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五大老筆頭 徳川家康  作者: 牛熊


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10.関ヶ原の戦い -5

 8月24日。

 上杉家の抑えとして宇都宮に滞在していた徳川秀忠は、東海道を進む家康とは別部隊として、中山道を進み真田家の脅威を排除すべく進軍を開始した。


 この部隊は元々上杉家を攻めるための軍勢であり、徳川家の重臣や譜代の家臣で構成される主力部隊のため、総勢約3.8万人と家康本人が率いる軍勢よりも多くの兵を抱えている。


 真田家自体の兵数は多くないにせよ、兵がいなくなった徳川家の本拠地近くで暴れられるのは面倒この上ないため、後方の安全確保のため真田家の討伐が命じられたのだった。


 真田家の領地ということもあり、元々住んでいた真田信幸を案内役として、昌幸が籠もる上田城を攻略する手筈となっていた。




 秀忠は9月2日に小諸に到着。


 そして、翌日3日には秀忠の元に降伏と助命を嘆願する昌幸からの使者が届く。



「......分かってはいましたが、こうもあっさりと降伏を言い出すとは」


 降伏の知らせを受けた秀忠は苦虫を噛み潰したような顔をする。


 家康から昌幸のことは聞いていたが、重要な時期に徳川家を裏切っておきながら、平気で助命を求める昌幸の面の皮の厚さには怒りすら湧かない。


 ただ、昌幸に先手を取られたのは間違いなく、この降伏の使者を送ることも当初から計画に入っていたと考えると気が重くなった。



 渋い表情をする秀忠を前に、使者の仲介役である信幸は居心地悪そうにする。


 ただ、それでも与えられた仕事を果たそうと秀忠に助言を試みた。



「秀忠様。ご承知かと思いますが、この降伏は間違いなく罠です」


「...そうでしょうね。我々を城内へと引き込み討つか、素通りさせてから背後を襲うつもりか」


「もしくは、単に揺さぶりをかけているだけか。交渉で時間を浪費させるのが目的かもしれませんので、城攻めの準備は進めておくべきです」


「分かりました。それでは、信幸殿は戸石城を攻める準備をお願いします。上田城の方は我々が担当することにしましょう」


「一応、父には降伏を受け入れるという回答をしておきます。一応ですが...」


 2人は頷き合い軍の手配を始める。


 あの昌幸を素直に信じる者は徳川陣営には誰もいなかった。




 信幸は裏切り者の縁者ではあったが、徳川家からは信頼を置かれており、真田攻めにおいても秀忠の指示の下、他の武将たちと同じく戦力として扱われていた。


 昌幸も信幸が重用されていることを見越していたのか交渉の仲介役として利用しており、どこまで計算してやっているのかと徳川家の面々を暗澹たる気持ちにさせることに成功する。





 翌日9月4日。

 昌幸が約束していた降伏を撤回。


 しかも約束違反を問い詰める使者に対し、気が変わったので戦うことにしたからかかってこいそもそも徳川家には大義がない云々と挑発のおまけ付きである。


 これにより昌幸は仲介役となった信幸や、降伏を受け入れた秀忠の面子を見事に潰した。



「......父がご迷惑をおかけして大変申し訳ございません」


 信幸は秀忠にひたすら謝罪することしかできなかった。



「いやまあ、予想していましたので怒る気にはならないんですが、なんというか信幸殿も大変ですね....」


 自分の息子すらいいように利用する昌幸を前にすると、秀忠は振り回される信幸に同情するしかなかった。


 秀忠と信幸は周囲が認める偉大な父を持つという点で共通していたが、偉大さの方向が違うとこんな目に合うのかと秀忠は驚愕する。


 しかし、父親に振り回されたばかりというのに、信幸は何事もなかったかのようにすぐさま立ち直り、作戦を秀忠に提案し始める。



「それでは予定通り、私は戸石城の方を攻めて参ります。本格的な攻勢は戸石城を抑えてからということで」


「あっ、はい。それではよろしくお願いします」


 信幸が当たり前のように動き始めるのを見て秀忠は虚を突かれるが、信幸が父親の下で働かされていたことを思い出し、信幸の優秀さがどうやって培われたのかをようやく理解した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これは天下の飾りたるべき御大将。 あのタヌキ親父の下で振り回されて鍛え上げられた上に性格も良し、と来たら江戸の重鎮らもこぞって教え請うわな、と。
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