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誘拐された先は雪国。7

 だが、私のアレクに会いたいという感情を抑えきれない。


「なぜできないのですか! 私一人で帰ります!」

「外は雪が降り積もった大地……例えこの城から出れたとしても生き残れないでしょう……私はアリシア嬢に不自由は絶対にさせません。だから、この国に残ってもらえませんか?」

「無理ですわ! 私の想いはアレクへ向かっていますもの! 貴方ではない!」


 私はきっぱりと言い切ると、エイリッヒも少しショックを受けたように悲しそうな表情を見せた。


 まあ、分かっていてもはっきりと拒絶されるのは辛いだろう。


「アリシア嬢。貴女に分かってほしいとはいいません……ですが、私はこの王国の民を見捨てるわけにはいかないのです。私が居てはアリシア嬢の気が休まらないでしょう……失礼します」


 エイリッヒはそう言い残して部屋を出ていった。


 その後ろ姿はどこか悲しそうだった……


 私はエイリッヒの気持ちも良く分かっている。アレクも帝国の未来の事を考えていてそのせいで寂しい思いもした。


 でも、国民の事を考えて行動するのが皇族や王族の勤め……エイリッヒもその為に私を誘拐までして王国に連れてきた。


 だが、やはり私を強引に王国に連れてきたエイリッヒのことを好きになるなんて考えられない。


 私の胸の中にはアレクがずっといるのだらから……


「ソフィア……気を紛らわせたいの。なにか本を読みたいわ……」

「はい。アリシア様が好きそうな物を持って来させます。少しばかりお待ちになって下さい」


 ソフィアはすぐに遣いの者を呼び寄せて本を用意させる。


 少ししてメイドが本を数冊抱えて部屋に入ってきた。


「ソフィア様。頼まれていた本をお持ちしました。私達の間で流行っているものですが、アリシア様の年頃の娘に人気な物ですので、きっとアリシア様もお気に入りになられると思います!」

「そう。ありがとう……また、おすすめの物があれば持ってきて頂戴」

「はい! それでは失礼します!」


 メイドはそう言って一礼すると、部屋から出ていった。


 私はメイドからおすすめされた本を読み始める。


 その内容は殿方と殿方の濃厚な友情を描いた作品だった。


 男女の恋愛を描いた物語とは異なり、どこか見てはいけないものを見ているような背徳感もあって読んでいて新鮮な感情が沸き上がってくる。


「……これは面白いですわ」

「この手の本は街の娘達から広がって、今は貴族の娘を中心にまで広まり始めています。私も何度か読んでいるので……アリシア様。気になるのでしたらお貸し致しますよ?」

「私は……その……お借りしてもよろしいのですか?」

「はい」


 私は一度考えたが欲望には逆らえない。


 ソフィアに恥ずかしそうに聞き返す私に、ソフィアはわずかに微笑みながら頷いた。


 私はソフィアからおすすめの本を数冊貸してもらうと、それを貪るように読みふけった。


 殿方同士の恋愛?友情?のようなやり取りを妄想するのは、この軟禁されたような生活ではひとときの癒しのように感じた。


 足も怪我であまり動くわけにもいかない今は、読書に集中できるのもありがたい。


 私は本を読みながら暖炉の前の椅子に腰掛けて紅茶をすすった。

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