5話目 【天才】
103号室の五月雨源人と 面会をした湖田家吏。
この面会について 重要なことをいくつか知ることができた湖田家吏は、
次の部屋、 104号室へと進む・・・・・・。
104号室までは、ゆったり歩いて進むことになった。そこで、気になったことをいくつか質問することにした。
「なあ、阿須雌」
「どうしたの?」
「この壁の赤い絵、誰がどうやって描いたんだ?」
僕は赤黒く描かれた花や飛沫を指さした。この花の名前は、知っている。・・・彼岸花だ。
「この彼岸花は、ペトラーナが描いたものだよ。花言葉は知っている?」
「いや、知らない・・・。なんていうんだ?」
「情熱、悲しい思い出、独立、再会、あきらめ、かな?今の柄堂君にぴったりじゃない?」
「悲しい、思い出・・・」
「あきらめ、とか柄堂君に必要じゃない?」
「画材はなんだ?絵具じゃない気がする」
「あれ?無視??酷いな~」
「描かれた花が命を持っているように見える。ペトラーナさんは絵がうまいんだな」
「そうだね~、まあ、悪魔だから!魔法でちょちょちょいっと!」
「あ、なるほど」
忘れてたけど、こいつのご先祖ってことは、ペトラーナも悪魔なんだよな・・・・・・。
「あと、画材は人間の血液だよ!だから、命を持っているように見えるんじゃないかな!」
「は?」
「ざっと、千人くらいかな?わかんないけど!」
それほどの人が・・・?
「この部屋自体も、人間の骨を魔法で強化して作った建物だからね~」
犠牲に・・・なっていたのか・・・・・・?
「柄堂君?もうつくよ??」
「・・・あ、お、おう・・・。」
不思議と、耐性がついているように感じた。それは、千人という現実味のない人数からなのか、自分の感覚がおかしくなっているからなのかは、わからない・・・。
「はい!104号室に到着です!今度こそ、女の人ですよ??」
「あ~はいはい、そうですか~」
「せっかく教えてあげたのに!!怒るよ!!!」
「ご丁寧にどうも。早くしよう」
阿須雌は頬をぷぅっと膨らませると、104号室の鍵を開けた。ドアを開けると同時に、下のほうから大声で・・・
「こんにちは!湖田家吏柄堂さんですよね~!!!待ってました~!!!」
と、僕の名前を呼ばれ、抱きつかれた。
「・・・え?」
驚いて下を向くと、推定小学3年生くらいの女の子が、笑顔をきらきらと輝かせて僕を見上げていた。
「ユモーラさん!こんにちは!」
「は~いこんにちは~!」
こ、子供・・・!?本当にこんな子と面会するのか・・・!?
「さ~ぁ、あがってくださ~い!」
「お・・・邪魔します・・・・・・」
阿須雌は僕のほうを見て可笑しそうに肩を震わせていた。
部屋の中は、大小様々なボールや玉で埋め尽くされていた。パチンコ玉、ピンポン玉、水晶玉、野球ボール、ソフトボール、テニスボール、バレーボール、バスケットボール、バランスボール・・・・・・。僕がわかるだけでもこんなに種類がある。壁には丸いシールが貼ってあったり、円がたくさん描かれていたりする。そのボールをころころと転がし、空いたスペースに座る女の子。なんか、あまりに似合いすぎていて、可愛い・・・。
「あ、私の名前は丸橋 美野里です!よろしくお願いします!」
「美野里ちゃん・・・だね。よろしくね!」
名前もなんかあってる!!!天使のような子だ!!
「まず、私がここに来たときのことを話しますね!」
「お願いします!」
「私の学校は、半年前にあった大水害で水没しました。廃校になる予定の学校だったので、老朽化が進んでいました。・・・・・・だから、学校に避難していた、私含めた近隣の住民は、すべて水に流されました」
・・・ん?なんか話し方がやけに大人っぽいというか・・・。
「そのとき、私は親友・・・まーちゃんとずっと手を繋いでいました。途絶えそうになる意識の中、まーちゃんはこう言いました」
「「死んじゃっても一緒だよ」」
小学生にしては、知っている言葉が難しくないか・・・?普通に賢いだけかな?
「そして、私たちは死にました。まーちゃんは、死んだ後、私を見捨てました・・・・・・。そう、3つ目の選択肢を選んだのです。今もはらわたが煮えくり返るような感覚です・・・。あは、あはははははははは!!!!!だから!私は復習してやるんです!!!みーちゃんが嫌いなキモオヤジたちをこの手で殺し、天国へ送りつけてやる!!まーちゃんは天国にいながら、地獄を味わうことになるでしょう!!!彼女は男性恐怖症ですからね!!!あっははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!」
待て待て待て突然変異してませんか美野里ちゃん!?
「ふふ・・・ふふふ・・・・・・。最初は凶悪犯罪者なんて怖かった・・・。これからが不安だった・・・。だけどね、柄堂さん・・・。あるとき、それがとても素晴らしいことだと思ったのです!だって、一番憎き相手をこの手で苦しめることができるんですよ!!!と~っても嬉しいです!」
この子は、狂っている・・・。何があってこんなことに・・・。きっと、普通の女の子だったはずなのに。
「柄堂さんも、これからこのような『転機』に巡り合えるといいですね!」
話し終えた美野里ちゃんは、最初会った時のような可愛らしい笑顔で僕を見ていた。
「あ・・・ありがとう、美野里ちゃん」
「ほかに話すことはない?」
阿須雌は僕に探るような視線を向けた。
「もう一つ、聞きたいことがあるんだけど・・・いいかな?」
「もちろんです!!」
「美野里ちゃんは・・・・・・、最初僕に会ったとき、率直にどう思った?」
「柄堂さんのことをですか?んふふ、聞きたいですか?」
「うん、できれば」
「柄堂さんの第一印象は、『天才』ですかね?」
「・・・は?」
て、天才・・・?
「人殺しに関して、天才的な感覚を持っているな、と思ったので。普通あの壁の話をされたとき、驚いて動けなくなったり、吐いたり、逃げ出したりすると思います。あのときこの部屋に、あなたの声が聞こえていましたが、あなたは特にそんな行動はしなかった。あなたは・・・もうこの施設に慣れすぎているんです。私だってこの部屋でくつろげるまでに至るのに、3週間はかかりましたよ。でもあなたは、次の日から、ごく普通に本まで読んでいると聞きました。だから、『天才』だと」
「そう・・・なのか・・・?普通じゃないのか・・・?」
わけがわからない。僕は、ぼくは・・・・・・?
「面会終了!!!お疲れ様!!」
突然阿須雌が手を叩いてそうい言った。
「もうお別れなんですね、柄堂さん」
「あ、うん・・・。美野里ちゃん、その・・・ありがとう」
「いいえ~こちらこそ!」
失礼します、とドアを閉めようとしたとき、彼女の唇が
あ
な
た
は
も
う
に
げ
ら
れ
な
い
と、ささやいたようにみえた。
「次の105号室には、部屋に入って9か月くらいの人がいます!」
阿須雌は僕に向かってそう告げると、こう付け加えた。
「105号室の住人はこわ~いから、気を付けてね?」
添削したものを、comicoでも連載しています!
楽しんでいただけたら嬉しいです!!




