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誘拐された先は雪国。3

 彼は私の方にゆっくり歩いて来ると、手を差し伸べた。


「私はアイスディア王国の王子エイリッヒです。貴女が辛辣令嬢ですか?」

「あら、私をご存知ですのね?」

(……この人。私を知っている……なら、演技した方がいいかも……)


 私は彼を睨むと彼の伸ばした手を弾く。


「それは結構ですわ……一人で立てますから……くっ、うぐっ!」


 立ち上がった私は足の痛みに再び地面に座り込む。


 足を見ると裸足で走っていたからか、霜焼けと細かい傷で真っ赤に腫れていた。


 冷たく感覚がないおかげで、普通にしてれば痛みはさほど感じないが地面を踏みしめると激痛が走る。


「……申し訳なかったですね」

「あっ……ちょっ、なにを!?」


 地面に座り込んでいた私の体をエイリッヒは軽々と抱え上げる。


 私をお姫様抱っこして抱え上げたまま彼は歩き出す。


 長い廊下を歩いた先にあるのは部屋に入ると、エイリッヒは私を暖炉の前に降ろして、私の真っ赤に腫れて傷だらけの足を両手で覆った。


「な、なにをするつもりですか!?」

「……僕のせいですので……はぁ~」


 エイリッヒは私の足に顔を近づけると、温かい息を吹きかけて擦り合わせて熱くした両手で私の足を丁寧に包み込む。


「そんな事を一国の王子がなさらなくても!」

「……いえ、僕がやりたいのです。こんなこと、なんの贖罪にもなりませんが……」


 そう言ってエイリッヒは私の足が暖かくなるまでずっとやり続けた。


 その後、暖かくなった私の足に薬を塗って優しく布を巻くと、私を抱えて部屋の椅子に座らせた。


「それで……貴方は何故わたくしのことをご存知なのですか?」

「有名ですよ。元婚約者から婚約破棄された辛辣令嬢を婚約者に選んだ物好きがいると……ただ、虐げられているようではなさそうですね。こんなになるまで懸命に走って戻ろうとするんですから……僕も質問してもよろしいですか?」


 エイリッヒは少しがっかりしたようにため息を漏らすと、真っ直ぐに私の顔を見つめた。


 その瞳はどこか悲しそうだった。


 彼の瞳を見つめた私はゆっくりとエイリッヒに頷く。


「貴女は魔法で食物を一瞬で育てられると聞きました……本当でしょうか?」

「…………んっ!」

(……悪い人には見えない。でも、言っていいの? だけど、もし私がここで魔法を使えないと言えばどうなるか分からないわ。ここは私に利用価値があると思わせないと……)


 私はエイリッヒの真剣な瞳を見つめながら考えを巡らせる。

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