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波を感じて  作者: 石芋
13/15

12話

「そもそも、なんでそんなに何百発も練習するんですか?もう十分精度高いと思いますけど」


また1発射撃した。そして蒼井さんは視線をスコープから離し、こちらに向けながら喋る。


「それじゃダメなんだよね。いざって時に役に立てなかったら存在意義が無くなっちゃう。自分は前線で活躍するよりも後方から有益な1発を叩き込む方が好きだから、ここぞで外しちゃダメなんだよ」


蒼井さんは一拍置いて話を続ける


「で、今2バツ目」


「えっ、なんかすいません。話掛けちゃダメでしたね」


「いやいや、自分の責任だよ。実戦だと話しながら撃つわけだから。ただ、こっから外さなければ良いだけ」



「今思ったらあの時に聞いといて良かったですよね。確かあの後一言も話さないで231発目まで行ってましたから」


数秒の間沈黙が挟まる。


「まぁ一週間後くらいにまた会いましょう。その時にはもう退院してる筈ですし」


病室を後にする。家路はまだ暗く、明かりがほぼ点いてない。家のベッドで横になり、今日の疲れを取る。意外にもすぐ寝付け、目を瞑った瞬間に朝になったのかと錯覚する程だった。


「おはよ」


「お!おはよう!」


有野が前を歩いていたので話し掛けた。


「有野って家こっちだったっけ?」


「コンビニでちょっと買い物したかったからこっち来た感じ~、あ!そういえば!」


有野は思い出したかのようにスマホを取り出して画面を見せつけてくる。


「ここら辺で爆発事故起こったってさ!これ見て見て」


記事には自分が昨日行った場所。文章を読むと、一瞬驚いた後、目が少し泳いだ。その一文とは、

【現場付近に落ちていた瓦礫と拳銃型の装置を証拠物として保管し、県警は事故原因の調査を進めています】

だ。ミスった。処理するべき物として血の付いた瓦礫を申請するべきだった。そしてまさかあの銃を忘れると思ってなかった。


「ごめん有野!今日ちょっと休むわ!先生に体調不良って言っといて!」


「おい!急にどうしたんだよ!」


走って家まで帰る。家に帰って私服に着替え、社員証を持って会社へと向かう。


「職質で使うと思ってたのにな」


いつも通りエントランスの人に身分証明をしてから階段を登り、ロビーに入る。


「ホントにすいません、、まさか報告忘れをすると思ってませんでした」


「大丈夫大丈夫。ただ、こっちで物品の回収とか捜査打ち切りは出来ないからよろしくね」


まぁそうだろう。そして自分は県警本部へと向かった。


「ご用件は?」


「今日あった爆破事故の指揮を執っている人に会いたいです」


「少々お待ちください」


電話を掛けている。恐らく内線だろう。数分待った後、応接室へと通された。

応接室は思ったほど豪華ではなく、どちらかといえばセキュリティ重視だと感じた。応接室は2つあったが、もう片方は恐らく豪華さ重視なのだろう。つまり少し不審がられている。


「どうも」


恐らく今入ってきて目の前に座った人が指揮役なのだろう。しかし、指揮役とは別で後ろに一人居る。しかも殆ど音を立てなかった。まるで密かに護衛をするかのように。


「早速だけど用件を伺っても?」


「はい。その前に後ろの人を部屋から出して貰えますか?」


顔が少し強張った。気付かれていないと思っていたのだろう。少し考える素振りを見せた後、口を開いた。


「だそうだ。ということで部屋から出て貰えるか?」


足音が部屋の外へと移動する。念のために失礼を承知して後ろを確認したが、人は居なかった。


「本題に入ります。捜査を打ち切りに出来ないでしょうか。そして証拠品として保管している拳銃型の装置を渡してください」


「急に何を言ってるんだ?」


社員証をテーブルの上に置いて差し出す。


「E5561という番号がその銃のスライド部分に彫られていた筈です。これらの情報で証拠になりますか?」


男はカードを手に取り、注意深く見た。溜め息をついたかと思うと、こちらを向いて話し始めた。


「自分も話には聞いていたよ。こういう組織が県内にあるから頭に入れとくように、と。ただ会うのは初めてだな。まさかこんな若い人がやってるとは思ってなかった」


「あぁ、知られてましたか」


「せっかくこういう機会が出来たんだ。1つお願いがある」


「良いですよ。今日は空いてるので」


そう返事すると指揮役の人はスマホを操作して1つの資料を見せてきた。


「署内に室内運動場があるんだが、いくつか体力試験を受けて貰えないか?そんな企業で働けるスペックに興味が出てきた」


「具体的には?」


「運動場に行けば分かる」


これ以上の条件が来ることは無さそうだと判断したため、仕方なく運動場へと向かった。思っていたよりも中は広く、バレーボールがギリギリ出来そうなくらいだ。


「そこら辺にシューズあるから使ってね」


さっきの指揮役が直接測定するのかと思っていたが、意外にも若い教官らしき人が出てきた。20代前半に見える。


「えーっと。まず筋力からやってみようか。20秒間腕立て伏せしてみてね」


30秒後


「ちょっとキツいですねこれ」


「20秒で25回、と」


その後は動体視力や反射神経も測ったが、最後だけさっきの検査とはまるっきり違った。


「じゃあ最後、これは測定とは関係無いんだけど、一回手合わせして貰っても良いかな?武術縛りは無し、先に姿勢を崩して胸、もしくは背中を地面に着けた方の負けって事でどう?」


「それだけですか?」


「そうだね。じゃあ始めるよ」

社員証

中にICチップが入っているらしいが、自分はあまり使うことがない。血液型や身長体重だったり、処方された薬の情報までもが管理されていたような気がする。それもそのはず、もし命に関わるようなことが起こった時にこういった情報が必要だからだ。特に緊急時の麻酔やアドレナリン投与の時に。

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