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スキルが覚醒したら追放されたので、理想を追求してみます  作者: @tsutsu-Chan


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食料を求めて!

「よし、待ってろよミニア! 最高のメシを持って帰ってきてやるからな!」


拠点のドアを閉め、レオは泥レンガの家を後にした。

室内で静養するミニアのために無毒化された水と濡れ布巾を準備してきたが、

何日もまともな食事をとっていない彼女の体力を完全に回復させるには、

栄養価の高い肉や果実が絶対に必要だった。


視界の端には、クロニクルの【広域魔導スキャン】によって投影された青い幾何学マップが揺れている。

南西約1.2キロ地点に明滅する赤いマーカーが、目的地の【毒性植物群生地域】だ。


(クロニクル、あそこまではどれくらいかかりそうだ?)


(《レオの現在の脚力および地形の勾配を計算すると、徒歩で約15分。

ですが、【魔性順応】によって活性化された身体能力を全力行使すれば、

約3分で到着可能です》)


(よし、そういうことなら一気に駆け抜けるぞ!)


レオは地蹴りの一歩を踏み出した。

ドンッ!と地面が爆発したような音とともに、荒野の岩肌を弾丸のようなスピードで駆け抜けていく。

追放される前の自分からは想像もつかない脚力と持久力。

荒野の過酷な瘴気を吸い込めば吸い込むほど、体内の【魔性順応】が稼働し、

疲労を感じるどころか全身にみなぎるエネルギーへと変換されていくのだ。


ゴツゴツとした赤褐色の岩場を抜け、小高い丘を飛び越えると、それまでの荒涼とした景色が一変した。


「うおっ……! なんだここは……!?」


広大な窪地一帯に、紫や深緑の不気味で巨大な大木が鬱蒼と生い茂っていた。

幹や枝はぐにゃりと歪み、葉の隙間からは真っ赤に熟したドッジボールほどの大きさの果実が、まるで鈴生りのように垂れ下がっている。

だが、空気中には鼻を突くツンとした酸性の刺激臭が漂い、樹木の足元からは怪しげな黄色の煙がうっすらと立ち上っていた。


(《目的地【毒性植物群生地域】へ到着。

周囲の環境状態を解析完了。

ここは鉱物毒と微弱な酸を含んだ地下水脈が自生させた特殊な生態系です。

幹や果実には強い酸性の防衛毒が含まれています》)


(へえ、見た目はめちゃくちゃ美味そうだけど、毒の果実ってわけか。

だが……俺にとってはご馳走みたいなもんだな!)


レオは迷わず、最も低い枝に立派に実っている真っ赤な果実『蜜毒リンゴ』に手を伸ばした。

果皮に触れた瞬間、表面から滲み出た強酸性の液がジジジ……!と音を立ててレオの皮膚を焼こうと襲いかかる。


(《強力な酸毒の接触を感知。

【魔性順応】全開駆動、エネルギー変換を開始します》)


パキンッ!!


レオの全身から眩い青い光が弾け飛んだ。

手に伝わっていたピリピリとした焼けるような痛みが、一瞬にして身体を巡る心地よい熱気へと昇華されていく。


(おっ……! 来た来た! 毒が抜けていくのがわかるぞ!)


レオは果実を両手で包み込むと、深呼吸をするように果実内部に留まっていた酸毒を一気に引き抜いた。

真っ赤で毒々しかった果皮は、毒素が抜けると同時にスーッと色を変え、まるで夕陽を浴びた宝石のように透き通る綺麗な黄金色へと変化していく。

それと同時に、周囲の刺激臭をかき消すほどの、甘く芳醇な果実の香りがぶわっと広かった。


「うわ……めちゃくちゃ美味そうな匂い!

これ、毒が抜けたんだよな?

ちょっと一口……」


シャクッ!


一口かじりついた瞬間、口の中で爆発するようにあふれ出す圧倒的な果汁!

濃密な甘みと、爽やかな酸味が絶妙なバランスで口いっぱいに広がり、喉を潤していく。


「うっまあああああい!! なんだこれ!

王都で食ったどんな高級なフルーツよりも圧倒的に美味いぞ!?」


(《満足度向上を確認。

無毒化された『黄金蜜リンゴ』は、元の防衛毒がそのまま極上の糖度と栄養価へ再構築されています。

衰弱した身体の即効回復および魔力回復に極めて高い効果を発揮します》)


(これならミニアも一口食っただけで元気になれるぞ!

よし、カバンが破けるくらい詰めて持って帰ろう——)


レオが次の果実を摘み取ろうと手を伸ばした、その時だった。


ズザザーーーッ!! 地響きとともに樹木が叩き折れる!!


「なんだ!?」


グシャアアアアッ!!


目の前の大木が、強烈な何者かの体当たりによって一瞬で粉砕された。

飛び散る木くずと激しい土煙の中から、ぬうっと巨体を現したのは、全長5メートルを超える怪獣のような魔物。

紫色のヌメついた硬質なウロコで覆われ、太い尻尾を叩きつけながらこちらを睨みつける、不気味な大型魔獣だった!


「シャアアアアアッ!!」


(《警告! 大型魔獣【酸液大トカゲ】を検知。

熟した果実の甘味に引き寄せられて出現した模様。

口腔内に岩石をも溶かす強力な消化酸を保有しています》)


大トカゲは黄色い縦裂きの瞳でレオを捉えると、その巨大な口をガバッと大きく開いた。喉の奥が不気味な黄色に発光し始める。


シュゴオオオオッ!!


次の瞬間、口腔の奥から、大量の濃黄色の「酸毒ブレス」が津波のような勢いで吐き出された! 迫り来る酸の嵐は、かすめただけで周囲の草木を瞬時に溶かし、黒い煙を上げさせる。


(《レオ、酸毒ブレスがきます!》)


クロニクルの警告が脳内に響く。

だが、レオの口元には逃げる気などサラサラない獰猛な笑みが浮かんでいた。


「逃げる必要なんざねえ……! 食材に向かって逃げてたまるかよ!!」


レオは回避するどころか、ドッと踏み込んで酸毒ブレスの真っ只中へ自ら飛び込んだ!


バシャアアアアッ!!


強烈な酸液がレオの全身を飲み込み、着ている服の端がジュッと音を立てて焦げる。

だが、次の瞬間——!


パキキキキィィィンッ!!


レオの全身から、これまでで最も強く激しい青い光が爆発的に弾け飛んだ!


(《個体名『酸液大トカゲ』の高濃度酸毒ブレスを検知。

【魔性順応】全開駆動!

外部酸毒を筋力・身体活力へとダイレクトに変換します!》)


「ぬおおおおおっ!! 来た来た来たぁぁっ!!

体が超熱い!! 力が溢れて止まらねえぞ!!」


ブレスを浴びれば浴びるほど、レオの全身の筋肉がギリギリと膨れ上がり、皮膚には青い光の紋様が縦横無尽に走り抜ける。

大トカゲは信じられないものを見る目で目を見開いた。自慢の必殺ブレスを正面から浴びながら、目の前の人間は倒れるどころか興奮冷めやらぬ顔でニタリと笑っているのだから。


「シャ……!?」


「酸っぱい毒のブレス、ごちそうさまでした!!」


ドガァァァンッ!!


全開となったパワーで地面を蹴り飛ばしたレオは、目にも留まらぬ残像を残して一瞬で大トカゲの懐へと潜り込んだ。

大トカゲが反応する暇すらない。

レオは腰を深く落とすと、みぞおちから吸い上げた爆発的な運動エネルギーをそのまま拳に収束させ、大トカゲのアゴ下へと垂直に叩き込んだ!


ゴカァァァンッ!!


「ギャゴオンッ!?」


凄まじい衝撃波が周囲の樹木を揺らし、5メートルを超える大トカゲの巨体が空高くだんごのように吹き飛ばされた。そして、そのまま背中からズシンと地面へ叩きつけられ、目を白黒させながら完全に気絶した。


(ふぅーっ! 一発で決まったな!)


(《戦闘終了。一撃撃破を確認。

レオの身体に異常なし。極めて効率的な戦闘でした》)


(よし、クロニクル! こいつの肉は食えるか!?)


(《皮下に蓄積された解毒器官を取り除けば、非常に高品質で高タンパクな上質の肉が得られます。

さらに、頑丈で柔軟な『魔獣の皮』、加工しやすい『鋭利な牙・骨』が採取可能です》)


(よっしゃあ! クロニクル指示をくれ、サクッと素材にバラすぞ!)


クロニクルのアシストのもと、レオは万能書庫から投影されるガイドラインに従い、手際よく解体作業を進めた。

手に入ったのは、脂の乗った大量の『解毒済みの極上肉』、水や酸を通さない強固な『防水皮』、耐熱性の高い『ウロコ』、そして加工に使えそうな『魔獣の鋭牙』と『頑丈な骨』。さらに、持ってきたバッグから溢れんばかりの『黄金蜜リンゴ』と、周囲に生えていた『高栄養の薬草』だ。


(これだけあれば、ミニアに肉と果物を腹いっぱい食べさせてやれる!

それに皮を使えば、あいつの新しい服や防具、ベッドの毛布だって作れそうだ!)


ホクホク顔のレオは、山盛りの素材と食料を抱え、急ぎ足で待望の拠点へと駆け戻るのだった。

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