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学園戦記  作者: 藁部 御門
戦挙編
13/50

幕間 どうせこの世は一天地六 2

「以上でホームルームを終了する。申し込みが済んでないやつは急いで申請しにいけよ」


 教師が無駄に大きな声で浮き足立っている生徒達に声をかけ教室を出ていく。


 寿もさっさとカバンに教科書を詰め込んで帰ろうとする。


 そこへ教室の前から一人の少年が近づいてくる。


「ねえ、寿さん。ちょっと、聞きたいことあるんだけど。いいかな」


 寿は訝しげに目の前の少年を見る。髪の毛が天に向かって逆立ち、腰にはこの学園では珍しい銃が二丁据えられていた。


「何?」


「寿さんって、戦挙のパートナー決めてないってホント?」


 またこの手の手合いかと、寿はうなだれる。


「決めてないけど、別にいいでしょ。こっちが決めなければ、学園が勝手にパートナー組んでくれるんでしょ?」


「じゃあさ、自分と組まない?」


 男は自分に指を指し、脳天気な笑顔を寿に振りまきながら話す。


 先ほどの寿の言葉の中に含まれている、拒絶的なニュアンスを全て無視、または気づいてないかのようだった。


「私は別に誰とも組む気はないの!」


「えー、いいだろ。相手いないなら組んでくれよ。クラスメイトのよしみでさ」


 多少大きくなった寿の声を無視するかのように、親しい友人との会話をしているかのように馴れ馴れしく話してくる。


「……勝手に馴れ馴れしくしないでよ。どうせ、私の序列が、力が欲しいだけなんでしょ。もう、ほっといてよ!」


「別に寿さんの序列とかどうでもいい。っていうか、自分、寿さんの序列何位かなんか知らねえし」


「ならなんで」


「だって、この学園で銃使って戦ってる一年生で、誰とも組んでないの寿さんしか残ってないんだぜ。もう、選択し残ってないじゃん」


「……はぁあ?」


 一瞬寿は自らの耳を疑う。


「自分は、この学園のなかで銃を使って強くなりたい。だいたい、この学園の人はさ、銃を使ってるってだけで、舐めてくる。自分みたいに、銃を愛してやまない人間はそれが悔しくて。だから、ここらで下克上といこうと思って」


「私以外にも銃を使ってる人はいるでしょ。どうして、他の人に早めに声かけなかったの」


「基本的にこの学園で銃使う人は射撃部に入ってるんだ。自分集団行動苦手でさ。それでフリーのやつ探したけど、この学園フリーの銃使いっていなくてさ。そんで途方にくれて、もう一度考えてたら、自分のクラスに適任者が一人いたことに気づいてね。全く、馬鹿な話だよな」


 そう言いながら、笑顔をこちらへ向けてくる。その笑顔が寿には痛かった。


「……いいわ。組んであげてもいい。ただし、勝負しましょう。アナタが勝てば考えてあげる」


「勝負ね。戦闘は禁止だぜ。何すんの?」


 乗ってきた。


 一瞬の躊躇もなく寿の提案に乗ってきた男を見る。


 笑った顔と白い歯。なんにも考えてなさそうな言動。ああ、彼はきっと馬鹿なんだと思いつつ、その、底抜けの明るさに嫉妬している自分がいることに気づく。


 だからだろうか、寿は自身が思いつくもっとも残酷なゲームを提案する。


「ロシアンルーレット」


 そう言って、腰から『トリガーハッピー』を取り出す。その銃はリボルバーであり、六つの弾倉につまった弾を全部抜き取る。


「それなら、戦闘行為にはならないからギリギリセーフでしょ」


「……いいぜ。受けて立つ」


 馬鹿な奴と思いながら、周りを見る。いつの間にやら、教室にいたクラスメートはみんな帰っており、自分と目の前のバカしか残っていなかった。


 このゲーム、どうやっても、寿の『具現』である『グッドラック』がある限り、寿側に負けは無い。


 そんな、どうやっても勝てない勝負をふっかけても、目の前の男はたじろがず、どんと自信に満ち溢れた表情のまま立っていた。


「そう。わかったわ」


 一言呟くと、六つの弾の一つを取り出し、指で弾く。


 弾かれた銃弾は宙を舞って、トリガーハッピーの弾倉へ吸い込まれる。その弾倉を勢い良く回転させ銃を閉じる。


「先がいい? 後がいい?」


「レディーファーストで」


「いいわ」


 そう言うと、寿は当たり前の如く、こめかみに銃口を当てる。


 そして、親指で撃鉄を起こし、人差し指でためらわずに引き金を引く。


 カチン!


 妙に虚しい音が二人だけの教室で響く。


「じゃあ、お次どうぞ。ちなみにシングルアクションだから自分で撃鉄を起こしてね」


 汗の一つもかかず、すすしげな顔で自分のこめかみに向かい引き金を引いた少女はリボルバーを少年へと渡す。


「了解」


 少年は差し出された、銃を受け取り、流れるようにガンスピンさせながら自らのこめかみに銃口を当てる。


「なんか、緊張するな」


 そうは言いながらも、親指で撃鉄を起こす。


 そして、大きく息を吸い込み人差し指に力を込める。


 カチン!


 鉄同士がぶつかって乾いた音を立てる。


 それと同時に少年の頬に汗が伝う。


 その様子を見た寿が銃を受け取ろうと右手を差し出す。


「おめでとう。次はアタシね」


「ちょっと、待ってくれ。自分は寿さんの序列は知らないが、一応能力については軽く調べた」


「えっ!?」


 少年の言葉に寿が驚く。能力を知っているならこんな馬鹿なゲームに付き合うワケがない。


 勝てるわけがないのだから。


「ちなみ、調べた結果は、この銃は願かけによって、とんでもない威力を引き出すことと願掛けしなければただの銃であること。あと、寿さんはとんでもない幸運の持ち主って話。いや、能力レベルのヤバさらしいってことだ」


「なら、なんでこんな勝負を」


「やらずに逃げるのが嫌いなのと、それでも、俺が勝ちたいから」


 そう言うと、こめかみから、銃口を放さず、もう一度撃鉄を起こす。


「なっ! 何を!」


「まともにやっても勝てないからな。多少は好きにやらしてもらう」


 そう言って、二度目のトリガーを引く。


 カチン!


 再び乾いた音が響くと、続けて銃を放つ。


 カチン!


 カチン!


 計四度、鉄の音が響きようやく、男がこめかみから銃を離す。


「これで、残りはアタリのみ。順番は無視しちまったが自分の勝ちでいいよな」


 ありえなかった。


 目の前の男の無茶苦茶っぷりも、自身の負けも。


 負けるわけのない戦いで、初めて負けたことに対し、寿は言葉を失う。


 そんな彼女の目の前で少年は嬉しくてたまらないといった風に笑う。


 自身もそんな風に他人の前で笑えたら、何かが変わるのだろうか。


 変わりたい。


 それを求めてこの学園に来たはずである。


 当たり前の勝ちじゃなく。


 想定外の負けでもない。


 それじゃあ、自分は変われない。


 そんな思いが彼女に一歩を踏み出させる。


 笑顔の彼を見て、寿は黙って手を差し出す。


「おお? ああ、銃か。別に取らないよ。ほら、返す」


 その手に受け取った銃を無言のまま自身のこめかみに向かって当てる。


 それは今までの自分との決別。


 自身の暗い過去とこれから続くつまらない未来を壊すために


「なっ!?」


 彼女は撃鉄を起こし、引き金を引いた。


 カチン!


 時が止まったかのように、音が響いた瞬間から数十秒。どちらも声を上げなかった。


 状況が理解できていない少年を目にし、寿が止まった時間を動かすように喋る。


「どうやら、引き分けみたいね」


「えっ! 引き分け?」


「そう。どうやら、最後の一発は不発みたいだもの。だから、お互いに決着つかずの引き分けでいいんじゃない」


「ちょっと待てよ。どう考えても俺の勝ちでいいだろ」


「途中順番を飛ばしたのを認めてあげるんだから、不発も認めなさい」


「うぐっ!」


 確かに順番については少年の独断である。


 悔しそうに顔をしかめながらも、反論の言葉はなかった。


「畜生。どうすんだよ。明日なのに戦挙」


 代わりに当面の問題を大声で叫ぶ。


 少年にしてみれば、ようやく問題を解決できたと喜んでいたところから、急転直下で地獄にたたきつけられたのだ。


 頭を抱えて、涙目になっている。


 そんな彼を見ながら、寿は口を開く。


「そういえば、さっきの勝負、引き分けの時のこと決めてなかったよね」


「それどころじゃ――」


「だから、落とし所としてアタシの言うこと一つ聞いてくれたらいいよ」


「は?」


 鳩が豆鉄砲をくらった顔というのはこういうのをいうのだろうか。


「……ア、アタシと友だちになってくれない? アナタ明るそうだし。楽しそうだし」


「へ?」


 勇気を振り絞った彼女の言葉はいまいち彼に届いていなさそうだった。


 だが、彼女はそんな彼のことなど気にする余裕はなく、顔を真っ赤にしながら言葉を続ける。


「返事は?」


「あっ、はい! ってか、え?」


 条件反射のように返事を催促することばに男が答える。けれど、彼が話の内容を理解しているかどうか怪しかった。


 周りから見えれば、それが本当に彼女の問いに対する返事かどうかは怪しかったが、彼の言葉に彼女は顔を明るくする。


「じゃあ、自己紹介。アタシの名前は寿幸。ユキって呼んでくれると嬉しい。寿さんじゃなんか他人行儀すぎて、友達って感じじゃないから」


「?? ああ、まあ、自己紹介ね。自分は鉄筒銃治てつづつ じゅうじ。自分もジュウジって呼んでもらって構わない」


「じゃあ、ジュウジ。早く申請しに行こう」


「えっ? 申請?」


「戦挙のだよ! 早くしないと」


「あれ? パートナーになってくれるの?」


「当然でしょ。アタシは興味はないけれど、友達のジュウジが出たいなら協力するよ。なぜなら、友情は見返りを求めない!」


 いきなり、饒舌になる寿と自身の問題がいきなり解決されたことに戸惑う。


「あれ? 戦挙のパートナーになるっていう見返りで結ばれた友情なんじゃ?」


「細かいことは気にしちゃいけないわ。それにジュウジは馬鹿っぽいんだから、難しいこと考えないで」


「……まあ、いいか。問題はなんとか解決したみたいだし」


 大きく少年が息を吐くとともに彼のお腹がなる。


「やべ、安心したらお腹減ったな」


「そういえば、アタシ、今日のお弁当多少残ってるから食べる?」


「ああ、じゃあ後でもらうよ」


 二人は顔を合わせながら笑う。 


 それが、寿幸の学園で他人に見せた初めての笑顔だった。

新キャラペア第一号です。


彼らには戦挙でも頑張ってもらおうと思います。


あと、キャラの口調が安定しないのは気にしないでいただけるとありがたいです。



もう何話か新キャラの話を書こうかなと思います。


あと、感想いただけるとありがたいです。


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