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学園戦記  作者: 藁部 御門
戦挙編
11/50

決戦は金曜日、なら今日は木曜日 2

 屋上で各自がそれぞれの飯を食べる。


 けれど、微妙に重たい空気が俺たちを包んでいた。

 

「やっぱり、天上さんってあの天上家の人なんだ」


「……そうです」


「……」


「……」


 神楽の問いに一歩引いた感じで葵ちゃんが答える。


 そして、言いがたい、微妙な沈黙が漂う。


 それに耐えかねて、神楽がなんとか話を発展させようとする。


「当主さんってやっぱり強いの?」


「……はい」


「……」


「……」


 しかし、全く会話がはずまない。


 神楽は困った顔をしてこちらに近づき、俺に小声で話しかける。


「ね、ねえ、天ちゃん。あの子と一体どうやって名前で呼び合うぐらいに仲良くなったの?」


「うーん、脅迫されて、開き直ったらわりと仲良くなった」


「はぁ?」


 そんな顔するなよ、俺だって訳わからんのだから。


 葵ちゃんって人見知りなのか。


 それとも、神楽と仲良くなる気がないのか。


「なあ、葵ちゃん。一応神楽は明日の同盟者なんだから、仲良くしようぜ」


「……弐宮くんだっけ?」


「そ、そうだよ!」


 いきなり話しかけられ、声が裏返りながら神楽が答える。


「アナタって、序列何位なの?」


 仲良くなろうって言ってるのに、聞くことがそれかよ!


「あ、ああ。一応、序列七位だけど」


 神楽は聞かれた内容にがっかりしながら答える。


 だけど、その序列の高さに葵ちゃんが驚く。


「そ、そうなんだ」


「まあ、序列の事は気にしないで。それよりボクは、天上さんのことが色々と知りたいんだけど?」


「……答えれる範囲なら」


「なら、『何のためにこの学園に転向してきたの?』」


 いきなり答えにくそうな質問をぶつける。


「ちょっと、家の事情で」


 ご飯を食べながら淡々と答える。


 その口調から、それ以上は答えないという意志が見える。


「じゃあ、次の質問。『どうやって、天ちゃんを引き込んだの?』」


「さあ。お願いしたら、簡単に――」


「嘘だ!」


 いきなり、神楽が声を大きくする。


 その様子に俺と葵ちゃんが驚く。


「あっ、その、ゴメン。びっくりさせちゃったね。ああ、さっきの質問は忘れて。あと、ボクもうお腹一杯だから、先に教室戻るよ。ゴメンね」


 逃げるようにして、神楽はドアを開け、去っていく。


「彼、どうしたの?」


「アイツの地雷でも踏んだかな。まあ、気にしなくていいよ」

 

 まあ、すぐに仲良くはなれないかもしれないけど、そのうち何とかなるでしょ。


 屋上に流れる気まずい空気を感じながらも、脳天気に俺はパンをかじる。







「えーと、これで帰りのホームルームは終了だ」


 放課後の始まり、面倒くさそうにホームルームを終わらせ出ていく先生を慌てて追いかける。


「先生、武器の申請したいんですけど、今からいいですか?」


「ああ、神乃か。大丈夫だぞ。申請するのはその刀か?」


「そうです」


 右手に持った刀を先生に渡す。


「妙な刀だ。刀なのにトリガーが付いている。これを引いたら刀が抜けるのか?」


「そうです。一応俺のところの流派は刀を鞘に収めた状態で戦うのが基本スタイルなので」


「ますます、へんだな」


 そう言いながら、まずは赤く塗られた鞘にひと通り目を通し、柄も丹念に調べる。


「一応聞いとくが、トリガーを引いたら刀が抜けるようになること以外に何かギミックはないよな」


「ないですよ」


「ならいい」


 刀の外側を確認し終わると、棺先生はトリガーに指をかけ一気に刀を引きぬいた。


 宝石のような輝きを持った刀身が先生の顔の前にあらわれる。


「……なあ、神乃」


「なんですか、先生」


「うまく誤魔化そうとして、刀の刃も潰しているが。こいつは、いわゆるヤバイ品なんじゃないのか?」


 さすが先生。この刀の力を薄々感じ取っている。


 刀自身はまだ眠ったままだというのに。


「別段、業物わざものでも刃さえ潰しておけば使用許可は出るはずでしょ」


「業物なんていう可愛いレベルじゃない気もするが……まあいいか。扱うのはお前なんだろ」


「そうですよ」


「なら信用してやる」


 そう言って、先生は刀を収め、保健室に向かって歩き始める。


「書類を書かなくちゃいけないからついて来い」


「はーい」




「これでよしっと」


 さらさらと机の上の書類の項目を埋めていき、先生が一息つく。


「疲れたな。一本吸いたいけど、お前がいると吸えないからな」


「先生も学園にいる時ぐらい我慢してくださいよ」


「もう授業は終了したから、吸ってもいいと思うんだがな。まあいい、我慢するさ」


 そう言いながらも、火のついていないタバコを咥え、愛おしげに指で撫でている。


「ああ、忘れてた。先生、もう一つ用事があるんですけど」


「なんだよ、面倒くさい」


「商店ってまだ営業しています?」


 この学園では、学園内での戦闘に利用して良い武器を先生が自由に販売している。


 銃器ですら、特殊弾の使用に限れば売買され使用される。


 もっとも、銃で戦う連中はほとんどいないが。


 久々の儲け話が舞い込み、棺先生は多少真剣な顔になる。


「なんだ、私のところから、ブツを買おうなんて物好き、一年ぶりだぞ」


「先生の品揃えがコストパフォーマンス最悪な上に使用用途に難があるのもありますからね」


「まあそういうな。私が思いつきと暇つぶしで作った武器はもちろん、癖があるが、普通のもきちんと揃えているぞ。まあ、経済の先公に客をほとんど奪われたがな」


 笑いながら、机の引き出しから鍵を一つ取り出す。


「そこの部屋に品は置いてある。好きなのを持っていけ。どうせお前のことだから、私の開発した武器は持って行かないだろうから、説明はいらんだろ」


「多分そうですね。値段は書いてあるんですか?」


「書いてないが、まあいいや、今回はロハにしとこう。ヤル気になっているお前へのプレゼントだ」


 珍しく気前がいい。


「まあ、頑張れよ。勝たなきゃ、後で請求するから」


「それ、タダじゃ無いじゃん!」


「勝てばいいのさ」


 そう言いながら、回る椅子に背中を預けてぐるぐる回っている。


 そんな教師を尻目に俺は部屋に入り色々と物色した。


 役に立ちそうなものをポケットに詰め込んだら、部屋から出て、先生に鍵を渡す。


「じゃあ先生。また明日。俺が負けたら看病よろしく」


「ふざけんな。負けたら臓器売りさばいて、ニコチンに変えてやる」


 最後までふざけながら、俺は学園を後にした。





「遅かったな」


 校門でいきなり声をかけられる。


 けれど、俺に声をかける知り合いなんて多くはない。


 横を見れば、俺が想像するなかで、一番声をかけて欲しくない奴が立っていた。


「天下、ちょっとツラ貸してくれや」


「ああ、二階堂くん。ゴメン。今日はちょっと急いで帰る用事があって」


「急いで帰るだ? 嘘はよくねえな。だったらどうしてこんなに遅くまで学園に残ってやがんだ」


「いや、それは」


 目の前に立つ二階堂は昼間会った時のように見るからに不機嫌だった。


「まあ、すぐに終わるさ」


 二階堂は俺に背を向け歩き出す。


 どうやらついて来いという事らしい。


 面倒くさい。


 正直逃げ出そうかと考えたが、取り敢えず、付いて行く。


 そのまま歩くと、少し開けた場所に連れてこられる。


「俺がお前を呼び出した理由わかるか?」


「……」


「昼間のことだよ! 俺は自分が舐められるのが我慢ならねんだ」


 明日には学園公式で暴れられるのにもう少し辛抱してくれよ。


「だから。これは教育だ!」


 いきなり、右手を振りかざし、腰の入った重そうなパンチが風を切って迫る。


 そのパンチを慌ててバックステップで躱す。


「ははは、そうだ。避けても、手を出してもいいぞ。学園の外だからペナルティは気にしなくてもいいしな。……ただ、避けた分だけ攻撃は倍増だ!」


 そう言って目を血走らせながら、殴ってくる。


 右に左にパンチが連続で飛んでくる。激しいラッシュを下がりながら躱す。


「ねえ、二階堂くん。一応もう一回言うよ。俺さ、急いでるんだ」


 相手の攻撃を躱しながら、静かに言う。


「だから、後三回殴りかかって来たら、終わりにするよ」


「何、余裕ぶっこいてんだ!」


 殴りかかる腕に力が入る。


 右ストレートがさっきよりもキレをまして、俺の顔面目掛けて飛び込んでくる。


 軽く首を捻り、微かにかすらせるように避ける。


「まずは、一発目だね」


 渾身のストレートをかわされて、驚愕の表情を浮かべる二階堂の目を見ながら俺が淡々とつぶやく。


 そのまま、二階堂はもう一歩踏み込み今度は左手で俺の顎めがけショートアッパーを繰り出す。


 二階堂の踏み込みの分俺は一歩下がりそのショートアッパーを顔のギリギリで躱す。


「二発目」


「て、てめぇ、何なんだよ」


 怒りで塗りつぶされていた表情に微かに恐怖が滲む。


「そんなの、二階堂くんが一番良く知ってるじゃん。学園最弱で二階堂くんのパシリの神乃天下だよ」


 二階堂くんの顔を見て、ほんの少し自分の顔も緩む。


「二階堂くんには、感謝してるよ。いたぶる君がいたから、弱者として楽しい楽しい学園生活をおくれた。でもね、俺もやりたいことができたんだ。だから、もう終わりにしよう」


「だ、黙れぇぇぇ!」


 二階堂くんの拳に気が宿っていき、拳が僅かに光を帯びる。


 恐らく『放出』を使うのであろう。


「はぁぁぁ! 死にやがれ!」 


 そして、勢い良く地面を踏みしめ拳を前へと突き出す。


 俺は今度は前へと踏み込み、その拳を左手に持っている鞘に収めたままの刀で脇へと払う。


 狙いがそれた拳から、二階堂の気が放たれ、その先にあったコンクリートブロックが吹き飛んだ。


「三発目。そして、これで終わりだよ」


 俺は二階堂が踏み込んだ足を払い、同時に彼の服を掴み地面に叩きつける。


 流れるように、叩きつけた二階堂に鞘に入ったままの刀で顎を撫でるように払い、彼の意識を刈り取った。


 倒れた彼の瞳は信じられないといった様子で大きく見開いていた。


「じゃあね、二階堂くん。また、明日」


 そうして、残っている葵ちゃんの約束を果たすために、家へとかけ出した。

感想いただけるとありがたいです。

次は別キャラの話を多少書いていこうと思います。


よろしくお願いします。

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