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11話 雪国の王子様の過去


 雪降る国に拉致された私が足を怪我して動けない中、メイドに紹介された小説を読み漁っている間に、メイド達とも仲良くなっていた。


 やっぱり、読んだ小説の感想を言い合えるのは楽しい。


「姫様。もう、群青のレクイエムはお読みになりました?」

「はい! もちろん読みましたわ! 月を背にエイザック様とユミリオ様が抱き合うシーンなんか凄く感動致しましたわぁ〜」


 私がまぶたを閉じて小説の一幕を思い起こしていると、メイドも興奮したように熱のこもった声で言った。


「わかります、わかります! あそこのシーンは私も感動しました!」

「あと、あれも好きですわ! 追手に追われて矢を受けたエイザック様が滝の中に吸い込まれたシーン……あれはもうダメかと思いました」

「はい! あそこは私もエイザック様が亡くなってしまったと思って、泣いてしまいました……」


 メイドと話しているとそこに紅茶とケーキの乗ったカートを押してソフィアがやって来る。


「あら、それは群青のレクイエムの話ですか?」

「そうなの! 群青のレクイエムは最高でしたわ!」

「今、街でも流行っていますからね」


 手際良くソフィアがティーカップに紅茶を注ぎながら話に耳を傾けていた。


「ソフィアも読みました?」

「いえ、私はまだ読んでいません」

「それはいけませんわ。あれを読まないなんて人生を損してますわよ」

「そこまでですか。なら、読んでみることにしますね」

「ええ、是非。読んだら教えて下さいね! わたくしもソフィアと感想を語り合うのを楽しみにしてますわ!」


 私は彼女ににっこりと微笑むと、ソフィアもまた、私に微笑み返した。


 群青のレクイエムは暗殺者として敵国に送り込まれた少年が、暗殺対象であるその国の王子に惹かれていくストーリーで、このアイスディア王国で女性達の間で大人気の小説である。


 年中雪の降るこの国では火を使う製鉄所が多く、それに伴って細工師などの技術職が多い。


 また外は常に極寒であり、娯楽が少なく小説など家の中で完結する趣味に人が集中する。


 メイド達との交流を通して、私も少しずつここでの生活に慣れてきていた。


 言葉遣いや仕草は演技をして作ってはいるが、心の中では安らぎのようなものも感じ始めている。


 しかし、やはりアレクに逢いたい。心にぽっかりと穴が空いているような虚しさが心の中にはいつもあった。


 メイドと小説の話を終えると、紅茶とケーキを口にして少し落ち着く。

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