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学園戦記  作者: 藁部 御門
戦挙編
14/50

幕間 不幸なストーリーは突然に

「どうして、私が神武学園に行かなければならないんですか。お姉様!」


 綏靖学園すいぜいがくえんの生徒会室で小さな少女が叫ぶ。


「ゴメンね、りん。でも、どうしても断れなくてさ。それに、色々、まさきとも話し合ってアナタが適任だってことになったの。お願い、私を助けると思って」


 お姉様と呼ばれた少女は、目の前の小柄な少女に向かって、手を合わせて頭を下げる。


 鈴と呼ばれた少女は、そんな敬愛する姉分の行動に申し訳なさそうな顔をして、自身が慕う姉分の奥に立っているメガネをかけた男を睨みつける。


「全部、アンタの仕業なの。一柾はじめ まさき!」


「多少は先輩への口調を改めた方がいいと思いますよ。五十鈴いすず りん


 一柾と呼ばれた男は目の前の小柄な少女へ向かって苦言を呈す。


 少女の背丈は一見小学生かと見間違えるほどであり、おまけに髪の毛を鈴がついたヘアゴムでツインテールにしているために、どこから見ても高校二年生には見えなかった。


「アンタ、私が嫌いだからって、この学園から追い出すつもりね。そんな考え方だから、いっつも暗いのよニノマエ!」


「五十鈴を追い出すつもりはこれっぽっちもありませんよ。あと、私の苗字はハジメです。さっき自分で正解を言ったのに間違えないでください」


 ガルルルと今にも噛み付きそうな雰囲気で五十鈴は柾を睨む。


「コラコラ、喧嘩しようとしないのちゃんと、鈴が選ばれた理由を説明するから」


 そう言って、部屋の中央にある、背もたれのついた革の椅子に座った少女。綏靖学園の生徒会長である、九条氷華くじょう ひょうかは自らの部下をなだめながら、説明をはじめる。


「事の始まりは、神武学園で行われる戦挙なんだけど、今回のルールで、ジョーカーって役が必要らしいの。当初は学園の教師が担当するかもって話だったんだけど、パッと見すぐにジョーカ―だってバレるのはよろしくないってことで、同世代で、神武学園の生徒と張り合える生徒が必要になったらしいの。そこで、去年から親交のある、神武学園の現生徒会長の蒼崎空くんから連絡が来てね。私が了解したの」


「なんで、了解しちゃったんですか!?」


「まあ、蒼崎くんの要請はあんまり断りたくなかったのと、これはチャンスだと思ってね。来るべき対校戦の時、我が綏靖学園すいぜい がくえんが神武学園の実力を把握できるチャンスなのよ。これはね」


「そんなに心配しなくても、去年は私達綏靖の勝ちだったじゃないですか」


「過去の勝利に胡座をかいたら負けますよ。五十鈴」


 五十鈴が主の多少後ろ向きな発言を心配してかけた言葉に、柾が水をさす。


 それに対し、また五十鈴が柾を睨む。


「じゃあ、アンタが行けばいいじゃん。ニノマエ、アンタなら情報収集もさっきのジョーカ役も簡単にこなせるでしょ」


「ふぅー、私も最初は自分で行こうと言ったんですがね、会長が「柾がいないと自分の仕事が増えるから、ヤダ」とか言い出して、アナタに白羽の矢が立ったんですよ」


 呆れたように柾が言うと、会長が恥ずかしそうに笑っている。


「と言うわけで。鈴、お願いしていい?」


 とびっきりの笑顔で綏靖学園の生徒会長、九条氷華は目の前の小柄な少女にお願いする。


 その笑顔を見た五十鈴鈴はズルいなと思いつつ渋々了承する。


「はぁー、分かりました、お姉様。ちなみにそれはいつなんですか?」


「明日」


「……明日?」


 鈴の想定していない返答に彼女の思考がストップする。


「うん。連絡あったのが昨日だからね。じゃあ、今日は午後の授業受けなくてもいいから、今すぐ神武学園に向かってね。車を今から学園の前に回すから。あと、今日は神武学園の近くのホテルで止まってね。下着とかは、アナタの家に連絡して全部用意させたから、ちなみに明日は神武学園の制服ね。あと、向こうの戦挙についてはここの資料に書いてあるから」


 決まった瞬間、まくし立てるように、次々に重要事項を伝えていく。ただ、五十鈴が知っている会長はここまで、手際よく準備ができているはずがない。


 五十鈴は会長の後ろに立つ男を再び睨む。


「ニノマエ、随分準備がいいじゃない。私が了承する前から、私を向こうに飛ばす気満々ね」


「さあ、なんのことだか」


 悪意のこもった笑いを浮かべながら手のひらを上に向ける。


「じゃあ、鈴。お願いね。くれぐれも当日遅刻なんてしちゃダメよ」


「あと、五十鈴。情報収集はきちんとお願いしますよ」


「わかりました!」


 こうして、少女は不本意のまま、生徒会室を後にした。






◇◇◇

「本当に鈴で大丈夫なの?」


 氷華は椅子に深く腰掛けグルグル回る。


「大丈夫でしょ。と言うより、情報収集位できないと九条家の分家として、ますます五十鈴の立場が弱くなりますよ」


「もう、学園で家の話をしないの。これは九条の命令だって言ったでしょ」


 真剣な表情で柾を見る。


 その顔を見ずに、柾はメガネに手をやる。


「わかっています。氷華さま」


「その、氷華さまも禁止! 私と柾は幼馴染なんだから昔みたいに氷華って呼ぶの」


「立場があるんですよ。色々とね。だから、譲歩して、会長で許してください」


 多少頬をふくらませながら、彼女は渋々頷いた。


「もう少し、柾に蒼崎くんみたいな自由さがあれば、カッコイイのに」


「会長。一言、一家はじめけとして言わせてもらうと、九条家の人間が天上家の分家を褒めるような真似はよしてください。天上家は九条家の家名に傷をつけたんですよ」


「……そういうところが残念なんだよね。柾も家の事も過去のことも気にせず楽しまなきゃ。そして、今年の対校戦もね」


ジョーカー役の五十鈴鈴のお話です。


あと、一人サイドストーリーを書いて、本編に戻ります。


ちなみに、綏靖学園はまた、いつか登場させるつもりです。


それまで、ボクが書いていたらの話ですが。


まずは、戦挙を終わらせることを頑張ります。


感想いただけるとありがたいです。


さあ、もうすぐ戦挙の開催だー。

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