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Not Perfect World(打ち切り)  作者: 有栖
第3章 それはとある勇者達の物語
17/19

#5 別れ、そして旅立ち

何もかもが斬り裂かれていた。

魔王の障壁。

魔王の魔法。

そして、人の魂までも。

例外など存在しない。


ユーリは倒れ伏している魔王にトドメを刺そうとする。

が、魔王が瞬間移動をしてまた空まで移動するが、移動した瞬間、


「なっ...!!!」


ユーリによってまた斬り裂かれる。また地面へと叩きつけられた。

もはや鎧など意味をもたないぐらいに損傷している。

そして、


ザシュ


魔王の腹にユーリの大剣が刺さる。

勝負は一瞬だった。


「貴様...!一体何者だ...!」


「...」


ユーリは答えない。

ただ赤い瞳が魔王を捉えるだけだった。

魔王もボロボロだが、ユーリもまたボロボロだった。

全身から血が流し、魔王よりも痛々しい姿だ。斬った側のはずなのに。


「このままでは終わらん...終わらんぞ...!」


魔王の体が発光しはじめる。

聖剣の輝きとは違う、まったく逆の輝きだった。

その輝きを見て人影達は何かを察知したのか、慌てて逃げ始める。

ユーリは大剣を抜いてまた魔王に刺そうとするが逆に弾き飛ばされてしまう。


「魔王が今まで吸収した力を使ってここら一帯を消滅させる気だ!もう手遅れだ!逃げられない!」


「逃げられないって...!なんとかならないの...!?」


「だが今から逃げてもどうしようも!止めることもできない!」


何か、防ぐ手立てはないだろうか。

私の手さえ動けば!エフリートの力を使えばどうにか!とリリーナは必死に手を動かそうとするが動かない。

意識ももう途切れかけていた。




「逃げろ、エミリア...!」


「え?」


クラリス、いやエミリアがきょとんとした表情であたりを見渡す。

ユーリの声ではない。勿論リリーナの声でもない。

一体、誰の声なのだろう。

しかし、時間は訪れる。


「滅びよ!神の力を持つ者よ!ディストーション!!!」


黒い光が魔王を中心に広がる。

すべてを破壊しながら。

もう駄目だ、と思ったそのときユーリが目の前に現れ、両腕で一人ずつ抱えあげる。

そして抱えながら全速力で範囲外まで駆け抜ける。


「ユーリ!」


「...」


ユーリの顔はもう血で染まりきっていた。手も足も体も。

ただ無言で走り続ける。

しかし、黒い光のあまりのスピードに段々と距離を縮められてしまう。

かなりの距離を走ったが、まだまだ黒い光は破壊を続ける。


「ユーリ!無理だよ!私達を置いて逃げて!」


「...」


「そうよ!せめてユーリだけでも!」


そう言うとユーリは立ち止まる。

何も喋らなかったユーリがついに口を開く。


「生きろ」


それだけ言って、ユーリはリリーナとエミリアを投げ飛ばした。

ユーリは向き直って大剣を構える。

そしてユーリは黒い光を斬った。斬って剣を盾にして止めた。

黒い光がユーリの体を掠り、破壊していく。

まず左腕が飛んだ。右腕だけで剣を維持する。

皮膚をじりじり削られていく。体中から血飛沫が出る。

数秒後、ユーリは黒い光に飲まれた。

そこで、黒い光は止まった。




-------------------------------------------------



今リリーナは船の中に居る。

ユーリが消えてから約二ヶ月。エミリアと一緒に南の大陸をまわり、そしてやっと東の大陸行きの船に乗ることができた。

もはやユーリよりエミリアのほうが旅をしている時間は長い。


「はぁ...」


正直今起こっていること、今まで起こったことは分からないことだらけだ。分かっていることより分かっていないことのほうが圧倒的に多い。

東の大陸へ行けば何か掴めるかもと思ったが、それもまた分からない。

とりあえず、目的地は最初と変わらずローランドだ。


「なに溜息ついてるの、リリーナちゃん。またユーリのこと?」


「違う違う。これからのことよ。」


「またまた~。また胸貸してあげようか?」


「ちょっと!その話はなし!」


エミリアはなんとなく付いていった方がいい気がするという理由でリリーナについてきている。

彼女の眼は未来が見える。クラリスはそれをヴォルヴァと呼んでいる。

だが、見えたり見えなかったり、あまり使い勝手が良いものではないらしい。


「ちゃんと真面目に聞いて。とりあえず紆余曲折しながらここまで辿り着いたわけだけど...」


「紆余曲折どころじゃなかったけどねー」


「エミリア、ちょっと黙ってて。」


「だって2ヶ月もかかったんだよ!?」


「いや、まあ、うん、そうだけど...とにかく!これからのことを真剣に考えるべきよ!」


「真剣にって言ったってローランドっていう国に起こったことを突き止めにいくんでしょ?それだけじゃないの?」


確かにリリーナの目的はただ1つ。

ローランドに起こったことを突き止めにいくこと。

でも...


「そうなんだけど...私達の想像もしないような、とんでもないことが隠れていそうなの。...とにかく、分からないことが多すぎよ。」


「確かにそうだね。でも、リリーナちゃん。分からないことを今考えても仕方ないよ。時間は有限だよ。今は休まなきゃ。特に、リリーナちゃんは。」


「...そうかもね。ごめん、エミリア。私、もう寝るね。おやすみ。」


「うん、おやすみ。」


そう言ってエミリアは部屋から出て行く。

リリーナはベッドに寝転がり、揺れる外の景色を眺める。



時間は有限。確かにそうだ。

私の時間は残り少ない。

正直、いつ自分の時間が無くなるかは分からない。

この旅自体が私の時間を短くしている。

力を使うたびに奴に時間を食われてしまう。


私は、エフリートに体を蝕まれていた。




第3章 -fin-




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