誘拐された先は雪国。2
「……お前。どこから入った?」
「は? 入ったもなにも姫の見張りに部屋に居たぞ?」
「……そうか。お前、随分と声が若いな。まるで女のようだ……所属は?」
「はい?」
私を疑うように周りをぐるぐると回る。
いぶかしげなその視線に私は甲冑の中で冷や汗を流していた。
「かぶとを取れ。実際に確認する……」
「や、やめて下さい!」
兵士が頭に手を掛けた直後、私は兵士を階段から突き落とした。
「うわああああああああああああああっ!!」
兵士が階段から転がり落ちるのを見て、私も急いで階段を駆け降りる。
その直後、甲冑の重さのせいで足が絡んで一気に下まで転がり落ちた。
かぶとの中から世界が上下左右に回るのが見える。
「……助けてアレク」
小さく祈るようにささやくと、目を瞑ってガシャンガシャンと転がり落ちる音が止むのを待った。
「うぐっ!!」
先に落ちた兵士の上に落ちた私に踏み潰される声が響く。
「…………助かった」
私はそこでやっと目を開けた。
甲冑のおかげでなんとか無傷で済んだ。
私は重い甲冑を脱ぎ捨ててふらつく足で逃げる為に必死に走り出した。
階段の上の部屋からは兵士が落ちた騒ぎを聞きつけて私の逃げたことを見張りの兵士が伝えていた。
「捕虜が逃げたぞー!!」
私は走り難いヒールの靴を脱いで裸足のまま一面銀世界の外へと飛び出した。
雪の積もった庭園を駆け抜けて城門を目指す。
雪を蹴る度に雪を踏みしめるミシミシという音がする。
その時、背後から男の声が聞こえた。
「追え!! 絶対に逃がすな!!」
振り返ると甲冑を鳴らしながら兵士達が追いかけてくるのが見えた。
「はぁっ! はぁっ! はぁっ!」
足が冷たくて感覚がなくなるのも気にせず全力で逃げる私の白い息が口から吐き出される。
「逃げられると思うな!」
「はぁっ! はぁっ! はぁっ! 痛っ……」
木の根に足を取られ、地面に強く体を打ち付けた私は前に倒れた。
体を地面に強く打ちつけた衝撃と、雪で冷たくなったせいで私の足が動かない。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「手こずらせやがって……もう逃げられないぞ?」
兵士達が槍を持ってじりじりと近づいて来るのを体を震わせながら怯えた瞳で身を縮こませる。
(もう……だめ……アレク!)
そう思った私が強く目をつむった瞬間、周囲に何者かの声が響いた。
「兵士達よ! 彼女に手荒な真似はするな!」
「……誰?」
その声の方には青い髪に青い瞳の少年が立っていた。




