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雪国の王子様の過去。8

 エイリッヒはそんなロウに向かって叫んだ。


「僕はこの国の王子だ! 国民を守る義務があるんだ!」

「……俺は確かに国民かもしれない。だが、俺は王子様に守られるだけの存在じゃない! 俺達が愛する街を、国を守る! この爆弾は俺が処理する。エイリッヒ様はこの国を更に豊かにしてくれ……」

「やめろ! それは王子である僕の役目だ! ロウ! 君が犠牲になる必要はないんだ!!」


 ロウに噛まれた足から血を流し地面に倒れていたエイリッヒが叫ぶ。


 だが、ロウは振り向くこともなくエイリッヒの言葉に言い返す。


「……犠牲じゃない。俺はこの国の礎になるんだ! 後は頼んだ! エイリッヒ!!」


 ロウはそのまま走り出して行った。


「待て! 行くな! 待ってくれ! ロウ!!」


 徐々に小さくなる銀狼の後ろ姿を必死に追いかけようとするが、エイリッヒは怪我を負った足が言う事を聞かず地面に這いつくばって叫ぶ事しか出来なかった。


 次の瞬間、遠く離れた雪山の方から轟音と共に爆炎が立ち上った。


 エイリッヒは涙を流しながら悔しさに震える唇を噛み締める。


「ロウ……すまない。君に誓おう、僕は君の分まで必ずこの国を豊かにすると……」


 エイリッヒの昔話を聞き終わると、私の目からは自然と涙が溢れていた。


「……エイリッヒ様。そんな悲しい過去があったなんて……わたくし、知りませんでしたわ……」

「やめてください。ほら、このハンカチで涙を拭って」


 エイリッヒは泣いている私にそっとハンカチを手渡しする。


 そのハンカチで涙を拭くと、私は顔を上げてエイリッヒの目を見つめた。


「エイリッヒ様。あなたがそんな過去があったなんて……あなたのご友人とあなたの国を想う意志に、わたくしはあなたの事を尊敬いたしますわ」

「アリシア嬢……僕はただ、友との約束を果たしたいだけ……その為にあなたを誘拐するなどという卑劣な行いをした。しかし、僕の想いも分かってください。年中雪が降り積もるこの痩せた土地に食物を実らせる方法は、もう魔法くらいしかない……その為にガイアに祝福されたあなたの魔法がなんとしても必要なのです」


 エイリッヒの真剣そのものの瞳に私は心を打たれた。


 だが、同時に胸の奥がきつく締め付けられる。

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