれだけ隠れて攻撃しようが一瞬の殺気を感じ取り最悪防御ぐらいはできたであろう。だが、敵は間の悪いことにそのタイミングにドンピシャに合わして銃撃をしてきた。


 当然ながら、反応が遅れた姫松はその銃弾をまともに受ける。


「ぐっ!」


 銃弾は彼女のこめかみに当たり、激しい痛みを彼女に与え彼女の『具現』が歪んで消える。けれど彼女は気絶すること無く、小さ呻いただけで、すぐさま銃口の方向を睨みつける。


「大した人だ。普通は不意打ちであんなふうに弾が当たると意識ごと持ってかれるんだけどね」


 窓の外から手が伸び、先程まで対峙していた男が廊下に飛び込んでくる。


「そうやって窓の外のサッシにずっとぶら下がっていたわけね。完璧に気配を殺して」


「まあ、そういうことだね」


 銃を構え銃治は近づく。


 その距離は近く、拳で直接殴り合える距離である。


「二つ教えてくれない? まず一つ、どうやって刃の斉射を躱したの? 私の攻撃する気配でも感じ取ったの?」


「いや、違う。簡単に言うと俺の『具現』さ。俺の能力は一瞬先の起こる可能性が高そうな未来が見える。って奴でね。それに従って避けたら不意打ちできたのさ」


「じゃあ、その二つ目よ。アナタは私が彼女に攻撃した時廊下の中を覗いていなかったのにどうして攻撃できたの? さすがに私も直接覗き込んでいたら気づくわよ」


「簡単さ、この校舎はコの字形になってるんだけど、丁度コの字でアンタの後ろ側の窓ガラスにアンタの姿が写ってたのさ。そして、それを見ながらカウンター気味に攻撃したわけだ」


 銃を構えながら説明していく。その説明を聞き終え、苦しそうにこめかみを抑えながら、姫松は


「じゃあ、私が次にする行動も読めてるわけだ」


 言葉を発すると共に左手に持っていた刀で斬りかかる。


「ああ、恐らく」


 そんな未来を先読みしていた銃治は慌てずに右手の拳銃で彼女の剣戟を受け止め、構えたままの左手の銃で彼女の眉間に弾を重ねるように数発連射する。


 撃たれた姫松は凛々しい顔をこちらに向けながらゆっくりと後ろに向かって倒れていった。


「グンナイ。姫松麗華。アンタ最高にクールだったよ。それじゃあ、次は後ろの皆さんやるかい?」


 そうやって拳銃を向けた瞬間、真剣部の連中は蜘蛛の子を散らすように逃げていく。


 その様子をしっかりと確かめた後、硝煙立ち上る拳銃をいつものように軽くガンスピンさせ、ホルスターに入れる。


 それと同時に赤く染まっていた左目は普段の状態に戻る。


「ジュウジ。やったね」


 そんな彼に後ろから駆けつけた寿が抱きつく。


「オ、オイ。やめろよ。くっつくなよ」


 顔を真っ赤にして銃治は照れながら離れる。


「ジュウジ、すっごくカッコよかったよ」


「へへ、だろ」


「でもね、一つ気になることがあるの」


「なんだよ」


「ジュウジって普段からあんなに言葉遣い悪いの? 私に話しかけてきたときは結構礼儀正しかった気がするんだけど」


「アレは、その、何だ……。断られると後がなかったから万全の体制で臨んだんだよ! 本当はこっちが素に近いんだよ」


「そんなに怒らなくてもいいのに。……へへ、なんか可愛い」


「か、カワイイだ! ふざけんなよ」


「そういう反応がカワイイんだよ」


 そう言いながら初戦を勝利で飾った新入生コンビは仲睦まじく戦場でおしゃべりしながら次の敵を探しにいった。

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