6.豊臣政権の崩壊 -4
秀次の関係者は広く処罰されたが、一方で処罰を避けられた者たちもいる。
毛利家は秀次から借金があったにも関わらず、最終的に何の処分も受けていない。
また秀次と仲が良かった伊達政宗は、使者からの詰問に対し逆ギレすることで事なきを得る。
ただ最終的に処分が落ち着くまでは時間があり、当然ながら24日に家康が上洛した後も大混乱は続いていた。
家康は家臣を捕まえては指示を出していた。
しかし、指示を出したと思えばすぐに別の者が駆けつけ、新しい情報を伝えてくる。
家臣たちも必死に走り回っており、家康は誰と話をしたのかも分からなくなりつつあった。
「事情がさっぱり分からん!可能な限り情報を集めてこい!」
「かしこまりました!」
「秀頼様への忠誠を誓う起請文には秀忠が署名したんだな?」
「そのように聞いております」
「よし、立場的には処罰は免れそうだな...」
「失礼します。こちらは6月下旬からの流れをまとめた報告書になります」
「でかした!...切腹?秀次殿は磔ではなく切腹なのか?」
「はい、それは間違いありません。」
「ということは、謀反の処罰ではないというか。謀反が事実なら切腹で名誉を保持することは認められん。話を知っていそうなのは三成殿あたりだろうが、今の状況では捕まえられそうにもないな...」
「お忙しい中、申し訳ございません。主君を失った家臣たちが仕官先を求めて、各大名の元に訪問しているとの情報が入りました」
「徳川と関係がある者は名前をまとめておけ。それと、処罰された大名の領地は治安が悪化する可能性が高い。徳川領の近辺は警戒しておくように」
「聚楽第が破棄されるという話が伝わって来ました」
「嘘だろ。政務の本拠地だぞ!?」
「陰陽師をまとめて流罪にし、施設や資料も破棄するとのことです」
「なんで陰陽師?秀次殿寄りだったからか?」
家康が報告書を読みながら何とか状況を整理していると、また次々と別の者が部屋に飛び込んでくる。
「殿!助命嘆願を求める者たちが屋敷の前に集まっております!」
「ええい、報告書を読む暇すらないのか!並ばせて順番に中に通せ!」
「殿!細川忠興様の使者が借金のお願いに参ったとのことです!秀次様からの借金があり、当日中に借金が返済できないと処分を受けるとのこと!」
「ワシのへそくりから持っていけ!似たような話があれば事後報告で構わん!」
「殿!伏見から使者が参り、新規に法令を制定するので登城の準備をするようにとのことです!」
「関白抜きで法令を作るだと?どうやるつもりだ?というか手が足りん!」
「殿!」
「勘弁してくれ!」
こうして秀次切腹の真相は不明のまま、諸大名が対応に追われる中、豊臣政権の粛清が進んでいった。
諸大名からすれば事実を知りたいところだったが、下手に藪をつつけば秀吉の勘気に触れる可能性が高い。
今秀吉の目に留まれば、後ろ暗いところがなくともどんな扱いを受けるか分からないため、とにかく無事にやり過ごそうと余計なことには目をつぶる者がほとんどだった。




