誘拐された先は雪国。6
翌日。私が目を覚ますと、目の前にソフィアの顔があった。
「わっ!! な、なんですか!?」
私は驚いて飛び起きると、ソフィアは無表情のまま頭を下げる。
「……申し訳ございません。アリシア様の寝顔があまりにも可愛らしかったもので……」
「…………ッ!!」
私は顔を赤らめると、恥ずかしそうに頬を染める。
ソフィアは微かに微笑むと、そんな私の姿を見て言った。
「本当にアリシア様は可愛らしい方ですね……」
「……もう。やめて下さい」
私は真っ赤になった顔を布団に埋めてソフィアから隠れた。
そんな私をソフィアは見て少し悲しそうな顔をした。
「アリシア様。足の包帯を変えましょう……よろしいですか?」
「あっ……ええ、よろしくお願いしますわ」
私は足をソフィアの方に向けると、傷口を覆っている包帯を丁寧に剥がしていく。
傷薬を塗って新しく巻き直すソフィアは真剣な眼差しで私の足を見ていた。
「……傷薬の効果もありますが、アリシア様の治癒力が高いのか傷の治りが早いですね。これなら数日でまともに歩けるようになりますよ」
「そうですか……」
私は傷だらけの足の傷跡を見ながら少しホッとした。
足が治れば隙を見てまた抜け出すこともできるかもしれない。
心配してるであろうアレクに一日も早く会って、彼を安心させてあげたい。
「アリシア様……エイリッヒ様を恨まないであげて下さい」
「……えっ?」
私はソフィアの顔を見て目を丸くさせる。
「エイリッヒ様がアリシア様を誘拐したのは、国の為なのです……この痩せた土地に作物を実らせるのは困難です。魔法でも使わない限り……武器や防具、工芸品などで国は栄えてはいますが、それは見せかけの繁栄。他国からの食料の輸入で国民は命を繋いでいます……しかし、一度食料の輸入が止まればたちまちこの国は滅びます。エイリッヒ様はそれを分かっているからアリシア様をこの国に招くしかなかった。例え誘拐という形を取ったとしても……」
「事情は分かりました。けれど、私はやはりアポロノーゼス帝国に帰りたい!」
私がソフィアの顔を見つめながら言うと、切実な私の表情を見たソフィアは悲しそうな顔をしてうつむく。
「……残念ながら、それは叶いません。アリシア様はこの国の妃になるのです。それは決定事項ですから……」
「勝手ですわ! 私には帰る場所があり、あなたもそれは分かっているでしょう? それで恨むなと言うのが無理というものですわ!」
私が声を上げていると、部屋のドアが開いてエイリッヒが入ってきた。
「アリシア嬢。なにかありましたか?」
涼しい顔をしてそう言ったエイリッヒに私が叫んだ。
「私を帝国に帰して下さい! もう耐えられません! アレクの元に私を帰して下さい!」
「……それはできません」
エイリッヒは少し申し訳なさそうに言った。




