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五大老筆頭 徳川家康  作者: 牛熊


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9.会津征伐 -7

 慶長5年7月19日。

 徳川秀忠が率いる第一陣の出陣を見送った家康の元に、五奉行の増田長盛から急な知らせが届く。



「石田三成殿が大谷吉継殿と謀議?謀反の可能性有り?.......いや、どう考えても虚報だろ」


 三成の謀反。


 現実的に見て勝算があるようには思えず、加えて三成は会津征伐への協力を申し出ていることから、当初家康はこの知らせを全く信用しなかった。


 また、この時点では三成の矛先が家康ではなく豊臣家という話もあり、なおさら信憑性に欠けている。



「言い方は悪くなるが、政権内からの突き上げで失脚した三成殿が謀反を起こしたところで、一体誰が追従するというのだ?軍備を増強していたとはいえ、佐和山19万石では兵数も限られているし、大阪城を制圧することは難しいだろう。というか、三成殿の豊臣家に対する忠誠心はワシも信用しているぞ」



 しかし、翌日になると上方の他の大名たちからも同様の知らせが入り始める。


 しかも三成の謀反という話に留まらず、五大老の毛利輝元も挙兵に参加したというおまけまで付き始める。


 会津征伐軍もにわかに騒ぎ始めるが、この話を受け入れ難かったのか、家康は予定通り21日に会津へ向けて出陣してしまう。


 その家康を追撃するかのように、24日に伏見城の留守役を任せた鳥居元忠から急使が届き、遂に家康は上方で謀反が起きたという事実と向き合わざるを得なくなった。




「会津征伐は中止!各大名にもその旨伝えろ!先行している秀忠にも急いで連絡しろ!」



 この時の征伐軍はかなり混乱しており、指示に関しても二転三転している。


 三成・吉継の両名が謀反を起こしたため奉行衆や淀君から上洛を要請されたという書状がある一方で、数日後には奉行衆が謀反を起こしたという話に変わっていたりする。


 当時は情報のやり取りに時間がかかるというのもあるが、そもそも知らせを送っている者たちも詳細が掴みきれていないため、人によって内容に齟齬が生まれるのは仕方がない。


 しかし、情報を受け取る側からすればたまったものではない。


「上方では一体何が起きているのだ!?状況が全く分からん!」


 そういった知らせが矢継ぎ早に届く家康からすれば、最早何が真実なのかも判断がつかなかった。


 ただ、家康は元忠からの知らせを信じ、上杉家の抑えを残して上方へと引き返すことを決断した。





 一方、問題なのは残された上杉家と東北の大名連合である。


 家康の転進を受けて、会津征伐の中止を察知した上杉家は徳川家を攻めず、かねてから狙っていた東北へと進軍を開始する。


 上杉家の動きを見るや否や、東北の大名たちは形勢不利と判断してあっさりと軍勢を解散し、自領へと引き上げる。


 伊達家が友軍の領地で一揆を扇動し足を引っ張っていたというのもあるが、当の伊達家は誰よりも早く上杉家と和睦しており、裏切り・寝返りが日常的に行われるいつもの東北の展開を見せていた。




 この状況で追い込まれたのが最上家である。


 会津征伐の前には上杉家に内通して情報を漏洩していたにも関わらず、上杉家からは和睦を拒否され、単独での防衛を余儀なくされてしまう。


 最上家は南部家などと相互防衛の誓詞を交わして共同防衛を図るが、他家たちは家康が来ないとやる気を見せるつもりはなく、積極的に最上家を守ろうとはしなかった。



 最上家は兵数差がある中、死にものぐるいで籠城・奇襲などで粘り続ける。


 上杉家も数で押し潰しつつ、嫌がらせで稲を刈ったりと戦いは泥試合へと突入。


 最終的に両者の争いは時間切れで幕を閉じることになる。



 かくして、豊臣政権崩壊の引き金を引いた上杉家だが、結局揉めに揉めた徳川家とは直接対決しないまま後の世を迎えることになるのだった。

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