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『魔力なしの王子は、指揮棒で時を奏でて滅びる王国を救う』  作者: 現金支払い一括でイカ焼き買います。
序盤ー魔力なしのラピスー
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第5話

第5話 王子、騎士に拾われる


しばらくして。


一人の男が、ようやく口を開いた。


「……俺たちは王国騎士だ」


「騎士?」


「そうだ」


男は腰に下げた剣を見せる。


「この辺りにドラゴンが出たという報告を受けて、討伐に来た」


「……ドラゴン」


ラピスは少し考える。


昨日食べたものを思い出す。


「もういないよ」


「……そのようだな」


騎士たちは周囲を見回した。


本来なら、巨大なドラゴンがいるはずだった。


だが。


どこにもいない。


戦った痕跡すら、ほとんど残っていなかった。


「それで……」


騎士がラピスを見る。


「お前は、ここで何をしていた?」


「寝てた」


「……」


「それから、お腹がすいたからドラゴンを食べた」


「…………」


やっぱり理解できなかった。


騎士は小さく息を吐く。


そして、真剣な顔でラピスに向き直った。


「この森に一人でいるのは危険だ」


「危険?」


「この辺りは、ドラゴンに狙われている」


「……また来るの?」


「分からない。だが、この国ではドラゴンによる襲撃が珍しくない」


騎士は森の奥を見る。


「街が襲われることもある。だから俺たち騎士や冒険者が、ドラゴンを討伐している」


「……そうなんだ」


ラピスはあまり興味がなさそうに頷いた。


そして。


自分のお腹をぽん、と軽く叩く。


「でも、もうお腹いっぱいだから」


「……は?」


「ドラゴン」


ラピスは真顔で言った。


「もう食べられない」


「いや、そういう問題じゃない」


騎士の声が森に響いた。


けれどラピスは気にしない。


少し考えてから。


「……ここ、寝るところないし」


周囲を見回す。


木。


草。


地面。


「普通の寝床がいい」


騎士は目を瞬かせた。


「……寝床?」


「うん」


「街に行けば、宿もある」


「宿?」


「そうだ」


ラピスは少し考える。


そして。


「じゃあ、行く」


あっさりと立ち上がった。


騎士は少し驚いた。


「随分あっさりだな」


「だって」


ラピスは眠そうな目で騎士を見る。


「もうドラゴン食べられないし」


「だから、それは理由になるのか……?」


「それに」


ラピスは森の奥を見る。


「普通の寝床、欲しい」


騎士は何も言えなかった。


こうして。


ドラゴン討伐にやってきた王国騎士たちは――


ドラゴンではなく。


一人の不思議な少年を拾うことになった。



◇



その後。


ラピスは騎士たちと共に、森を出た。


向かった先は――


騎士の家だった。


「……ここ?」


「ああ。俺の家だ」


ラピスは家を見る。


大きくはない。


けれど。


屋根がある。


壁がある。


そして何より――


「……寝るところ、ある?」


「ある」


「じゃあ、ここでいい」


ラピスはあっさり頷いた。


騎士は少し困ったように笑う。


「まあ……しばらくなら構わない」


「ありがとう」


ラピスは家の中へ入った。


そこには。


王城の離宮とは違う、普通の生活があった。


家具。


食器。


小さな暖炉。


そして――


ベッド。


ラピスはベッドを見つめる。


「……」


「どうした?」


「……ふかふか?」


「普通だ」


ラピスはベッドに近づく。


そして。


ぽすん。


そのまま座った。


「……いい」


「気に入ったのか?」


「うん」


ラピスはそのまま横になる。


「……眠い」


「今か?」


「今」


騎士は呆れたように息を吐いた。


「夕飯は?」


「……食べる」


「ドラゴンじゃないぞ」


「普通のご飯がいい」


「分かった」


こうして。


王家から捨てられた王子は――


なぜか騎士の家で暮らし始めた。


ドラゴンを食べたことも。


指名手配されていることも。


そして、自分が王子であることも。


ラピスは何も語らなかった。


ただ。


「……ここ、悪くない」


そう呟いて。


久しぶりの普通の暮らしを始めた。


お読み頂き感謝です( · ᴗ̵ ‹ )

次の更新は、6話、本日のお昼12時より更新です!

続きが気になる方、ブクマ&☆を押して応援してくれたらスピードが上がります!

また、代表作のトラ神は、200話超えてる大作なのでそっちも読んでみてね(*ˊ˘ˋ*)


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