帰還
フォルテが、旅にでて、2年半が経っていた。
フォルテは、送ってくれた、従者に礼を言い結界に入る為の門へと向かった。
門番の顔色は冴えず、活気もない。
入国の手続きをしながら、門番に聞いてみれば…
「結界をはっている王宮魔導師長様が、危篤らしいんだ。今の結界もいつまでもつか…。」
「!!!!!!どういう事だ!?」
「どういう事もなにも、王宮魔導師長様は、結構な歳だから、仕方ない事らしい。
それより、門番として、今後どうしたらいいか…」
「そんなこと!?」
フォルテは、門番の言葉に、呆然とした。
確かに、門番たちには、グランマーレは雲の上の人だ、親近感なんかないだろう。
だが、国の危機とも言えるこの状況をそんなこと呼ばわり…。それより、今後の自身の方が、心配。
『どれだけ結界の恩恵に、甘えているんだ!』
フォルテは、グッと奥歯を食いしばり、拳を握った。
表情を隠す様に俯き、優しいグランマーレを思う。
『きっと、こんな状況をあの方は、仕方ないと笑って見ていたのだろう…』
フォルテの胸が、何かに締め付けられたかのように痛んだ。
「よし、これで手続き終わったよ。どうぞ…」
フォルテは、門番から、許可証を受け取ると、城を目指すべく、走り出した。
途中で、馬貸し屋を探して、馬を借りた。
その後は、ひたすらに、城へと走り抜けた…。
胸に大事に包んだ、あの万能薬をもって、ひたすら馬を走らせた。
門から城までは、普通は、7日かかる道のりだ。
それをフォルテは、3日で走り抜けた。
頭の中には、
“王宮魔導師長様危篤”の言葉が、ずっと回っていた。
心配し過ぎて吐きそうなほど、胸が締め付けられる。『この薬が間に合うか…』
王宮魔導師長の体調は、トップシークレットだ。
それが、いっかいの、門番が知りえる情報である事に、胸騒ぎしかしなかった。
『例えばもう…すでに…』
フォルテは、そこまで考えて、首を振り考えを消し去る。今は、グランマーレが、生きている事を信じるしか無いのだから…
城に付き、フォルテは、騎士の証を提示した後、副長
に、面会を申し込んだ。
フォルテは、一刻を争う状況だ、すぐにでも、グランマーレの元に行きたい!
しかし、返ってきた返事は、否だった。
フォルテは、その返信を握りつぶし、副長室に駆け込んだ。
フォルテは、副長しつを警備する騎士に取り抑えられながらも、なんとか副長の部屋へと入る。
「副長様!お願いです。話を聞いて下さい!!!」
部屋の窓辺に立っていた副長は、すっかりやつれた顔で、ゆっくり、ゆっくり振り向いた。
「今更、何しに来た騎士フォルテ。」
副長は、フォルテを押さえ付けていた騎士に、手で合図すると、下がらせた。
「お叱りは、いくらでも、お受けいたします。ですから、ひと目、かのお方に合わせて下さい。」
「あってどうする⁈もう、意識もない。明日おも知れぬ命だ…。ずっと、そなたを待っていたのだ…。なのに…。」
副長の顔は怒りをあらわにしている。
「これを…」
フォルテは、懐に大切に入れてあった、あの薬を取り出した。
「これは、再生の泉の万能薬です。これで…グ…いえ、総長様のお加減が回復するはずです。」
「そんな得体の知れぬのも、総長様に飲ませられるか!!」
「な…。お言葉はごもっともですが、お願い致します。騎士の名の元に、この薬が本物であると断言致します。もし、この薬で、総長様の命が危険に晒されたなら、私は、どうなってもかまいません。
いえ、もう、薬さえ渡して頂けるなら、私の命など…いくらでも差し上げます。
お願いでございます。」
フォルテは、深く深く頭を下げる。
「………。」
副長は、しばし考えたあと…。
フォルテの手を払い持っていた瓶を叩き割った!
呆然と、割れた瓶を見つめるフォルテに、さらに、副長の手が飛んできた。
その拍子に、鞄に入っていた、手土産の縫いぐるみが、転がり落ち割れた瓶の近くへ転がって行った。
せっかくの可愛らしいぬいぐるみは、びしょ濡れに、なってしまった。
「総長様が、どれだけそなたの裏切りに、悲しまれたか…!そなたがいない事を嘆かれたか!なぜ何も言わずにでていた!!!」
やつれた体の何処から、そんな大きな声が出るのかと、思わずにいられない大きな声で、怒鳴られる。
その後、副長は、呆然とするフォルテを騎士たちにつまみ出すように指示した。
荷物ごと部屋から放り出されたフォルテは、割れた瓶と、濡れてしまったぬいぐるみを抱えて、固まる事しかできなかった…。
『グランマーレ様を救う唯一の薬が…。また取りに行くにも、グランマーレ様の容態では…もうもたない…。なぜ、なぜ割ってしまったのか…。
せめて、試して下さってからでも…』
悔しさと、口惜しさに、グランマーレを救えない悲しみに、歯を噛みしめていても、フォルテの目からは、次々涙が溢れ落ち、さらにぬいぐるみを濡らした。
『このままでは、グランマーレが、生きているうちに会う事すらできない…。』
呆然としていたフォルテだが、冷静になり始めた頭で、考え直して、グランマーレの部屋に忍び込む事にした。
元々警備は、少ない部屋だ、容易に忍び込む事に成功した。
付き添いの侍女が、水を変えに席を立ったすきを狙い、彼女が寝ているベッドに近づいた。
寝ている彼女は、痩せ細り、火傷の跡が痛々しく身体中に張り付き、顔色は青く、唇は、かさついた、本当に生きているのだろうかと、疑いたくなるほどの状態だった…。
そん彼女の姿に、フォルテは、胸が締め付けられた。
フォルテは、彼女が死ぬならこのまま後を追うつもりで、ここまできたのだった。
懐から、濡れてしまったぬいぐるみを取り出してグランマーレの胸の上で、組まれている手にそっと乗せた。
「グランマーレ様…。あなたの騎士フォルテ、ただいま帰りました。
不甲斐ない私をお許しください。
あなた様に、薬を準備しましたが…。不手際で無くしてしまいました。あなたにおもちできたのたは、たった一つ。
しかも濡れて汚れたぬいぐるみです。
本当は、薬を飲まれ、笑うあなたに、これを渡す想像をずっとしておりました。まさか、このような状態で、お渡しする事になるとは…。」
フォルテは、悲しみを飲み込みように顔を伏せる。
「心配いりません。これ以上寂しい思いをなされませんように、フォルテ、すぐにお側にまいります。もう決して離れたりは致しません。どこへなりともお供いたします。
そんな事しかできない私をお許しください…。」
「本当に寂しかったわ…。やっと戻って来てくれたのね…」
少しかすれた、きき慣れた懐かしい声に、驚き、目を見開き慌てて顔を上げたフォルテ…
フォルテの目にした物は、火傷の傷など一切なく肌艶にもいい、グランマーレが、ベッドに横たわり、そのまま顔をフォルテに向けていた。
「な!?!?!?」
慌てて立ち上がり、騎士の礼をとる。
胸に当てた手に握りしめられていた、ぬいぐるみが、先程のグランマーレの様に痩せ細り、グランマーレと同じ位置に火傷の傷をおっている…。
「これは…⁈」
「どうやら、その子に助けられたみたい。その子が言うには、私の身代わりになってくれるみたいなの。ふふふ。」
「ねーフォルテ、先程言っていた事は本当⁈ずっとそばにいて、どこへでも、お供してくれる?って…。」
「はい。それは嘘偽りない本心です。」
「では…その子をこちらに…。くまさん。ありがとう。」
グランマーレが、ぬいぐるみに口付けすれば、見る間に、グランマーレの形となった。
傷があるグランマーレだ。
ベッドに座り、生きては居るが、話す事も笑う事も無いただの人形。
ただし、結界は、その場所から張り続けれるようだ。
「この人形どうしたのか知らないけど、すごいわ。全て、私の身代わりをしてくれた。魔力と生命力は、ぬいぐるみの体内で一度、浄化して戻してくれた。その時に、細胞のはじまで再生した感じだったわ。」
「そうか…身代わりになる、ぬいぐるみだったから、身代わりになる瞬間、含んでいた、再生の泉の水を飲んだ状態にできたのか⁈」
「私は、このままここから去りたいの。
どこかへ連れて行って。お姫様らしい生活なんかした事ないから、そんなに、お金はかからないはずよ。 ただ、私でも、働けるかしら…」
グランマーレは、困った様に頬に手を当てた。
「大丈夫です。私が働きます。どんな事をしても、少し不便かもしれませんが、不自由はさせません。私で、よろしければ、お供させてください。」
「フォルテがいいわ。よろしく。」
花のように笑うグランマーレの笑顔が、干からびていたフォルテの心を満たしていく…。
心からの笑顔で、フォルテは、手を差し出した。
「はい。では、お手を…」
その晩、騎士が1人姿をけした。
傍に美しい女性の姿があったとか、なかったとか…。
この国は、その後、動かず、眠らず、生命反応のない、人形となった総長が、総長椅子で、魔導師のローブをかぶり、ずっと結界を張り続け平和がつづいた。
その結界の端の森の中で、若夫婦と2人の子供が、幸せに暮らしている事は、誰も知らない…。
「いつか、あのぬいぐるみをくれた方に、お礼に行きましょうね…。」
「はい。いつか、お連れします。あなたはもう自由です。」
ーFi nー
これで終わりです。
読んで下さりありかとうございました。
もしかしたら、“わたくしお部屋に…”の方で、出てくるかもしれませんが…笑
わかりません。




