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幻想旅団Brave and Pumpkin【UE】  作者: 睦月スバル
廻り廻れ、異世界の輪廻
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continue2

爆破事件の顛末を語ろう。


貧民街の住人凡そ百五名死亡。

五千人程が重軽傷を負う大規模爆発となった。貧民街の娼館も巻き込んだようで女性の被害者数は全体の七割。


彼等はみすみす七割、三千六百人もの尊い可能性を零してしまった。


そしてーー彼等、杉原清人とジャックは貧民街爆破事件の下手人として指名手配がなされている。


■■■■■■


「ねぇ、ハールーンやっぱりこれ立派な犯罪だよ?」


「そうだな。けど、俺たちには必要だった。綺麗事は今更ないだろ?」


あれから俺たちはミュージアムの蒸気機関ーーと言うか使えそうなセミスクーター型のオートバイ、所謂スーパーカブが一台置いてあったのを見つけてジャックのヘタをピッキングツール代りに使ってそそくさと一足先に機構都市を脱出していた。

…ジャックのヘタの汎用性の高さには心底感服するが一体どんな仕組みだろうか。解剖したくもあるが、ジャック・オ・ランタンに実体があるというのも可笑しな話でやっぱり神なのだろうと思う事にした。敬いはしないが。


因みにこの仮称スーパーカブ君は何というか独特で、学がないからよく分からないがどうやらコイツもれっきとした蒸気機関らしい。

積載量はそこそこ多く、ジャックを縛り付けて走れるのは良かった。煩くないし。


まぁ、ジャックを縛り付けて走る都合上ジャックにはかなり不評だが。曰く「不敬」なんだとか。


何がともあれ仮称スーパーカブ君はとても便利かつカッコ良いので俺はいたく気に入っている。大学の腐れ縁の兄貴がホ⚫︎ダドリームEを格安で譲って貰ったと自慢して以来この手のものには憧れていたものだから乗っていればご満悦だったりする。


がーー状況は急転悪化。

俺の二つ目の魔素適性が判明し、水蒸気爆発や噴霧、水圧によるカッターを多用するようになった結果ーー俺の殲滅力は飛躍的に向上したがその代償に燃費は更に悪化した。


その上ギルド会員だった事もあり。


・ギルド会員が犯罪を犯した場合、犯罪の種類、度合いに関わらず死刑を執行する。尚、逃亡した場合は指名手配を速やかに行ないギルド会員全員に対して常時対象の殺害許可が与えられる。

※死亡したギルド会員の死体を漁る行為は特例的に窃盗にあたらない。


…ギルドのルールに抵触した事になっている俺には現在、魔王軍、デイブレイク、ギルド会員、ゲームマスターが敵対する構図となった。


そこに極悪な燃費を加えると。


・街で働けない

・食わないと死ぬ

・戦うと燃費極悪

・刺客がわんさか来る

・戦闘すると場合によっては死にかける

・狩りをしないとその日の食事が用意できない


…どうしろと言うのだろうか。


そんな事もあり仮称スーパーカブ君で悪路を踏みしめながら最高効率で食料を確保している。

しかし、それももう限界が近づいている。


飽くなき食欲が繁殖のスピードを追い越してしまい、自分で見つけた狩場を狩り尽くしてしまったのだ。


そして、ある決断をした。


「国を出る」


「他の国って大陸違うよねぇ!?確か、この国が地方分権してて分割しても規模が小国家レベルで広いのに!」


「だから、その為のコレだろ?」


ポンポンとスーパーカブ君を叩く。


「いやいや、海路舐めたら死ぬからねぇ!?と言うかスーパーカブは海上走れないよっ!」


「いや、コイツでどっかに隠れてる『鼠人族』の村を経由して大陸を越える」


鼠人ねずびと族』、古代文明の遺跡から発掘されたオーバーテクノロジーを駆使して繁栄した鼠型の亜人デミ・ヒューマンだ。

そして、そのオーバーテクノロジーには『転移門トランスポートゲート』も含まれる。

今回、俺は『転移門トランスポートゲート』を利用して大陸を高飛びするつもりだ。


だがーーゴブリンキラーやっていた頃に図書館に入り浸った結果、『鼠人ねずびと族』は伝承上のものだと書いてあった。


だ、が!


狩場で連日生きる為に目ざとく探索した結果、見つけていたのだ。


「こいつを見ろよ」


それは真鍮で出来たと思しき鍵だった。

持ち手にはファンシーに鼠の耳をデフォルメしたようなデザインが施されている。


「鍵…『門にして鍵』とか聞いた後じゃ笑えないなぁ」


「これがどうやら『鼠人ねずびと族』の村ーー

隠れ里に繋がってるみたいなんだ」


「どうして分かるのさ?」


「この意匠、『鼠人ねずびと族』の耳をモチーフにしてるんだ。それに…」


耳の意匠を折り畳むと真鍮が緑色に輝きーーホログラムが投影された。


『ーー愛しき鼠人ねずびと供に告ぐ。もし我らが生存したならば。この鍵を使うが良い。再び告ぐ。この鍵を使うが良い。三度告ぐ。この鍵を使うが良い。我らが生存を心より望む。この鍵は新たなる都を指し示す鍵だ。付近に来れば自ずと分かろう。健闘を祈る』


「…だってさ」


ご覧の通りの明らかなオーバーテクノロジーだった。


「そんな馬鹿なぁ…」


「でも、これ見つけたのこの間の巨大百足…ホラ、『俵藤太の大百足かなぁ?』って言ってたアレを倒した時だったからな。きっと百足雑食だし、鼠人ねずびとを襲った時に攻殻に挟まったんだろうな」


「あれ、百足って言うよりキメラじゃ無いかなぁ…虫を繋ぎ合わせたら長くなり過ぎて百足になっちゃった的な匂いがしたね」


パンと、手を合わせて話を遮りーー。


「んじゃ、仮称スーパーカブ君…いや、モー太君で虱潰しに鼠人ねずびとの隠れ里をさがそう!」


無慈悲に時の暴力を当てにする事を高らかに宣言した。

今回の主人公は今までと若干テーマが違います。私の作品では全体的にウジウジする主人公が多いですが、今回は「致命的に一か所ずれている」人間性をコンセプトに進行しています。

男性的に魅力的、親しみ易いコミカルな感じを目指していますが…。ただ一か所、ただ一か所だけ致命的に非人間的な部分が…そう、例えば今回の事件に対して切り替えが早過ぎる点もそれに当たります。

これが睦月クオリティーですのでご容赦ください。


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