誘拐された先は雪国。4
「どうなのですか?」
「……はぁ~、はい。出来ますわ」
「本当ですか!! なら…………」
「…………ですが、私の力はアレク様のものですので……貴方達の御力にはなれません」
一瞬、瞳を輝かせたエイリッヒに私は申し訳なさそうに返した。
これでいい。私が自由に力を使えないと嘘をつくことで、誘拐したことが無意味だと悟るだろう。
力はあるが帝国の制約によって使用できない。そう思わせられれば、命までは取られず上手くすれば解放してもらえるかもしれない。
「私の力は帝国の中でしか使用できません。アレク様の許しがなければ、私は役立たずのただの娘……貴国の御力にはなれませんわ……」
私はうつむきながらそう言って表情を曇らせた。
いや、そう演技してみせた。
「そうですか……」
エイリッヒは残念そうな表情を見せると、静かにうつむいた。
その後、顔を上げると吹っ切れたように私の手を取って微笑む。
「ならば、アリシア嬢。僕と婚約して頂けますか?」
「……は?」
(……いま、なんて?)
私が呆気に取られていると、エイリッヒがもう一度私の瞳を見つめながら言い直す。
「僕のお嫁さんになってほしいのです!」
「えっ……ええええええええええええぇぇ!!」
驚きの声を上げた私の手を握ると、エイリッヒはにっこりと笑う。
「魔法が使えないのは理解しました。だけど、子孫の時代にアリシア嬢の魔法を使える者が現れればこの国は救われます……なので、僕と結婚して下さい」
「……そんな打算的な告白ってあります?」
「打算から始まる愛もあると僕は思います……」
そう言ったエイリッヒの顔は真剣そのものだ。
だが、私にはアレクという婚約者がいる。エイリッヒには悪いが結婚は無理だ。
「気持ちは嬉しいですわ……でも、私にはアレク様という婚約者がおりますの! 結婚はできませんわ!」
「……それなら、僕が先に貴女を貰ってしまえばいいでしょう? 必ず幸せにしてみせます」
「だから! 婚約者がおりますの! 私には、エイリッヒ様の申し出はお受けできません!」
私が頑なに否定しながらエイリッヒの手を振り払う。
その直後、エイリッヒは私の肩をガシッと掴んだ。
「アリシア嬢……貴女は既に僕のものです。拒否するなんて認めませんよ?」
エイリッヒは私の瞳を覗き込みながら甘い声でささやく。
「嫌です! 離してください! 私はすでにアレク様のものなんです!」
「強情ですね……ますます僕のものにしたくなりました。ですが、無理矢理は僕の本意ではありません……」
エイリッヒは私から離れると、部屋の扉へと向かう。
「とりあえず、僕とこの国を知って頂きましょう! 時間はたっぷりありますからね! その足では思うように動けないでしょう? 使用人を用意しますから、困った事があれば言って下さいね」
そう言ってエイリッヒは部屋から出て行った。




