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スキルが覚醒したら追放されたので、理想を追求してみます  作者: @tsutsu-Chan


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自滅する伯爵の使者

 【グラ・ヴァル遺跡館】の【冷涼ボタニカルテラス】。


 優雅な木漏れ日が差し込むテラスの門を強引に蹴り開け、ガチャガチャと無骨な金属音を響かせて踏み込んできたのは、重武装した五人の男たちであった。


「おい!どこだ、ここの管理人は!我がゲッセル伯爵領の特使なるぞ!」


 先頭に立つのは、ゲッセル伯爵家から派遣された横暴な使者・ガルノであった。


 外の殺人的な猛暑の中でギラついた汗をぬぐいながら、高飛車に胸を張って威張り散らす。


「まあ、お客様……お行儀の悪い方は、お断りですニャー」


 ミニアが、呆れたように猫耳をパタパタと揺らす。


 ソファーの上で寛いでいたヴェルフが、欠伸混じりに片目を薄く開けた。


『むふぅ……うるさいハエが飛び込んできたようじゃな。主よ、つまみ出すか?』


「まあ待てよ、ヴェルフ。……わざわざ向こうから来てくれたんだ。たっぷり語ってもらおうじゃないか」


 テラスの奥から現れたレオは、手に冷えたハーブティーのグラスを持ったまま、余裕の笑みを浮かべてガルノたちと対峙した。


 ソファーの陰では、先ほどレオと同盟を結んだばかりの第一王女エレノアが、優雅にお茶を口に含みながら、静かに事の成り行きを見守っていた。


---


「貴様がアルヴァレス家を追放された無能のレオだな!」


 ガルノはレオを見下し、高圧的に羊皮紙の書状を突きつけてきた。


「我がゲッセル伯爵様からの言い渡しだ!この【グラ・ヴァル遺跡館】の土地、建物、井戸、およびルクシアで出回った【神薬】の製造技術のすべてを、即刻我が伯爵家が接収する!」


「無償で接収……ですか?」


 レオが淡々と問い返すと、ガルノは下品な嘲笑を浮かべて鼻を鳴らした。


「ハッ!当たり前だ!無能の追放者が伯爵領内で勝手に商売をするなど言語道断!本来なら即刻処刑のところを、伯爵家の直轄地にしてやるのだからありがたく思え!」


「断ると言ったら?」


「ハハハ!断るだと!?拒否すれば不法占拠の罪で貴様らを即座に奴隷として売っ払うだけだ!王国の法律など、我がゲッセル伯爵領では関係ない!伯爵様の言葉こそが唯一の法なのだぁぁっ!」


 ガルノが高らかに暴言を吐き捨てた──その瞬間だった。


(≪思考アクセス完了。広域ホログラム音像回線を開設。ゲッセル伯爵家特使の音声および映像データを、ルクシアのガラン商会および王都の大商業ギルドへリアルタイム同時中継中≫)


(よし、完璧だ。これで逃げ道は完全に塞がれたな)


 レオが不敵に口元を深めたのを見て、ガルノは苛立ちを露わにして剣の柄に手をかけた。


「何を笑っている!伯爵家の意に従わぬなら、力ずくでひれ伏させてやる──」


「──不敬でありますわよ、下衆な豚が」


 冷ややかで気品あふれる声が、テラス全体を凍りつかせた。


---


「な……なんだと……!?」


 ガルノたちがギクリとして振り返った先──ソファーの陰から、フードを払った一人の少女がゆっくりと立ち上がった。


 美しく輝く金髪と、王家の気品を宿した眩い瞳。


「ひ……っ!?金髪に……その王家の紋章のペンダントは……っ!?」


「我が聖王国の法を無視し、伯爵領が王国の上に立つと宣言いたしましたわね?……第一王女エレノア・グランディールが、しっかりと聞き届けましたわ」


 エレノア姫が絶対の威厳を放ちながら、使者たちを冷たく見下ろした!


「ひ、ひぃぃぃ!?だ、第一王女殿下ぁぁっ!?な、なぜこのような荒野の泥宿に……っ!?」


 ガルノたちの顔から一瞬で血の気が引き、膝が激しく笑い始めた!


 そこへ、レオが空中に青いホログラム映像を鮮やかに展開してみせた。


「さらに言わせてもらうと……今の『伯爵様の言葉こそが法だ』という言葉、ルクシアの大商人ガランさんや、王都の商業ギルドの幹部たちへリアルタイムで同時中継させてもらいました」


「な……っ!?中継……だと……!?」


 ホログラム映像には、怒りに震えるルクシアの豪商たちと、呆れ果てた王都の商人たちの顔がはっきりと映し出されていた。


『ゲッセル伯爵家め……王家を侮り、不当に私財を強奪しようとは到底許されん!即刻すべての取引を停止させてもらう!』


「ひぐぁぁぁっ!?終わった……我が伯爵家は……完全に終わったぁぁっ!!」


 ガルノたちはガタガタと全身を激しく痙攣させ、大粒の汗を吹き出しながら、床に頭を叩きつけて土下座した!


「ひぃぃっ!お許しください王女様ぁぁ!」


「自業自得ですわ。……バルト、この不敬者を縛り上げなさい!」


「へいっ!喜んで!」


 テラスの隅で待機していたBランク冒険者バルトたちがニヤリと笑い、使者たちを一瞬で縄で縛り上げて連行していった。


 高飛車に威張り散らしていた刺客たちが、指一本触れられることなく、自らの暴言により完全に「自滅」させられたのである!


---


「ふふ、すっきりいたしましたわ!レオ様、これでゲッセル伯爵家は失脚確定ですわね!」


 エレノア姫が爽快そうにほほ笑み、ミニアも「レオ様、大勝利ですニャーッ!」と抱きついて喜ぶ。


 その時──。


 ポーン……!


 レオの脳内で、クロニクルの澄んだシステム音声が鮮やかに響き渡った。


(≪緊急警告。領地境界の外縁部にて、異常な高濃度瘴気を検知!≫)


(≪追い詰められたゲッセル伯爵が、禁忌の『超巨大毒魔獣アバドン』を解放。全戦力を率いて当領域へ侵攻を開始しました≫)


(ゲッセル伯爵の奴……追い詰めて本性を現したか!)


 レオはハーブティーのグラスをテーブルに置き、不敵に笑みを浮かべた。

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