表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Not Perfect World(打ち切り)  作者: 有栖
第3章 それはとある勇者達の物語
16/19

#4 魔王と聖剣

「あの飛んでるのは...人なの!?しかも人がどんどん影に...」


「魔王だ。ああやって人の魂を吸収して己の力にしている。あの人影はただの抜け殻だ。」


クラリスが状況を説明する。


「でもユーリ、私達が知ってる魔王と全然違うよね?」


「確かに俺の村を襲った魔王とは違うな。」


リリーナ達が知っている魔王は黒いフードのついたコートを着た、リリーナより同じぐらいの小柄な背丈だ。

しかし、目の前の魔王は禍々しい装飾のついたいかにもな甲冑を着た長身の男性なのだ。


「つまり過去に居た魔王と現代の魔王は別人ってこと?」


「そういうことになるな。復活と言っていたが、それでは俺の村を襲った年と辻褄が合わないな。」


考えても謎が深まるばかり。

最近色々なことが起こりすぎて頭が追いついていない。


「まずこの状況をどうやって切り抜けるかだ。クラリス、どうすればいい?」


「...まだ海側は無事のようだ。船に乗り込んでここから逃げたほうがいいだろう。だが魔王に見つかったらアウトだ。力の補給が出来るここで戦っても勝ち目はない。」


魔王は人の魂を吸って己の力にする。

魔王の力がどれほどかは分からないが、こちらが優勢だったとしても後は不利な消耗戦にしかならない。


「分かった。リリーナ、行くぞ。」


「う、うん。」


3人は急いで宿屋を出て港のほうへ向かった。

街中で悲鳴とうめき声だけが鳴り響く。



-------------------------------------------------



人影があまり居ない裏道を通って港まで突き進む。

この街に来たことがあるのか、クラリスの道案内は妙に正確だ。


「あとどれぐらいで着きそうなの?もうあたりは人影で一杯よ?」


裏道から少し出れば、そこはもう人影で埋め尽くされてしまっている。

ここに気づいて入ってくるのも時間の問題だろう。


「くっ...」


不意にクラリスが立ち止まる。


「どうしたの?」


「詰み、だ。本道に出る。」


「え?人影がいっぱいいるのに?」


「そちらのほうがマシだ。行くぞ。」


「ちょ、ちょっと!ユーリも!」


「リリーナ、今はクラリスの指示に従ったほうがいい。行くぞ。」


リリーナは強引にユーリに手を引かれて本道に出る。

本道に出ると人影は立ち止まるどころか、何かに怯えて逃げるかのように離れていく。

その何かとは...


「聖剣に選ばれし者よ...」


魔王。

目の前に突然現れた魔王。

詰みとは魔王に既に見つかったから逃げても無駄、ということだったようだ。

不気味なまでに無表情な顔で魔王はこちらに向かって話しかけてくる。


「我は魔王。この世に混沌をもたらす者...」


「お前が何者かなんてことに興味はない。」


ユーリがリリーナの前に立って大剣を構える。


「ただ魔王と名乗るのならば、俺がこの場で叩き斬る!」


「ふっ、威勢だけは良いようだな。いいだろう、相手をしてやる。」


魔王の返事を聞かず、ユーリは魔王に向かって斬り掛かる。

しかし、大剣は魔王の周りにある見えない壁によって防がれてしまう。


「そんな力では我の障壁を突破することは不可能だ。」


「くっ!」


ユーリは魔王の攻撃を察知して後ろに飛び退く。


「ではこれはどうだ!?」


いつの間にか後ろに回りこんでいたクラリスが魔王に斬り掛かる。

聖剣は青く光り輝き、魔王の障壁を軽々と破る。


「さすがに神が作ったその剣は別格のようだ。」


しかし、魔王は素手でクラリスの剣を掴んで止める。


「だが使い手が弱ければただの宝の持ち腐れよ。己の無力さを知れ、聖剣に選ばれし者よ。」


「ほざけ!」


クラリスは魔王を蹴り飛ばして後ろへ下がり、剣を空に掲げる。


「ユーリ!リリーナ!離れてろ!」


聖剣はより一層光り輝き、あまりの眩しさに目を開けていられなくなるほどの輝きになる。

そして光が凝縮され剣を形どり、聖剣がクラリスの身長を上回るほどに大きくなる。


「光よ!私に力を貸せ!」


クラリスは魔王に向かって大きくジャンプし、剣を振りかぶる。


「ディバイン!!!セイバー!!!!!」


聖剣が光を解放し、光は凄まじい速度で魔王とその周囲を飲み込む。

光は飲み込んだものを全てを無に還し、消滅させる。

ユーリとリリーナは息を飲みながらその様子を見る。


「これが...聖剣の力...!やっぱり本物だったみたいね。」


「ああ、どうやらそのようだな。だが...」


クラリスは剣を地面に刺してもたれ掛かる。

さすがにこの威力だと使用者への負担も激しいようだ。

しかし、クラリスの片目が1瞬光り輝くと、ふっと剣を抜いて立ち直って周囲を見渡す。


「さすがの威力だ。まともに食らえば流石の我でもただでは済まなかっただろう。」


「なっ...!?」


魔王がなに食わぬ顔でクラリスの背後に立つ。

クラリスが反応して剣を後ろに振ると魔王は消えて別の場所に現れる。

いや、消えたというより目にも止まらない凄まじいスピードで移動したというほうが正しいだろうか。

そして、ユーリとリリーナはこの瞬間移動に似たものを見たことがあった。

そう、ここより先の未来でもう一人の魔王が使いユーリの腕を切り落としたときだ。


「では次はこちらの番だ。」


魔王が目にも止まらぬ早さで移動し、クラリスに斬り掛かる。

反応をして剣で受け止めるものの、何度もの斬撃に徐々に押されていってしまう。


「くっ!」


「どうした!その程度なのか!」


ユーリも駆け寄ってクラリスを助けにいくも、凄まじいスピードで2人共手玉に取られてしまう。

ユーリが隙を見て魔王の剣を弾き返して逆に斬りかえすも、


「さっきのはフェイントだ。」


一瞬も満たない早さで背後に回られて斬り掛かられる。

反応して避けても腕を深く斬られ、血が吹き出す。

しかし、魔王の頬にも1つ傷ができ、腕を押さえながらもユーリは不敵に笑う。


「これでおあいこだ...!」


「ふっ、しぶといやつだ。ならば!」


魔王は空中に浮いて魔法を唱え始める。


「ミアズマ!」


黒い球体が無数に浮き、1つ1つが黒いオーラを放ち始める。

そのオーラは触れた木々を、大地を、瞬く間に腐らせていく。


「もう!世話が焼けるわね!」


ユーリとクラリスの目の前に炎の壁が現れる。

炎の壁に触れた黒い球体は燃え盛り、浄化されていく。

しかし、


「くっ...これ以上魔力が...」


病み上がりのリリーナにはこの炎の壁を維持するのが困難だった。

黒い球体を一掃した後、リリーナは倒れるようにユーリにもたれかかる。


「大丈夫か!?」


「なんとか...でも、もう体が...」


リリーナは力無くつぶやく。

あまりの疲労に体が動かせなかった。せめて手さえ動けば。


「ふっ、エフリートか。貴様もまた、神の力の一端を持つ者。ならば、それすらも上回る術で葬るのみ!」


魔王が何かの呪文を詠唱しだす。

嫌な空気が場を占め、魔力が魔王の元に集まりだす。

悲鳴が聞こえる。魔王に吸われた魂が力を吸い取られていく。


「くっ、あんな魔力を食らえば聖剣の力を使ってもひとたまりもない。何か手はあるか?」


クラリスがユーリに問いかける。


「...」


しかし、返答はない。

ユーリは目をつぶりながら何かをずっと呟いていた。


「おい、聞いてるか!?」


答えない。

じっと目をつぶったまま。

数秒後カッと目を開きユーリは口を開く。


「リリーナ。」


「何?」


「俺に命令しろ。」


「えっ?」


「俺に守ってくれと命令しろ。」


リリーナには何を言っているのか分からなかった。

何をふざけているのかと思った。

しかし、ユーリは真剣そのものだった。




「ユーリ、私を守りなさい!」




「命令を確認。任務を遂行する。」




ユーリの目が真っ赤に染まる。リリーナのとはまた違う赤。


「クラリス、リリーナを頼む。」


「あ、ああ。だが、一体どうやって...ってお前は!?」


何かを悟ったようにクラリスはおどいた表情を見せる。

ユーリはクラリスにリリーナを託し、腕の傷を気にもせず大剣を両手で構える。


「ノーマルモードからフェイタルモードに移行。目標を駆逐する。」


「どうした?死ににきたか?」


「死ぬのは、」




次の瞬間、魔王が体を切り裂かれ、地面に倒れ伏す。


「お前だ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ