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波を感じて  作者: 石芋
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13話

「え、ちょっと急じゃ」


そう口を開くも少し遅かったのか、教官らしき人は左足蹴りの予備動作に入っていた。

腕で咄嗟に庇おうと考えたが、威力が分からない蹴りを腕で受け止めるのは流石に無謀だ。専門的なトレーニングをしている人だとすれば尚更ダメだ。

左側に重心を持っていきつつ、姿勢を下げる。

視線はミドルもしくはハイキック。更に姿勢を下げると同時に脚が飛んできた。当たるかと思ったが、耳で風圧を感じるレベルに抑えることが出来た。

その流れのまま右足で残った足を払って背中を着かせても良いが、それをしてしまうとバク転で回避される可能性がある。そもそもスピードが足りない。

そのため、右足を相手の残り足に引っ掛けないように回し、体ごと左足を回して姿勢を崩しに掛かる。特に左足は相手の膝の可動部に引っ掛ける。

教官らしき人は、まさかそう来ると思っていなかったのか判断が遅れて思い切り前に倒れる。


「ゔふ」


まぁまぁ大きい打撃音と一緒に教官らしき人の声が出る。


「あっ!すいません大丈夫ですか!?」


「大丈夫だよ、、予想出来てなかっただけ」


教官らしき人はほんの少し悲しそうな顔をしながら話す。


「とりあえずこれで終わりだから、受付に行って紙袋に入った銃貰ってね」


「はい、ホントすいませんでした」


お辞儀をしてから出ようとした時、声を掛けられた。


「あ!俺橋本京助!また会ったらよろしく!」


もう一度お辞儀をしてその場を後にした。



「心外だな。お前があれに対応出来ない筈が無いだろう?」


「いやいや、意外と凄かったですよ。もしあのまま右足を振り抜いて姿勢を崩しに来てたら側転使って回避してました。でもあの子はそれを選ばなかった。相当こういうのに慣れてますよ」


「慣れてると言ってもお前は5年程練習してるじゃないか。それをかなり年下にあっさり越されるのはどうなんだ?」


「5年って言っても毎日練習してる訳ないじゃないですか。それと、練習というか技を使う状況がまるっきり違います。こっちは道場で作られた場面の練習をしているのに対し、恐らくあっちはほぼ本番。だとしたらああいうその場で技を考えて出すことに関してはそこら辺のプロよりよっぽど上手いですよ。一度部長もやり合ってみますか?」


「そんなこと無理に決まってるだろう?第一、お前にも勝てないんだぞ」


「どうですかね。銃とかなら勝てそうですけど」



「結構柄の入った紙袋ですね。防犯とかそういう目的ですか?」


受付で受け取った紙袋は水玉模様の入った少し豪華な袋だ。


「そうですね。そういった柄にしておくと百貨店等の紙袋と似ているのでひったくられにくいという効果もあります」


「へぇー、そうなんですね」


その後、会社へ渡す手続き用書類を持って家へと帰った。


「あぁー、今日ホントにしくじったなー」


ふと先程の事を思い出す。


「なんで橋本さんあそこでミドルキック出したんだろう、顔見たけどあの人余裕そうだったよな」


頭の中で少し考える


「小手調べだと思って試した、、?うーん、まぁ勝てたし良いか」


その後洗剤に浸けておいた手袋を30分くらい洗ったが、まだ血液が残っていた。仕方無いので、手袋の血を完全に落とすのは諦めて乾かすことにした。その後は洗濯や家の掃除等の家事全般、昼食は外で済ませて久し振りに昼から寝てみることにした。


「あんまりこういうのやっちゃダメだけど今日くらいは良いよね」


微かな罪悪感を抱きながら目を閉じる。



「ゲームとかで良くあるだろ?ほら、こういう状況っていうか」


今回は顔がしっかり見える。加賀さんだ。


「すいません、あまりそういうもの触らないんですよね」


考えなくても口が動く。周囲をしっかり見ると、ログハウスの中らしき場所である事が分かった。加賀さんの事だから、こういう場所について詳しいのだろう。


「なんだ、てっきりゲームやりまくってるのかと思ってたのに。人は見かけによらないって本当なんだな」


「自分には時間が無いので、、」


言葉と言葉の間に割って入るようにして玄関の方から爆発音が聞こえる。それと同時にテラスへと続く窓の方に人影が見える。


「こんな時間に誰だよ!」


即座に加賀さんと自分は銃を取ってキッチンに身を隠す。マガジンを確認すると実弾しか入っていなかった。


「くっそ、実弾しか無いです!そっちは!?」


「悪い、こっちも実弾しか無い」


運が悪すぎる。何故こういう時に非殺傷が入っていないのだろうか。


仕方無いのでキッチンから少し体を出し、銃の照準を窓付近に置いておく。

爪先らしきものが見えたので1発射撃。


「ぐぁっ!」


窓の方から声。当たったのだろう。

少し間を置いてから口が動く。


「自分は前に出るので加賀さんはカバーをお願いします」


「おい、それ大丈夫か?」


「加賀さんを助ける為です」


そして自分はキッチンから飛び出して窓付近へ威嚇射撃しながら玄関へと向かった。

しかし、目の前には銃を構えた人が1人。

体を一瞬だけ動かせたが、視界が暗転する。



「やっぱ身近な人が被害に遭うのを見るのは慣れないな、、」


時計を見ると午後8時くらい。早めに会社へと向かうには丁度良い。が、その前にノートへ間取りだけ書いておく。


「今日のシチュエーションはちょっと衝撃凄かったからしばらく忘れられないな」


間取りを書き終わった後、警察署で貰った引き継ぎ書類を書き、会社へ向かった。

拳銃について

ミッションによって様々です。例えばプロローグのような超短期間ミッションだとマガジンを変える暇がないので、実弾入りと非殺傷弾入りの2丁持っていきますが、8話であったようなシチュエーションだと多くの場合1丁だけしか持っていきません。2人居るという状況も影響しています。1人がマガジンを変えている間にもう1人がカバー出来るので、わざわざ2丁持って荷物を増やさなくて済むのです。

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