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学園戦記  作者: 藁部 御門
戦挙編
19/50

ここが地獄の一丁目 2

「覗き見とはいい趣味してるじゃねーか」


「観客がいた方が盛り上がるんじゃないの、スポーツはさ」


「応援してくれない野次馬がいても何も嬉しくねーさ」


 野球部の連中は全員で十人。


 つまり、五人倒せば俺たちの勝ちである。


「まあ、残党狩りが出てくるのは予想はしていたが、こんなに早くに連戦になるとはな」


「ダブルヘッダーだね。人気者はツライね」


「減らず口の大物だな。見たところ序列上位に名前があった記憶がねーが。もしかして、一年か?」


「二年だよ。ちなみに序列は下から数えた方がかなり早い」


 連中はそれを聞くと笑い始める。


「ハッハッハ。まさかそんな奴がかかって来るとはな。しかも、たった二人で」


「だからさ、負けたら言い訳できないね」


 挑発するように俺が言う。


 その言葉に向こうが気分を害したのか、表情が変わる。


「調子付くのも度をわきまえろよ」


「そうだね」


 俺はこの瞬間から、全身の力を徐々に抜いていく。


 いつでも、天剣を使える準備を整える。


「おいおい、今更ビビってのか? 急にフラフラしやがって。まあ、安心しろよ。テメエぐらいなら一対一でいや、そこの嬢ちゃんと合わせて一対二で戦ってやるよ」

「あっそう。じゃあ、スタートだ」


 向こうの言葉を聞いた瞬間、俺が飛び出す。


 天剣のスピードについてこれるものはこの場にはいない。


 野球部の連中は全員俺が動いたことに反応していない。


 唯一当事者である、野球部の主将は僅かに体を硬直させるという行動をしていたが、あんまり意味はない。


 俺は時が止まったかのような空間の中で刀の柄に備えられたトリガーを引き抜き、真一文字に払う。


 その太刀筋に存在する主将の顎を見事打ち払い、刀を収め、隣にいる、大柄な男を蹴り飛ばす。


 この段階で敵味方合わせて、俺が突っ込んだのが理解できたらしい。


「キャプテン!」


 野球部の連中が叫ぶが、天剣できっちりと急所を撃ちぬかれた主将さんは床にうつ伏せで倒れたまま何の反応も無かった。


 そして、首輪から、警告音が響き、主将のパートナーが失格になったことを理解する。


「テメェ! ぶっ殺してやる」


 一番近くにいるやつは蹴り飛ばしたが、仕掛けた段階でほぼ連中は密集していたため、状況を理解したやつからどんどん俺に向かって金属バットを握りしめ、攻撃を仕掛けてくる。


 そんな連中の攻撃を鞘に収めたままの刀で受け流す。


 反撃まできっちり入れたいけれど、八人が攻撃してくる状況では回避に集中しなければいけない。


 しかも、金属バットの重たい一撃はまともに受けると俺自身が吹っ飛ぶ。


 だから、受け流すか回避をするしか無い。


「ちょこまか動きやがってよ!」


 俺の頭に向かって振りぬいたバットを躱すと次に俺の頭へ振り下ろす攻撃が来る。


 その軌道をそらすように、刀を割りこませる。振り下ろした一撃は床に沈んでいる向こうのキャプテンに当たった。


「あっ! キャプテン。スイマセン! 貴様!」


 俺にキレるなよ。お前が振り下ろしたんじゃん。


 坊主がブチ切れてもう一度、バッドを振り上げた時、彼の首輪から警告音が鳴る。


「はぁあ!? 何で。俺の相方は生きてるぞ」


 そう言うと、俺を取り囲んでいる連中のもう一人も首輪が赤く光警告音を出していた。


「ルールの失格者を攻撃すると攻撃した側が失格ってやつかな?」


 俺が自身なさげに言うと、向こうはますます怒り狂っていた。


「テメエ、そこまで計算してたのか。汚ねえ野郎だ」


 してないよ。今のは完全に偶然だよ。と言いたいけれど、どうせ信用なんてしてくれない。


 まあ、俺のことをどう思うかは勝手だし、向こうが一組失格になったのはラッキーでチャンスだ。


「おい! 葵ちゃん。いつまでもボーっとしてないで助けてよ。葵ちゃんの大好きそうな乱闘だぜ」


「天下くん。いろいろ言いたいことはあるけど、取り敢えず。後に回しておいてあげる」


 そう言うと、葵ちゃんも刀を抜いてこっちに来る。


 葵ちゃんはどうやら不測の事態に弱いらしい。


 もう少し一瞬で変わる状況に対応出来ないとこの先ヤバイな。


 なんてことを思いながら、敵の攻撃を躱す。


 残り六人になり、葵ちゃんが二人引き受けてくれた。かなり楽になりつつあり、反撃の隙も伺えるようになった。


 もともと、真正面に立って攻撃するのが不得手な連中である。


 なぎ払いは結構なスピードと威力はあるが、振り下ろしは三流。突きなんて攻撃は誰も仕掛けない。


 特に目を見張る攻撃も無かったので余裕を持って反撃に転じた。


 まず、金属バットで頭部を狙ってくるのを頭を下げて躱す。


 低くした頭に向かい、バットを振り上げて攻撃してくるが、これには刀で受け流し、柄の部分でストレートパンチをかますように眉間を強打する。


 次のやつが再びバットをフルスイングしてくるが、眉間を抑え痛がる男を盾にする。


 腹部を強打された男はその場倒れこみ、胃の中身を吐いて、赤いランプが光った。


「残りは一組だ。組織は頭が潰されると脆いってよく言うけど、ホントだったんだね」


「黙れ、不意打ちしかけてくる男が!」


「不意打ちされるってのは隙があったんじゃない? これは試合じゃないんだろ? スポーツマンシップなんて糞食らえってやつだ」


 野球部主将がサッカー部の連中に言った言葉を繰り返す。


「ちっ! 清原! 離れろ。こいつにはアレをやる!」


 そう言うと、さっきまで、密着しながら攻撃を行なっていた連中が少し離れる。


 そして、ボールが転がっている場所に二人並ぶ。


「行くぞ! 千本ノック」


 奴らは持っている金属バットで床を叩く。その反動で転がっていたボールが宙に浮く。


 そのボールを俺目掛けて撃ってくる。


「ちょっと、まじかよ!」


 接近戦なら、人数の少なくなったあいつら相手に負ける要素は無いと思ったが、一旦距離を取られると面倒である。


 近づくにしても、天剣では、飛んでくるボールを躱しながらは無理だ。


 あの技は移動が直線的過ぎる。


 飛んでくるボールを弾きながら下がるが、いかんせんバウンドするボールが厄介だ。


 銃弾や矢を弾く特訓はしたことはあるけれど、軌道が複雑に変化する飛び道具は経験が無い。


「さて、どうする?」


「どうするもこうするも無いんじゃない? 目には目を歯に歯を。飛び道具には『放出』をってね」


 ふと隣を見ると、葵ちゃんが後ろの二人を片付けてこちらに助太刀に来てくれた。


 それなら、何とかなりそうだ。


「任せたよ。時間は稼ぐ」


「数秒だけお願いね」


 彼女の前に立つ。ボールは様々な角度から一斉に俺の方向に飛んでくる。


 さっきまでは、避けて弾いて躱していたけれど、今度は後ろにいる葵ちゃんを守らないといけないから、避けれない。


「面倒くさいな」


 そう言いながら飛んでくる球を叩き落す。


「さぁ、野球部。期待のルーキが打席に立ったんだ。気合入れてこいよ」


「面白い。喰らいな。地獄の一丁目ショット」


 そう言うと、特に力が篭った球が一つは直線的に、もう一つは天井にバウンドさせて飛び込んでくる。


「うわぁー。コイツは無理じゃね」


 最悪体で止めなきゃいけないのかと思いながらどうしようか考えた時、肩を叩かれる。


「代打、私よ」


「えっ?」


 驚く俺を突き飛ばし、球の前に立ち刀を振り上げる。


「まとめて、吹き飛べ!」


 振り下ろした刀から気の塊が多目的ホールの天井と床を削りながら野球部目掛けて飛んでいく。


 彼らが放った野球ボールはそれに当たると、吹き飛ぶか、ボロボロになってその場に転がった。


「マジかよ!」


 葵ちゃんの『放出』を見て俺も驚く。


 せいぜい放出なんてものは拳大の気を飛ばしたり、斬撃を飛ばしたりする程度である。


 事実、初戦じゃ葵ちゃんの放出も斬撃程度だった。


 けれど今は、SFものの戦艦のレーザのように強大な気が彼らに向かって飛んでいる。


 どうやら、彼女も規格外の存在らしい。


「ひぃ!」


 二人の野球部は球を打っていた場所を慌てて飛びのく。


 そのおかげで直撃は免れたが、彼らの顔からは血の気が引いている。


 それもそうだろ。葵ちゃんが放った気は多目的ホールの壁すら壊している。


 彼らもアレほど強大な『放出』を見たことは無かったのではないだろうか。


 もう一度、葵ちゃんが刀を構えた時、向こうの野球部は両手を上に上げた。


「負けました」


 俺はその弱々しい声に同情しながら、たくましい自分の相棒に感動した。


 今のところは順調。その上、葵ちゃんのスペックも結構分かり始めてきた。


 さて、次はどうするかな。


 まあ、取り敢えず一時休憩だ。


 そうして、勝ち取った多目的ホールに俺は腰を下ろした。


集団戦の描写なんてうまくかけないよ。

ごめんなさい。迫力のない戦いで、

次は脇役達のお話を少しかきたいと思います。


ご意見、ご感想お待ちしております。



そういや、ルールでは失格者への故意の攻撃のみ反則になるってしてた気がするけど、、、、まあいっか。

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