第4話
第4話 王子、ドラゴンを美味しく頂く
――グォォォォォォォン!!
目の前には、巨大なドラゴン。
ラピスは、その姿を見上げていた。
三日間。
何も食べていない。
「……お腹すいた」
ドラゴンが大きく口を開く。
ラピスは指揮棒を握った。
「……」
少し考える。
そして。
「……食べよう」
指揮棒を振る。
ドラゴンの周囲に炎が集まった。
風が炎を包み込む。
水が加わり、温度を調整する。
ラピスは指揮棒を自在に振りながら、ドラゴンを調理していく。
「……いい匂い」
ドラゴンは逃げようとする。
しかし。
ラピスは三日間、何も食べていない。
「逃がさない」
指揮棒を振る。
炎が強くなる。
風が渦を巻く。
そして――
しばらくして。
森に、香ばしい匂いが漂った。
ラピスはドラゴンを見つめる。
「……いただきます」
一口。
「…………」
もう一口。
「…………美味しい」
それからラピスは。
夢中になって食べた。
三日間の空腹を埋めるように。
ひたすら。
ひたすら。
食べ続けた。
そして――
ドラゴンは。
跡形もなく消えた。
「……ごちそうさまでした」
ラピスは満足そうに呟いた。
お腹いっぱいになった。
久しぶりの食事だった。
ただ一つ。
ラピスは知らなかった。
自分が今食べたドラゴンが――
この国で恐れられている、強大な存在だったことを。
「……眠い」
ラピスはその場に座り込んだ。
そして。
そのまま眠った。
◇
どれくらい眠っただろう。
「……ん」
ラピスは目を覚ました。
「……眠い」
起きた瞬間から、やっぱり眠かった。
ラピスはゆっくり身体を起こす。
森の中。
周囲には何もない。
昨日までいた巨大なドラゴンも。
食べ終えた痕跡すら残っていない。
「……」
ラピスは自分のお腹を見る。
満腹だった。
「……よく寝た」
立ち上がる。
服についた土を軽く払う。
そして。
指揮棒を手に取った。
「……さて」
ここにいても仕方がない。
王城には戻れない。
戻れば捕まる。
「……どこかに行かないと」
ラピスは森の奥へ歩き始めた。
そのとき。
遠くから――
人の声が聞こえた。
「……?」
ラピスは足を止める。
森の向こうから、複数の声が聞こえてくる。
「この辺りだ」
「本当にドラゴンがいたのか?」
「間違いない。昨日、この近くでドラゴンの魔力が確認されている」
「探せ!」
ラピスは首を傾げた。
「……ドラゴン?」
昨日、自分が食べたやつだ。
ラピスは少し考えた。
「……もういないけど」
そのまま歩き出そうとする。
すると。
「――誰だ!!」
声が飛んできた。
ラピスが振り返る。
木々の間から、武器を持った男たちが現れた。
冒険者らしい。
男たちはラピスを見る。
王族らしい服装。
青い髪。
そして、手に持った指揮棒。
「……子供?」
「こんな森の中に?」
一人の男がラピスへ近づいてくる。
「お前、ここで何をしていた?」
ラピスは答える。
「寝てた」
「……寝てた?」
「うん」
「この森で?」
「うん」
男たちは顔を見合わせる。
そして。
一人が鼻を動かした。
「……おい」
「どうした?」
「こいつ……」
男がラピスを見る。
「ドラゴンの匂いがする」
「…………」
ラピスは自分の服を見た。
そして。
「ああ」
思い出したように頷く。
「昨日、食べたから」
「…………」
男たちが固まった。
「……何を?」
「ドラゴン」
「…………」
森が静かになる。
ラピスは首を傾げた。
「?」
男の一人が、恐る恐る聞いた。
「……ドラゴンを?」
「うん」
「……一頭?」
「うん」
「…………」
ラピスは不思議そうに男たちを見る。
「お腹すいてたから」
男たちは何も言えなかった。
ただ。
目の前にいる少年を、じっと見つめていた。
そしてラピスは。
「……僕、何か変なことした?」
誰も答えなかった。
9月27日、今回はここまでです(*ˊ˘ˋ*)
初回から沢山のアクセス数嬉しいです!
5話の更新は28日8時です、お楽しみを♩




