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五大老筆頭 徳川家康  作者: 牛熊


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4. 小田原征伐 -1

 天正17年2月。北条家臣の板部岡江雪斎が上洛し、揉め続けていた沼田城の扱いについて秀吉の裁定を仰ぐ。


 最終的に沼田は3分の2が北条領、残りを真田領とする形で決着する。


 沼田の引き渡しは北条の上洛後とされ、引き渡しと合わせて真田に代替地を割り当てることが決められた。



 当時の秀吉は天皇から裁定を行う権利が与えられていたため、この裁定に逆らうことは天皇への反逆を意味する。


 そのため、流石の北条もこの条件を受け入れ、6月5日の北条氏直からの書状では、北条氏政を12月初旬に上洛させると回答。



 この北条の実質的な降伏宣言を受けて、7月21日に秀吉は沼田の引き渡しを前倒しで実施。


 真田にも沼田の代替地として信濃国箕輪が与えられ、これで関東の問題は全て解決となった。


 そして、この展開を誰よりも待ち望んでいた徳川家康は榊原康政と祝杯を上げていた。



「今日は記念すべき日だ!これで北条と真田の問題も全て解消。関東も秀吉殿の支配下となり、後は奥州が降伏してくるのを待つだけだな」


「本当に色々ありましたね。殿が調子に乗ってやらかした時はどうなるかと思いましたが。結局最後は豊臣に丸投げですし」


「結果良ければ全て良し!今は何を言われても許そう。今日は秘蔵の酒を出すぞ!康政、沼田引き渡しの時は立会を頼む」


「かしこまりました。徳川領内の検地も始まりましたし、ここからはひたすら内政の時代になりそうですね」


「いいことだ。田畑を耕し、流通を整備することで金を儲ける。実に素晴らしい。もう戦の時代も終わりだな」


「兵はどうするのですか?」


「故郷に戻らせて田畑を切り開かせるか、各地で行われる流通関連の普請に放り込む。戦で荒れた土地を直すのも必要だな」


「仕事が山積みですね」


「戦と違ってやった分だけ良くなる。こっちの方がよっぽどいいだろ」


「それは確かに。しかし、北条が今の領地を維持して臣従するとなると、豊臣政権の2番手は北条になります。殿はそのあたりいいんですか?」


「別に構わん。2番手が3番手になろうが、今の領地が減るわけでもないしな。それに、2番手は苦労が舞い込みやすい立場だし、面倒事は北条に押し付けていこう」


「そうしましょう。それにしても、あの小大名だった徳川がここまで来るとは...」


「今までのことを思い出すと泣けてくるわ。今日は飲むぞ!」




 家康と康政が祝杯をあげて騒いでいると、鳥居元忠が入室してくる。



「殿、報告があります」


「なんだ元忠。お前も一杯やるか?」


「仕事中ですので遠慮させて頂きます。北条ですが、下野方面で兵を動かしているようです。話題の沼田とは異なりますが、もし戦を起こすようであれば豊臣の惣無事令に違反することになります」


「いや、いくら何でも降伏宣言後にそれはないだろ...。真田と豊臣に向けて準備していた兵の再配置じゃないのか?」


「その可能性もあります。一応北条に動きがあったことだけご理解下さい」


「北条も関東全体に恨みを買っているからな...。まあ、周辺大名も秀吉殿に助けを求めた以上、自分達から戦を起こすこともあるまい。上洛の準備だけはちゃんとやるよう釘を刺しておこう」


「真田にも情報を共有しておきます」


「頼む。とはいえ、あちらも既に知っていそうだがな」


「真田の企みの可能性はございませんか?」


「ここで暴れれば真田は間違いなく秀吉殿に潰される。それが分からん者なら、とうの昔に消えておるわ」


「かしこまりました。念のため、北条が徳川方面の兵を動かさないかだけは注意しておきます」





 同年11月。完全に油断しきっていた徳川を悲報が襲う。


 11月3日に北条が真田領の名胡桃城に対し計略をしかけ、関係者を寝返らせ城を奪うことに成功。


 真田と北条間の領土問題は先日解決していただけに、完全に油断しきっていた関係者たちに衝撃が走った。



 これまで真田にいいようにやられてきた北条が一矢報いた形になるが、当然ながら先日の秀吉による裁定を無視したことは明らか。


 これにより北条と豊臣は一触即発の状況に突入。


 関東と家康に訪れた平和の時はあまりにも短かった。


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